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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第7章 クランの設立と開業編

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第182話 繁盛したが故の誤算

「ふぅ~っ。仕事が無いのも困りますが、逆に仕事がありすぎるというのも、これまた困りものですねぇ~」


 シズネさんには珍しく、そんな弱音を吐いていた。それも仕方の無いことだろう。


 午前中はまったくと言ってよいほどクランには人が来なかったにも関わらず、アヤメさんが冒険者登録をしたその途端、(せき)を切ったように依頼や冒険者が増えたのだ。

 またそれらの業務をシズネさんは一人でこなしていたのだ。むしろ『疲れをみせるな』『愚痴が出すな』という方が無理と言うものである。


「シズネさん、今日は一日お疲れ様」

「あっ……旦那様。はい……」


 そうして俺は今日一日の仕事を終えたばかりのシズネさんに労いの言葉をかける。

 だが返される反応はとても鈍いもので、それだけ疲れていることを示唆していた。


「なぁシズネさん。今日のクランの繁盛振りを見る限り、シズネさん一人だけでクランを仕切るのは大変なんじゃないか? それにレストラン業務とも並行するつもりなんだろ? とても一人で出来る作業量じゃないと思うんだけど……」


 シズネさんはクランの仕事に空きがあると、レストランの方でも仕事をしていたのだ。

 ……っとは言っても調理場は完全にジャスミン一人に任せ、呼ばれればいつでも放棄できるようにとクランの仕事と並行して、食材の在庫管理や売り上げの帳簿付けをしていたのだ。

 それでも休む暇が無いほど忙しいのは変わらない。


「そうなんですがね……。ですが、それはジャスミンやアリッサなども同様ですからね」


 そうジャスミンが運営する『道具屋』、そしてアリッサが仕切る『武具屋』でも同様なことが起きていたのだ。

 一応客達が自由に見て回れる『声かけ販売』とはいえ、店員が傍に居て説明できるのとできないのとでは、当然の如く客達の購買意欲が違ってくるわけだ。


 ジャスミンもアリッサもなるべく自分の店に居たいからと、暇さえあればそちらへと行ってしまい、レストランと自分の店とを一日のうちに何十回と往復することになっていた。

 特にアリッサのように高額の商品、それも長期的に扱う武器や防具の場合には、気軽においそれとは買えないため、商品説明が無くてはならなかった。


「ウチさ、今のままだと慢性的な人手不足で完全に店が回らないよね? それにシズネさんやジャスミンの仕事も、いつまでもこうして並行してやっていくのも絶対に無理があると思うしさ」


 人間一日や二日ならば無理ができる。それも年齢的な若さでカバーできることなのかもしれない。

 だがそれも体力に限界があるように、永遠に続けられるわけではないのだ。


 一週間二週間……何ヶ月も、とは決して続かない。

 無理をすればいつかどこかでそのツケ(・・)が回ってくるものであり、それはある日突然、不幸が舞い降りるようにやってくるものである。


 しかもそうなってから、それに気づくようでは絶対に遅いのだ。

 それはもう取り返しのつかないところまで、事態が悪化していることに他ならない。



「ん~っ。分かってはいるのですが……資金面、それと肝心の人員面が乏しいのが悩ましいですよねぇ~」


 いつものシズネさんに似つかわしくないほどぐで~っと、テーブルに突っ伏し返りながら顔を横に向け、俺と話をしている。

 それだけ彼女も疲れていることに他ならない。


「人かぁ~っ。確かにそれぞれを完全に任せられる人間ってのは限られちゃうよねぇ~」


 そうウチにはそれなりに人はいるのだが、完全に任せられる人間がいないのだ。

 調理は完全にシズネさんかジャスミンが居なければ立ち行かなくなるし、クランもシズネさんが居なければ運営できない。


 宿屋の運営はジズさんやアリアなどがしてくれるのである程度放置できるのだが、他はそうもいかなかった。

 俺は仕込みなどの調理補助や賄いくらいは出来るが、彼女達のように素早く調理できるわけではないので即戦力にならない。


 つまり無理して色々な業種へと拡大したため、人を育てるのが追いつかず、今はみんな無理をしている状況である。


 またアマネやもきゅ子、それにアリアやアリッサ、それとジズさんは接客などはできるが調理をすることができない。

 唯一調理が出来るのは俺、シズネさん、ジャスミンだけなのだ。


 となるとだ……俺が中心になって調理を担当するか、もしくはジャスミンかシズネさんの仕事を誰かが引き継ぐか、どちらにせよ新しく別の人間を雇い入れなければならないことになるだろう。


 だがジャスミンは「ヤダヤダ、ボクは商人になりたいんだもん。ボクの代わりなんて道具屋を任せるなんて、ぜーったいに嫌だからね!」っと子供のように駄々をこね、道具屋を誰かに任せるのを拒否していた。

 一方シズネさんも「別にワタシの代わりにクランを仕切れる人がいれば、どちらでも構いませんが……新たなに人を雇い入れるとなると、費用の方が……」っと、余計に人件費を支払うことを拒否した。


 そうして解決策が出ないまま瞬く間に数日が過ぎ去っていくのだが、当然の如く問題が起きてしまうことになる……。



 第183話へつづく

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