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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第156話 客が客であるとの自覚と予想外の副産物について

「えっ!? じゃあシズネさん。俺がテーブルを片付けようとした際、アリアが止めたのにも理由があるっていうのかぁ~っ!?」

「ふふっ。もちろんですよ、旦那様。むしろそちらが本命と言っても過言ではありません」


 俺が驚き、そう質問するとシズネさんは自信満々と言った感じの自信に満ち溢れる表情をしている。


「それって一体……」

「……いいですか、旦那様。お客様とは基本的に席へと座ったその瞬間、『自分が客であると認識(・・)』します」

「……へっ?」


「いきなり何を?」きっと俺はそんな間抜けな顔をしていたのだと思う。だがシズネさんは気にする素振りもなく、そのまま言葉を続ける。


「つまり行列へと並び、席へと案内されるその前までは『客ではない』との認識なのです」

「え~っと……うん???」

 

 シズネさんの言っていることが難しく、俺は悩みから首を傾げてしまう。

 何故なら客は客であり、席に座っていようが中や外で待っている間だろうとも『同じ客に違いは無い』はずだ。なのに、である。シズネさんは「そうではない」と言っているのだ。


「いくら店が混んでいようとも、お客様には一切関係ありません。皿が無かろうが、注文した料理でも調理に時間がかかろうが、席へと座れば注文品(オーダー)を取りに伺うサービスや頼んだ料理がすぐに、そして必ず来るはずなんだ。その思いから『自分が席へと案内されたからには、いつまでもサービスをされないというのはおかしい』と思っているのです」

「うーん……要は『客達を席へと案内しなければそれは客ではない』ってことになるのかな?」

「ええ、少なくともお店側がどう思おうが、お客様はそう思ってるはずですよ。だから一切の文句も言わず、今なお外へと並んでいるわけですしね。それが今のワタシの説明をする、良い証拠なのではないですか?」


 確かに客達は文句をブツブツ言いながらも、帰った客はほとんどいなかった。


 思い返してみれば俺も客側だった頃、店員に席へと案内されてから「テーブルの上がまだ片付いていない。早く片付けろ!」や「いつになったら注文を取りに来るんだ?」そして「もう30分も待ってるのに、何でまだ料理が来ないんだ!」などと色々な不満を持っていたものだ。


 だがそれも不思議と外で行列に並び、また待たされてる間はずっと立ちぱなしだったにも関わらず、店に対する不満を感じたことはなかったのだ。もしあるとするならば「こんなに待ってるんだから、ダラダラしてないで早く食べろよ!」など、それは同じ客に対する不満だけだった。


 つまり飲食店に来る客達は『席へと案内されて座ったその瞬間、自分がこの店の客である!』という自覚を持つことになる……そういうわけだ。


「そういう……こと……なのか?」


 未だそれには納得はできなかったが、目の当たりにしてしまえば有無を言わず納得せざろう得なかったのだ。


「ええ、とても不思議でしょ? ですから敢えてお客様が既に帰っているにも関わらず、テーブル上にある食器を片付けず、また席にも案内させずに外へと行列させて宣伝をし、それと同時に調理場や洗い場を立て直す時間を稼ぎ、お客様に店への不満を持たせない。そんな狙いがあったのです」


 ここまで説明をされ、俺は心底驚きを隠せない。それまでレストランなんて『客が来て注文しして食べ終わり、そして金を払っていけば良い』ただそれだけしか考えていなかった。


 まさか行列を更なる宣伝効果の惹き(・・)へと使い、そしてテーブルを片付けないことで店への不満を回避し、またそれと同時に調理場と洗い場の立て直しまでしてしまったのだ。これではどこにも文句の付け所が無い。


「その他にも……」

「ま、まだあるのかよ!?」

「くくくっ。ま、これはワタシでも予想外の副産物と言えるモノなんですがね……」


 だがそれだけでは終わらずに、まだ言葉を続けるシズネさん。しかも何やら愉快そうに笑っている。


「今後ウチの店で『ショー』を催し物に見せ、お客様達を楽しませるためのデモンストレーションも兼ねていたのですよ。ま、アレを見る限りでは何の問題も無いどころか、かなりの需要はあるようですね。当初店の中だけで行うもの……と考えていましたが、どうやら遊ばせているジズにも店の外で何かしらやらせれば、より店の宣伝の効果が高まると分かりました。これはかなりの収穫でしたね♪」

「ほぇ~っ……」

(……シズネさんは一体どこまで先の未来を見通しているのだろうか? 常に先々の事を考えて行動しているし、発想だって常人では思いつかないようなことばかりだぞ。……いやまぁ、シズネさん元魔王様なんだけどね。それにしたって、これは……)


 愉快そうに笑い、まるで今後の展望を見据えたかのようにそんな説明をするシズネさんに対し、俺は間抜けにも感心することしかできなかったのだった……。



 こんなものはまだまだ序盤の遊びですからね! などと意味深且つ無駄に前振りしつつも、お話は第157話へつづく

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