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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第7章 クランの設立と開業編

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第214話 トラウマの克服とその成果

 そうしてさっそく俺達はミミの男性恐怖症を克服させるため、思いついた策を実行に移すことにした。


「さて、ミミ。今から客の相手をしてもらうけど、大丈夫か?」

「は、はい! マスターの期待に沿えるよう、ミミ頑張ります!」


 一応念のためというわけではないのだが、俺とシズネさんが少し離れた所で様子を見ることにしたのだ。

 これならばもし何かあったとしても、すぐさま対応できるし、順調に事が運ぶようならばそのまま立ち去ればいいだけである。


「冒険者の男の人はマスター……冒険者の男の人はマスター……ぶつぶつ」


 何やら呪詛のように俺のことを呼んでいるが、決してこれから危ない儀式を執り行うわけではない。


「ミミさん。大丈夫でしょうか? あのように旦那様を呪わんばかりの勢いで、何やらぶつぶつと独り言を口に出していますが……」

「だ、大丈夫だろ。ほら、ミミって口に出さないとダメなタイプとかそんな感じなんだろうよ」


 あまりにも苦しい言い訳であるが、実際問題今のミミを見るにいつもの明るさどころか、逆に魔女のような陰湿な雰囲気が漂い始めている。

 それはまるで……


「……うん? なんですか旦那様? そのようにワタシの顔を覗き込んで。もしや顔に何か付いているのでしょうか?」

「いや、別に……」


 そうシズネさんっぽい雰囲気と同じに思える。

 何もシズネさんが根暗とかディスっているわけではないのだが、全身黒尽くめな上に不適な笑いを浮かべると、思い浮かべる感想はただ一つ。……怖いである。これまた美少女には失礼な表現であるが、まさに怖い。その一言に尽きる。


 今のミミも傍目からみれば、怖い以外の感想を用いるのが難しい状況である。



「なぁアンタ、ここの者か? 一つ質問があるんだが、いいか?」


 ちょうどそのとき、冒険者らしき屈強な男が受け付けへとやって来た。どうやらウチのクランへは初めてらしく、何か質問をするためミミに声をかけてきたに違いない。


「は、はいぃぃぃぃ」

「うん? どうかしたのか?」

「いえ、なんでもありません!」

「そ、そうか。それで聞きたいことなんだがな……」


 どうやらミミは緊張しているだけで、ちゃんと会話は成立しているようだった。


「はいはい……え~っと、それはですね。ウチのクランでは、冒険者ギルドとは違い……」

「……うんうん。なるほどな。アッチとは報酬の割合……つまりクランへの取り分が少なくなっているのか。となると、同じ仕事を受けるにしても、こっちでするほうが率がいいのか……」

「はい♪ もしよろしければウチのクランでは冒険者としての登録だけを済ませ、クランとギルドその両方を掛け持ちするのはいかがでしょうか? これならばもしもギルドで仕事に(あぶ)れたときにも、ウチのクランで依頼を受ければ安定して収入の確保ができると思いますし、それにこちらを見ていただければ判るとおり、一階がレストラン、そしてこの隣の建物が露天風呂付きの宿屋になっていますので、何かと便利かと思いますよ♪」


 最初の緊張して喋れなかったのが嘘のように、ミミは臆することなく、クランの客である冒険者の男に説明をしていた。

 しかも……である。教えていないはずのレストランや宿屋の宣伝もしっかりとしていたのだ。

 

「うんうん。確かに仕事終わりのついでに飯と酒を飲めるのは良いよなぁ~。それにそのまま泊れるなんて、まさに至れり尽くせりってもんだよな!」

「はい! しかもですよ~、宿の反対の建物では冒険に必要な薬草も売っていますし~、その二階ではな、な、なんと武器や防具までも取り揃えている武具屋があるんです♪」

「おっそうなのか? そういや、俺もそろそろこの使ってるバトルアックスの切れ味が落ちてきたと思ってたところなんだ。だがな、今は持ち合わせが……」


 その冒険者の男は武具屋に興味あるのか、一瞬嬉しそうにしたのだったが、新しく武器を買う金を持っていないとすぐに落ち込んでしまっていた。

 俺はアリッサの店で行う予定の武具の貸し借りができるレンタルを勧めるため、声をかけようとする。


「あ、あのそこの冒険……えっ? シズネさん? な……」

「しーっ。旦那様どうせなら、ここは一旦ミミさんに任せてみましょう」


 一瞬、ミミのフォローをしようと口を挟もうとする俺だったがシズネさんに止められてしまったのだ。

「なんで止める?」っと続けそうになるが、唇に指を当てられてしまい黙らされてしまう。  


「チチチ~ッ。お兄さ~ん! ウチ武具屋を他所と一緒にしてもらったら、困りますよ~」

「うん? 何か他の武具屋と違うって言うのかい、嬢ちゃん?」


 意味深に砕けた口調のミミの言葉に対して、冒険者の男が食いついた。


「はい。もちろんですよ~♪ ああ、冒険者達はお金がない。けれども、お兄さんのように新しい武器は欲しい!! さてさて、困ったなぁ~……っと言ったところで、ウチの武器屋&防具屋である『凶器と狂気が入り乱れる(いこ)いの場:のんびり亭』の出番なんです! 料金の一部を担保として前払いしていただければ、買わずとも武器を一定期間利用することができる『貸し屋(レンタル)』も行っているんです! あっ、もちろん今持っている武器の買取なんかもしているんです。もしご興味がおありなら、一度お店に立ち寄ってみてくださいね♪」


 ミミはその冒険者の男の気持ちを表現するように喜怒哀楽を使い分け、説明をしていたのだ。

 それはまるで演劇を見ているかのような気持ちになってしまう。それほどまでにミミは、表情豊かな堂に入った動きと物語を紡ぎ挙げていたのだ。



 第215話へつづく

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