第200話 亜人は基本的に……エロい!
「ここがウチの宿自慢の露天風呂の場所になるから」
「うわあぁぁぁぁ~♪ 広いお風呂ですね~♪」
「本当ね。これだけ広々としていれば、ゆったりできるでしょうね~。それに温泉も絶えず新しいのが出ているから、湯も綺麗よねぇ~♪」
俺は二人に風呂の場所を教える意味でも、露天風呂の中を見せてやることにした。
湯が出るパイプラインの先からは次々と新しい湯が流れ込み、そしてモクモクと温かそうな湯気を排出している。
「あっ、床が濡れてて滑りやすくなってるから気をつけろよ」
「そうですわね。ミミさん、そのようにはしゃいでばかりいないで、気をつけないと本当に滑ってしまいますわよ」
「エルフィさん、大丈夫ですよぉ~。私こう見えても意外と運動神経は良いほ……うわっとと。ふぅーっ。危なかったぁ~」
間一髪、ミミは転びそうになるところを何とか踏み止まり、事なきを得た。
「だから言ったのに……ミミって案外おっちょこちょいなんだな。あっははは」
「ふふっ。ご主人様、そのように笑っては失礼ですよ」
そう戒めるエルフィも心なしか口元がニヤけているように見える。
「あーっ! マスターもご主人様もミミのこと笑ってるぅーっ!! むくーっ。二人とも酷いですよーっ。私のこと笑うだなんて……ぷんぷん」
「ぷっ。ミミ、それは反則だから……怒ってるはずなのに可愛すぎる」
「も、もうご主人様ったら……ふふふっ」
笑われたのが不快なのか、ミミは可愛らしくもリスのように両頬を膨らませ俺達に対して怒りを露にしている。
けれども怒っているはずなのに逆にそれが何だか可愛いと感じてしまい、ミミの心情とは対照的に俺達は笑いを堪えられなくなっていた。
「むくーっ。マスターもエルフィさんも、もう知りませんからねっ!!」
「ごめんってばミミ。あまりにもミミの怒った顔が可愛くてさ……つい。な、エルフィ? お前もそう思うだろ?」
「ええ、ご主人様の仰るとおりですわ。ミミさんは何をするにしても愛らしく、私もご主人様も微笑ましく思い、つい口元が緩んでしまったのですよ。ですから決してミミさんを笑っていたのではありませんから、誤解しないでくださいね」
「そう……なんですか? エヘヘ~、ミミが可愛かったからだったんだぁ~♪ そっかそっかぁ~♪ もう♪ それならそうと早く言ってくださいよ~♪ 仕方ないから許してあげますね♪」
チョロい。チョロすぎる。ミミはあまりにもチョロく可愛い存在へと成り下がっていた。
俺とエルフィの舌先三寸の賞賛を褒め言葉だと勘違いしたミミは、それまでのぷりぷりっと怒った表情から一変して満面の笑みとなり、口元は言うに及ばず目や兎耳に至るまで嬉しそうに笑ったり、ぴょこぴょこっと動いたりしている。どうやら本当に機嫌を直してしまったようだ。
「(なぁエルフィ。ミミって、冗談抜きに可愛くないか? それに半端なくチョロい感じだよな?)」
「(んっ……あっ♪)」
「(え、エルフィっ!? お前、何そんな艶っぽいというか、変な声を口から漏らしてんだよ!?)」
俺はミミに聞こえないようにとエルフィの尖った耳へと小声で耳打ちするのだったが、何故だかエルフィの口からはエロい声が漏れ出てきたのだ。
「(あっ……も、申し訳ありませんご主人様。その、エルフに限らず亜人達は耳としっぽが敏感でして、特に耳の方が、その……か、感じやすくなっているのですわ。はぁはぁ♪ で、ですからご主人様の声に……その……(照))」
「(…………マジで?)」
「(んっ♪)」
どうやらマジっぽい。俺が小声で喋るたび、エルフィの口からエロく男心をそそる声が奏でられている。
そして心なしか、若干頬が上気して赤らいでいるようにも見える。
「(…………どうすりゃいいんだよ、これ?)」
「(んんっ♪ ご、ご主人様、どうか声を出さないでください。はぁはぁ♪)」
「(いや、声出してるのエルフィの方だろ……)」
「(ん~~~っ♪)」
しかもエルフィが必死に声を我慢しているおかげで、より艶っぽく、そしてよりエロいと感じてしまう。
「(褒めれば何でも誤魔化せて、しかも耳に声をかけてやればすぐにでも感じてエロくなる…………亜人ってば、こんなにチョロい存在なのかよっ!?)」
そう彼女達亜人というものは、人であると同時に獣の属性までも持ち合わせており、視覚・聴覚・嗅覚だけでなく、身体的にもとても優れているのだ。
また生まれ持った本能がそうさせるのか、基本的にエロい。エロすぎる。それは今のエルフィ状態を見ても解かるとおりだ。
彼女達は人間のそれとは比べ物にならないほど異性を欲する生き物であると同時に、一度好きになり心を許した相手ならば、例えどんな命令でも聞いてしまうほど、とても従順な性格をしている。
もちろんそれらは同種族間だけの関係に留まらず、人と亜人の間柄でも成立する。
だから場合によっては美人なエルフばかりを嫁にして、自分だけのハーレムを築くもよし。
また人間の女性を本妻として、そして獣人の女性を妾として傍に置くこともできる。
そうそう一番肝心なことを言い忘れていたのだが、この世界エカルラートでは異種間の婚約はもちろんのこと何人もの女性と結婚することができる重婚に留まらず、妾や愛人を何人だろうと侍らせても良いことになっているのだ。
これは優れた人間の子供を残す目的であると同時に、多種族の血を入れることで様々な状況へと対応するための措置らしい。
例えば夫婦間で子供を成すことが難しい状況下でも亜人達は種の保存にとても優れているため、人と亜人とで子を成すことが出来るわけだ。
これにより、家系は存続しえることになる。もちろん中には人と人……つまり純血しか認めない家系も存在するが、最近ではその風潮は時代遅れで廃れつつある。
またいくら重婚やハーレムが国から認められているからと言っても、それには最低限の条件が存在する。
それは囲った女性達は人間や亜人などの種族に関わらず、必ず大切にしてちゃんと養うことが最低限の常識となっているのだ。
もしもこれを破れば国の法を犯す重罪と見なされ、その資産などを没収させられるのはもちろんのこと、身柄を拘束されて牢屋にぶち込まれることもあるのだ。
だから「ハーレムを作るのは良いけれども、遊びだけの関係や浮気などは禁止事項。愛するなら、最後まで愛しやがれっ!! 人や亜人に限らず女性を軽視することだけは絶対に罷りならん!」ということらしい。
第201話へつづく




