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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第7章 クランの設立と開業編

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第199話 温泉が持つパワーワードと女心

「レストランを通って、こっちの建物が宿屋になっているんだよ。で、この反対側の建物が一階が道具屋、二階が武具屋になっている」

「なるほど。建物ごとにそれぞれのお店へと分けることで、お客様のご用に合わせることができるわね。また両者の建物との間には扉などの仕切り無く、繋がっているので行き来するのにも便利になっているのですね!」


 まずはレストラン正面から向かって左側にある建物である宿屋の方から、二人を案内することにした。


 宿屋にはいくつかの客室があるだけなので、彼女達の仕事とは何ら関わり合いがない。けれども女の子が大好きな露天風呂があるので、一応場所だけとも思い案内しておくことにしたわけだ。


「兄さん、こんにちわですぅ~。おや今日は珍しく、ここいらじゃ見かけん子達と一緒なんですなぁ~。そのお二人さん、どないしはったんですか兄さん?」

「ジズさんか。こんにちは。二人はえ~っと……」


 ジズさんのその存在意義をすっかり忘れ去っていた俺はいきなり二人のことを尋ねられ、何から説明すればいいのかと言い淀んでしまう。


「え~っと、アンサンらは……エルフに兎人族ですわな? 初めましてワテはジズいいますわ。よろしゅうに」

「きゃっ! ど、ドラゴンが何故このような建物の中に!? ご、ご主人様危険です! 離れてくださいっ!!」

「ふえぇぇぇぇぇぇっ。ドラゴンさ~ん。ミミはぁ~、ミミは食べても美味しくないですよ~」


 宿屋の玄関ホールにその身を佇んでいるジズさんが挨拶をすると、エルフィもミミも驚きから目を白黒させている。

 そしてエルフィはどこから取り出したのか、右手にナイフ握り込みながら体を低く構え、いつでもジズさんに襲い掛かれる体制になり、ミミに至っては腰が抜けてしまったのか床へと座り込んでしまい、情けない声と共に泣き出してしまっていた。


 たぶん、どちらもジズさんのことを『敵』として認識してしまったのだと思う。

 尤も二人のその反応は至極当然であり、ドラゴンとは敵モンスターの代表格であると同時に普通なら敵わない存在なのだ。


「ふ、二人とも、そんな警戒しなくてもいいからさ。この人は……いや、このドラゴンはジズさんと言って俺達の仲間なんだよ。……ところでジズさん、その認識で合ってるよな?」

「兄さんも案外、毒吐きますんやな。それに一体今まで、ワテのことをなんやと思ってましたんや兄さん? いや、聞くのが怖いですから答えんでいいですわ。それでこのお二人さんは?」

「実はこの二人、新しくウチで雇うことにしたんだよ。ほら、これから忙しくなるだろ? だからさ」

「そうやったんでっか? それはよろしかったでんなぁ~♪」


 俺はジズさんに二人を雇い入れた経緯を説明することにした。


「あともう一人、猫人族のウルフってのも働いてくれることになったんだよ」

「ウルフやったら、さっきジャスミンと新入りや~、ゆうて挨拶に来てくれましたから知ってますわ」

「そうなんだ。なんだ先に来てたのか。そっかそっか……あっ、この二人もウルフと同じく住み込みで働いてくれるから、ジズさんも仲良くしてやってくれ。……というわけなんだ、二人とも。さぁミミも床だと冷たいだろ? 立って立って」


 俺はジズさんが敵ではないことを説明してから、床に座り込んでいるミミの両手を取り立たせてやる。


「敵……ではないのですね? 大変失礼いたしました。私はエルフィーナと申します。エルフィとお呼びくださいませ」

「はわわわわわわ。ごめんなさいごめんなさい。ミミ、食べられちゃうのかと勘違いしちゃいました。み、ミミはミミ・フォルトって言います。よ、よろしくお願いします」

「エルフィにミミでんな。了解しましたわ。こっちこそ、驚かしてすんまへんでしたなぁ~」


 互いに謝り合い、そして認識の誤解が解け、どうにかこの場を収めることが出来た。


「じゃあ気を取り直して、宿屋の案内を続けるからな。この二階が客達が泊る客室で、一階のこの奥には温泉から引いた露天風呂になっているんだ」

「「露天風呂っ!?」」


 さすがは女の子。風呂というワードに過剰なまでの反応を示している。

 ま、尤もそんな反応をしてしまうのも、わからないでもない。


「ああ、この露天風呂は泊り客はもちろんのこと、風呂だけの利用客もいるんだ。ジズさんには宿屋の受け付けをしてもらっている。それに昼夜問わず、俺達だってもちろん無料で入ることができるんだぞ。どうだ二人とも、ここが気に入ったか?」

「ほえぇぇぇぇぇぇっ。温泉まで付いているんですかぁ~。なんとも贅沢な宿屋なんですね~。しかも私達も入れるだなんて嬉しいにきまってますよ、マスター♪ ね、エルフィさんもそう思うでしょ?」

「ええ、そうね。普通の宿屋と言ったら、精々お湯を用意してもらえるくらいだものね。それも従業員の私達にも使わせて貰えるだなんて、光栄すぎるわ」


 どうやら二人とも温泉があることを気に入ってくれたみたいだ。


「一応だけど、二人にも宿屋の料金についても説明しておくな。ウチでは基本食事なしの素泊まりで、客達には隣にあるレストランで食事をしてもらうことにしている。もちろん食事の代金は宿屋代には含まれず、料金も素泊まりで2シルバーと格安設定になっている。また泊り客なら温泉の利用料は無料で、宿には泊らずに温泉だけを利用する街の人達には一律1シルバーをもらっている」


「なるほど……宿屋の料金を低価格に設定してお客さんを呼び込み、また温泉目的の利用客をも引き込むことで両方を収入源としているわけなんですね! それに隣にあるレストランがあるとなれば、泊り客達にも必然的に利用される。これはとても考えられた経営手段ですね、ご主人様♪」

「ミミには難しい話は全然理解できないけど、マスターが凄いってことはわかります♪」


 別にそれらの経営プランは俺が考えたわけでなくシズネさんなのだったが、二人が喜びながら褒めてくれているので甘んじてその賛辞を受けることにした。



 第200話へつづく

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