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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第161話 『婚約者』に隠された、もう一つの意味とは一体……

「確かにギルドとは、庶民の生活を苦しめている存在に間違いありません。もちろん私やマリーお嬢様だってその一員なのですから、そう思われても仕方ありません。ですが、お嬢様は少しでも生活を良くしようと努力しております。ユウキさん達をお手伝いするのもその一旦なんです」

「今の話だとマリーには何か解決する策というか、そういうのがあるって意味なんですか?」

「ええ……」


 アヤメさんに尋ねると、間を置かずして頷き肯定された。


 これはあくまで俺の憶測なのだが、マリーとアヤメさんは俺達に協力するという形で今のギルドから権力を抑制しようとしているのではないだろうか? でなければ、こうして武具を飾る備品棚や商品を敵方である俺達に届けてくれるわけがないのだ。


「アヤメさんの言いたいことはなんとなくですが、理解できました。ですが……いえ、だからこそもう一度だけ聞きたいです。俺達に協力しても大丈夫なんですか?」


 マリーが名目上のギルド長とはいえ、俺達に物資や建物を融通していると知られれば、それを口実にファルテ伯爵が名ばかりの役職でさえ剥奪されるのではないか? そればかりが気になってしまう。


「ええ、もちろんちゃんとした大義名分がありますので、その点に関して言えばまったく問題ありません!」


 いつになくアヤメさんは自信満々にそう答えたのだ。一体どこからそのような自信が湧き出るというのだろうか?


「ふふっ。ユウキさん、もしやお忘れになられたのですか? 貴方自身(・・・・)がその大義名分になるのですよ」

「えっ? お、俺……ですか!?」

(俺、何か二人にしたっけ? 特にしていないと思うんだけど……)


 いきなり自分の名前が出てしまい、俺は意味がよく理解できなかった。「はぁ~っ。やはり覚えていらっしゃらないのですね……」などと、アヤメさんはやや呆れた感じに溜め息をつくと、こう説明し始めた。


「ユウキさん! いいですか、貴方は私だけでなくマリーお嬢様とは『婚約者』ではありませんか。式こそ挙げてはおりませんが、名目上はふ、夫婦なのですよ! (照)」

「あっ……」


 アヤメさんは夫婦と口に出して言うのが恥ずかしいのか、瞬間的に顔を赤くしている。

 そこでようやく俺はアヤメさんが言っている意味を思い出した。二人が初めてウチの店に訪れた際、『男除け』でなんだと言って婿になれと言われたのだった。まさか本当にそれを実行しているとは思わず、今改めて言われてそれに気づいてしまう。


「で、ですから表向き私とお嬢様はユウキさんと夫婦なので、こちらをお手伝いしようとも基本的には問題になりません!」

「わ、分かりました。もう分かりましたからアヤメさん、落ち着いて」


 アヤメさんはまるでその恥ずかしさを誤魔化すかのように俺へと詰め寄ってきた。俺は落ち着くようにと、両手を突き出して彼女を視覚的且つ言葉的にも宥めようとする。


 そうして暫くすると落ち着いてのか、「す、すみません……」と断りを入れどうにか落ち着いてくれた。

 普段冷静沈着で物腰の柔らかなお姉さんなのに、こと恋愛に関してだけは話を振ると、その途端余裕が無いというか、アヤメさんはどこまでも初心(ピュア)であった。


「それで……というか、俺を名目上にすることでアヤメさん達は堂々とウチの店へと出入りしたり、手伝うことができる……というわけなんですね」

「はい」


 たぶん最初からこれもマリーの思惑の一つだったのかもしれない。


 今のギルドの勢力をこそぎ落とすのは内部からはできるはずがない。よって必然的に外部要因が必要となり、俺達をその思惑に利用しようとしている。それと同時に俺とは表向きに婚約者という形さえ整えれば、いくらでも力を貸すことができるようになる。

 そうして少しずつギルドの権力を削り取り、自分達の理想へと近づける計画なのだろう。


「(だからあの時、マリーは『都合がいい……』とかなんとか呟いていたわけなんだな)」


 俺はあのマリーが言っていた言葉を思い出し、これでようやく点と点が繋がった。

 あの時点、俺に婿になれとか言ったときには既にこれも考えていたのだろう。でなければ、こうして何度も助けてくれるわけがなかった。


「あの……怒りましたかね?」

「えっ?」


 見ればアヤメさんは不安そうな顔で俺を見ていたのだ。考え事をしていたため、無言になっていたのを俺が怒っていると勘違いしたのかもしれない。 

 確かに表向き、俺達に何も知らせずに自分達の計画へと引き擦り込んでいたのだ。そう思われても仕方ないだろうとは思う。


「あっ、いやいや怒ってたわけじゃないんですよ」


 俺が慌てて訂正するように告げると、アヤメさんは「そうなのですか?」とまだやや疑いというか、不安そうな顔をしている。

 そんな彼女を安心させるため、今自分が考えていたことを告げることにした。


「その、最初からマリーってそんなことを考えていて、俺に婿になれとか言ってきたんですよね? なら、すっげぇなぁ~って思っちゃって」

「へっ? す、すっげぇなぁ~……ですか? それだけ?」


 どうやら俺が本当に怒っていたと思っていたようで、拍子抜けしたような顔をみせるアヤメさん。

 俺は続けざまにこう口にする。


「だってそうでしょ。普通、そこまで思いつきませんよ」

「い、いえ……ですが! 私とお嬢様はユウキさん達を利用しようとしていたのですよ。それを知った今、お怒りになられても……その……」


 口にするのを(はばか)ったのか、アヤメさんはそこで口ごもってしまう。たぶん「怒られても仕方ない」と言いたいのだろう。そんなアヤメさんはまるで親に叱られる子供のように縮こまり、上目遣いのまま俺を下から見上げ、今か今かと怒られるのも待ち望んでいるようにも思えた。何だかそれがとても可愛らしいと思ってしまう俺がいた。


「アヤメさん……」

「んっ!」


 俺が彼女の名前を呼ぶとアヤメさんはぎゅっと目を瞑り、そのときを待っていた。だが当の俺はそんな彼女を裏切る行動をするのだった……。



 第162話へつづく

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