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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第7章 クランの設立と開業編

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第201話 文化の違いにご用心

「あれあれ~、エルフィさんどうしたんですかぁ~? なんだか心なしか息が荒い感じですけど……」

「はぁはぁ♪」


 さすがにそんなエルフィの異変に気づいたのか、ミミは様子が気になった様子で声をかけてくる。


「顔が赤いですし……もしかして風邪なんですかね、マスター?」

「いや、なんでもない。なんでもねぇってミミ。エルフィは……ほら、温泉の湯気に当てられて顔が上気してるだけだって! だから気にしないでくれ!! な、エルフィそうだろ?」

「(コク、コク)」


 マジで発情してしまったのか、エルフィは顔を真っ赤にしながら潤んだ目で俺を見つめ、そして言葉が耳に届いたのか二度頷いた。


「あ~そうだったんですね! 確かにここ、ちょっと暑いですよね~(パタパタ)」

「ぶっ!! ごっほごっほ。ミミッ!! お前までなにやってんだよ!?」

「ほぇ? だって暑いんですもん~」


 見ればミミは「暑い暑い」と言いながら、胸元やスカートの裾を使ってパタパタっと扇いでいたのだ。

 チラチラっと色白い胸元が覗き見でき、太ももまでもチラリチラリっと見えそうになって俺は焦ってしまう。


「たとえ暑くても女の子なんだから、慎みをもってだな……」

「マスタぁ~、女の子でも暑いものは暑いですよ~」

「うっ!? そ、それはそうなんだけれども……でもほら、そこを我慢するのが良い大人の女性の条件ってものなんだぞミミ!」

「っ!? た、確かにそれはあるかもしれませんね。じゃあ我慢しますね……ぅぅっ」


 どうにかこうにか適当なこじ付けによって、ミミを納得させることができた。そして急ぎ露天風呂から脱出することにした。


「ふぅ~っ」

「あっ、外に出ればそんなにでもないんですね♪ あれ、でもエルフィさん、まだ息が荒いようですけど……」

「はぁはぁ♪」

「え、え~っと、これはほら息での体温調節というか、まだ体が暑いから冷却しているんだろうよ」


 自分でもちょっと何言ってるのか理解できないのだったが「なるほど~♪」っと、ミミはこれまた納得をしていた。


「(いいのか? そんな理由で納得しちまっても本当にいいのかよ、ミミ……)」


 俺は少しミミの将来に不安を覚えつつも、そのチョロさによってこの場を遣り過ごせたことに感謝せざるを得なかった。


「それじゃあ、お次は反対側にある建物、道具屋とか武具屋を案内するからな」

「わーいわーい♪ どんな品物があるのかミミ、と~っても楽しみですぅ~♪ もう待ちきれないから、ミミ一足先に行っちゃいますねぇ~♪ バビュ~ン♪」


 そうして気を取り直した俺は、案内を続けることにした。


 ミミは相変わらずのハイテンションで何が楽しいのか飛び跳ねて、喜びと幸福に満ち溢れているみたいだ。

 そして待ちきれないとばかりに俺とエルフィに向かって敬礼をしてから、自分一人だけ先に道具屋へと向かい走っていってしまったのだった。


 たぶんアレは脳内からヤバ気の物質でも、常時過剰に分泌され続けているのかもしれない。でなければ、あんなハイテンションを維持し続けられるわけがない。



「あの……ご主人様。少しよろしいでしょうか?」

「んっ? ああエルフィ、ようやく冷静になれたんだな?」

「ええ。おかげさまで……」


 先へと案内するその途中、ふいに左腕の服の裾を軽く引かれる感覚があった。

 そして裾を引かれるまま、顔を横へ向けてみるとそれはエルフィだった。


 なにやら遠慮気味に何かを言いたそうにしてる。見れば先程まで赤らいでいた頬も、今では普通に戻っている。

 どうやら少し間を置いたことで、元の状態へと戻れたみたいだ。


「その、ご主人様……先程は醜態を晒してしまい、申し訳ありませんでした」

「あっ。あ~……あっははは。ま、まぁ俺もエルフィ、っつうかエルフの耳がそんなに敏感だとは知らなくてさ。こっちこそ、なんか悪かったな」


 俺はさっきまでのエルフィの姿を思い出してしまい、気恥ずかしさから彼女の顔をまともに見れない。


「いえいえ、ご主人様は何も悪くございません! ですがご主人様。その、一言だけ忠告をしてもよろしいでしょうか?」

「あ、はい。どうぞ……」


 その真剣な声に惹かれ、彼女の方へと顔を向けてしまう。

 俺は怒られるのかと思い、ちょっとだけ身構えると覚悟を決めた。


「ご主人様もご理解していただけたように、エルフに限らず獣人(エルート)は耳としっぽが弱点です。特に女性においてのそれは性感帯に触れるのと同等の行為……いいえ、それ以上の行為だとお考えくださいませ」

「せ、性感帯って……その耳がか?」


 俺はエルフィのその言葉に思わず、自らの耳を疑った。

 そしてその彼女の性感帯だという、尖った耳に注目してしまう。


「……それって本当なのかよ?」

「はい、もちろんでございます。私がご主人様に対して嘘などを述べるはずがございません!」


 一瞬担がれていると思った俺は再度彼女に尋ねたのだったが、彼女の顔は俺の言葉とは対照的に真剣そのものだった。

 そして自分の言葉を疑い、聞き返した俺の顔がとても訝しげに思えたのであろう、彼女は少しだけ強い口調になりながら、自らの主人……つまり俺に対して嘘をつくことはないと口にする。


「そ、そっか……。俺、全然そのこと知らなかったよ。亜人達も亜人達で大変なんだなぁ~」

「ええ、そうでしょうね。実際、亜人達にとっての『弱み』でもありますからね。自ら口にすることはあまりないと思います。それにそれは例え相手が将来を誓い合った伴侶だったとしても、勝手に触れることはできません」

「伴侶でも触れちゃいけないのかよ!? 伴侶って夫婦とか婚約者とかって意味だろ? それでもダメだなんて……」


 俺はあまりにも人間との文化の違いに戸惑いを隠せない。


「心から許してもらわなければ撫でることは愚か、手で触れることも許されません。もしもその女性の許可を得ずして触れてしまった場合、殺されても文句は言えないのです。ですので、ご主人様も好意を持った相手以外に対しての耳打ちや囁きなどは、極力お控えになられたほうがよろしいですわ。でなければ相手が亜人の場合、そ、その……勘違いしてしまいますから(照)」


 そう説明してくれたエルフィは自らの耳にそっと触れ、少し照れた顔をしている。

 それもそのはず、今し方エルフィが述べたことは、俺が彼女に対して好意を持っているの行為であると自ら言っているのだから、照れてしまうのも無理はない。


 俺だって逆の立場ならば彼女のように照れてしまい、自分のことを「ちょっと自意識過剰ではないか?」と思い込んでしまうに違いない。



 第202話へつづく

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