表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第7章 クランの設立と開業編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

213/240

第211話 ヤキモチと恥ずかしさの二面性

「ちょっと探しに行った方がいいかもしれないな……。俺、少し様子を見てくるから、ミミはここで待っててくれな!」

「は、はい。わかりましたマスター」


 いつシズネさんが居なくなったかは分からないが、さすがにこのままにはしておけない。俺は名残惜しくも、ミミにそう言い残すと急いで自分の部屋を出ることにした。


「シズネさんは一体どこに……んっ? あ、あれ?」

「……あっ」


 部屋を出た途端、壁に寄りかかるように体育座りしている彼女と目が合ってしまった。どうやらどこにも行かず、部屋の前で待っていてくれたみたいだ。


「シズネさん、こんなところにいたのかよ。はぁ~心配したんだぞ。ほんといつ部屋から居なくなったのか分からなくて、今から探しに行くとこだったんだぜ!」


 けれども先程までのミミとの抱擁を見られていたかと思うと、俺は誤魔化そうと口調を強めてしまった。


「いや、その……旦那様がミミさんのことをいきなり抱き締めてしまい、何やら二人っきりの世界に入り浸っていたのでさすがのワタシも身の置き場所がなく、き、気を利かせて部屋の外へと出ていたんです」


 シズネさんはそう言いながら俺から視線を外すと、そっぽを向いてしまう。若干だが頬が赤い気もする。そして声も少しだけどもっていた。


「あっ……そういやそうだよな。ご、ごめん。何も考えなくていきなり責めて」

「いえ、お気になさらずに」


 俺が原因にも関わらず「シズネさんがどこに行ったのか!?」っと、問い質すのは道理に反していた。俺は反省する意味でも謝り、今も座っている彼女へと立ち上がるように右手を差し伸べた。


「あ、はい。ありがとうございます旦那様」

「いや、いいよいいよ。ほらよ、っと! おわ~っ!?」


 トン。別段勢い良く手を引っ張ったわけでもないのに、シズネさんはまるで軽い羽のように引き上げられて俺の胸へとぶつかってしまった。


「シズネさん大丈夫か!? 怪我はないか!?」

「…………」


 俺は彼女に怪我はないかと心配するのだったが、シズネさんは何を考えているのか、俺の胸に顔を擦りつけていた。


「し、シズネさん!? 一体なにを……」

「ん~~っ♪」


 それはまるで先程のミミのように甘える行動だった。


「(ま、まさかさっきのが部屋の外にまで聞こえてて、それでミミに嫉妬してこんなことをしているのかよ? いやいや、だってだってあのシズネさんだぜ。いくらなんでもそれは……)」


 俺の両手は再び置き場所を見失い、宙を彷徨ってしまう。別にシズネさんとは夫婦だから、腰に手を回そうが抱きしめようが何の障害もないだろうが、何故か躊躇ってしまっていたのだ。


「(そもそも今思い返してみるとアヤメさんやアマネ、それにエルフィやミミとは色々なハプニングでキスやら抱擁やらしてきたけれども、ぶっちゃけシズネさんとは初めてだよな? も、もしかして……)」


 気が動転したいたんだと思う。俺は思わず、


「シズネさん、その……(ボソリッ)ヤキモチなのか?」

「~~~~っ!?」


 っと呟いてしまったのだ。

 するとシズネさんは、余計に俺の胸へと顔を埋めてしまった。


 きっと図星だったんだと思う。心なしか、頬や耳が赤くなっているように感じる。


「あのシズネさん。頬や耳が赤くな……」

「~~~~~っ!!」


 ポカポカポカ……。

 声をかけようとしたその瞬間、シズネさんには似つかわしくない、そんな痛くないも痒くもないパンチが胸へと連打されてしまう。


 たぶんこれらも恥ずかしさからくるものなのだろう。


 だがそれはいつもとは違い、まったく痛くなかったのだ。むしろそんな行動を取ってしまっているシズネさんのことが、可愛いと思ってしまうほどである。まぁ実際問題、シズネさんも他の子達と比べても遜色ないほどの美少女に間違いないのだが、普段が普段なのにあまり意識しないで過ごせていた。だからこそ、今のこの可愛い彼女がとても愛らしく思えてしまったのかもしれない。


「いたたっ。し、シズネさん。ちょっと痛いからさ」


 俺もまったく痛くもないのに体裁というか、気恥ずかしさから言葉だけ「痛い」と口に出してしまう。

 

「む~っ」


 もし今のシズネさんの頬が膨らむのを音に例えれば「ぷくーっ」に間違いないだろう。それはまるで機嫌を損ねた子供のように、頬をリスのようにぷっくりと膨らませているようにも見える。


「ぷくーっ」

「ぷっ! ぷ、ぷくーっ。あっはははっ、ほんとにやるなんて……あっ」


 俺が心の中で思っていたとおりにシズネさんが口にしたので、思わず笑ってしまった。むしろこれで笑わないやつはいないと思う。けれども、今笑ってしまったのは失敗したかもしれない。


「あ~っ! い、今ワタシのことを笑いましたね旦那様っ!!」

「ご、ごめんごめん。あ、あまりにも今のシズネさんが可愛らしくて……ははっ」

「まだ笑っていらっしゃるじゃないですかっ!!」

「ほんと、ごめんってば」


 俺が笑いながら謝ると、「旦那様は、本当に反省していらっしゃるのですか!!」っと我が妻であるシズネさんは言いたげに、再び胸をポカポカっと叩いてきた。


「(シズネさんも案外可愛い仕草するんだなぁ~。やっぱり女の子なんだなぁ~)」


 そんなシズネさんの意外すぎる可愛さに、今頃気づいてしまうのだった……。



 第212話へつづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ