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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第7章 クランの設立と開業編

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第169話 気まずそうな面持ちと容赦ない言葉

 それから数日が経ち、ウチの店共々特にこれと言った問題も起きずにアリッサやジャスミンの店も好調といえる滑り出しだった。だがそこで当初の予定だったのに未だ開かれていない、クラン(冒険者ギルドのような組織)は誰も話題にしようとしなかった。


「なぁシズネさん。店も順調だしさ、そろそろ次の展開っつうか、クラン開いた方がいいんじゃないかな?」


 俺は無謀とも思える無茶振りで、クランの話題をシズネさんへと振ってみることにした。


「はぁ……ふふっ」

「うん???」

(何で俺今、溜め息から微笑まれたんだ?)


 今日も今日とて皿洗いをしながら、脇を通り抜けてシズネさんに話しかけたのだったが、シズネさんに溜め息をつかれ、オマケに「旦那様は楽でいいですね~」っと言った感じのやや呆れとも思える笑みを浮かべられたのだ。


「あの……シズネさん?」

「ああ、これは失礼いたしました。いえ、まぁこの場でそのようなお話を振られるとは思っていなかったものでして」


 確かに仕事の最中、それも皿洗いとその綺麗になった皿を取りに来た人へ投げかける話題ではなかった。だが律儀なのか、シズネさんはプレート皿を数枚持つとこう答えた。


「旦那様の言うとおりかもしれませんね。それにそろそろ頃合いでしょうし……」

「頃合い?」


「何の?」と言葉を続けようとしたが、「クランについては昼食時、皆さんが揃った時にでも話し合いましょうか」と先にシズネさんに言われてしまい、聞けずじまい。俺は疑問を持ちながらも、そのまま仕事を続け、客足が落ち着く昼食時を待つことにした。



「(パンパン)さて、皆さま。今日はクランについて話し合いたいと思います」


 食事を始めるその前、いつものようにみんなの前へとナポリタン皿が置かれ「あっ、もちろん食べながらでいいですからね」とも付け加えシズネさんがそう呼びかけた。


「(もぐもぐ)そういえばそんなもの、すっかり忘れていたなぁ~」

「(もきゅもきゅ)もきゅっ!? も~きゅ~っも~きゅ~っ」


 アマネともきゅ子はシズネさんが呼びかける前どころか、目の前に皿が置かれた瞬間から既に口に物が入っていたように思える。ってか、今まさに現在進行形。もきゅ子にいたっては皿から一切目を離さず専用にスパをフォーク巻きつけて、未だ熱々のナポリタンに対して「熱いっ!? ふぅ~っふぅ~っ」っと言った感じに息を吹きかけ冷まそうとしていた。そんな姿もちょっとカワイイ。


「なんだいなんだい、アンタらクランまで開こうって言うのかい! はん! そりゃ~、なんとも剛毅なこったねぇ~♪」

「ちょっとアリッサ! 立ち膝は良くないっていつも言ってるでしょ! 貴女も女なんだから、少しは教養(マナー)を身に付けなさいよね。まったくもう~」


 アリッサはそんなギルドに喧嘩を売る姿勢に感服したかのように、右手に持っていたフォークを口へと掻っ込んだ。それを横で見ていた相方のアリアは「貴女、年上なんだから他の子達が真似するでしょう~」と戒めている。


「そっかぁ~。お店だけじゃなくて、お兄さんとシズネさんはクランまで開いちゃうのかぁ~……でも大丈夫なの?」


 ジャスミンは打って変わったように落ち着き払い、腕を組みながら右手を顎へと当て頷き、俺達の行く末を心配していた。その見た目とは裏腹に、何故かその仕草がとても年季が入っているように思えてしまう。ま、実際この中じゃ一番の年上らしいのだが。


「ええ、ジャスミンの言いたことも理解できます。ですが、リスクを犯さずしてリターンが得られるでしょうか?」

「それも……そうなんだけどね。でも……」


 シズネさんはそんな心配を他所に「今までだって同じ(・・)でしょ」とジャスミンへと呼びかけると、ジャスミンは渋々ながらも納得した。それでも尚、懸念というか心配は尽きない様子。


「アンタ達って、ほんっとぉーーーーーに良い度胸しているわよね。私がこの場に居るというのに、そんな話題持ち出すなんて!!」

「まぁまぁお嬢様。と、とりあえずお話を聞いてみましょうよ。ね? ね?」


 そうこの場には偶然居合わせたマリーとアヤメさんも同席していたのだ。というか、敵側の親玉を前にしてその組織をぶっ潰す算段をしているのは、普通に頭がおかしいと思われても不思議ではないだろう。


「……ですが、マリーさん達もワタシ達がそう(・・)した方が都合が良いのでは?」

「うっ……」

「あっははは……」


 シズネさんの鋭すぎる程の一閃。マリーは押し黙り、アヤメさんは乾いた笑みを浮けべてしまっている。たぶん図星なのだろう。


「シズネさん! 一応……ってか、二人目の前にいるんだからちゃんと言葉を選ばないと」

「あっ……そうですよね」


 これまた一応シズネさんの夫である俺が「それは少し言い過ぎだから……」っと彼女の腕を軽く掴みながら、戒める。


「(ほっ……どうやらシズネさんも俺の言いたいことを理解してくれたようだな。これならマリー達も……)」

「マリーさん、アヤメさん……その……あの……」


 俺はようやくシズネさんにも人の心が理解できたのだと思い、彼女がどこか気まずそうな面持ちで二人へと謝罪の言葉を口にするものとばかり思っていた。そう思っていたのだったが……


「……ぶっちゃけ、ワタシ達を良い様に利用していますよね貴女方は!」

「ぶっ!! ごほっごほっ……し、シズネさん!? それはあんまりにも直接すぎるだろうがっ!!」

「「…………」」


 タダでは起きないどころの話ではない。むしろ死人に最後のトドメを刺す言葉であった。二人もさすがにこれには怒りを覚えてのか、無言のまま口を開こうとしなかった。



 とりあえずマリー&アヤメの次のセリフがまったくと言っていいほど思いつかないので、無言の……(三点リーダー)という都合の良い言葉を用いながらも、お話は第170話へつづく

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