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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第154話 『民衆の怒り』と『スリ』を尻目に……

「旦那様! 旦那様まで何をなさっておいでなのですか!! アマネに洗い場を任せっきりにしてそのような所で油などを売ってないで、早く皿洗いをしてくださいな!」

「し、シズネさん!? わ、分かった! ジズさん、アリッサ、もきゅ子、わりぃけど、ここは任せたからな!」


 客達同様ジズさん達の曲芸にいつの間にか気を取られていたらしい、俺がいなくなったことでどうやらそのしわ寄せがアマネにまで及んでいるようだ。俺はシズネさんに促されるまま、店の外のことはジズさん達へと任せ、急ぎ店内へ向かうことにした。


「ああ、行っておいでなぁ~」

「もきゅもきゅ~」

「はいなぁ~兄さん~っ。スゥゥゥゥーッ………………ボワワワワワァーッ。げほっげほっ。こ、ここはワテらに任せて、兄さんは自分の仕事しなはれや」

「「「アッチチチチチチチチ」」」

挿絵(By みてみん)

 アリッサ達は「ここは自分達に任せて店内へ行け!」と死亡フラグを立てながら励ましてくれる。また何故だかジズさんは景気付けとばかりに今度は口から丸い火の玉ではなく、広範囲攻撃である『火の息(ファイヤーブレス)』を吐きながら、首を左右へと振って周りへと撒き散らしていたのだ。しかもわざわざ目の前にいる客達目掛けて、だ。


 それはドラゴン(自分)のことを体の良い道具(調理道具や暖房器具)などと見なしていた報復の意味合いもあるのかもしれない。


「あっははは……はっ。じ、ジズさんもあんまり無理しないでよね」

「はいな! スゥゥゥゥーッ……ボワァ!!」

「ぐおぉぉぉぉぉぉっ」

挿絵(By みてみん)

 俺は乾いた笑みを浮かべながら「(客達を焦がすのも)程ほどに……」と忠告したのだったが、ジズさんは逆にエールだと勘違いしたのか、またもやまるで狙い済ましたかのように火の玉を客の一人へと直撃させていた。


挿絵(By みてみん)

「うわっ!? 今度はマルクス家の三男坊が火の玉の直撃を受けたぞ!? 大丈夫……いや、まぁアイツが犠牲になったとしても別にいいけどな……」

「そうだぜ。アイツ、いつも俺達に嫌味ばかり言うし、それに収穫時期になると『麦の品質が悪い』とか言って難癖つけて、毎年毎年小作料を引き上げやがるしな! ……むしろ自業自得じゃねぇ?」


「だ・よ・な。ついでだから、俺達も混じって腹でも蹴っておこうぞ! オラ、オラッ!!」

「ひぃぃぃぃぃ。何だね、君達は!? ぼぼぼぼぼ、僕が何をしたと言うのだね!! だだだだだ、誰か助けてくれぇ~~っ」

「(何かここぞとばかりに客というか、民衆達の日頃の怨みからの復讐が始まってるんですけど……アレを誰も止めねぇのかよ?)」


 ふと少し走りながら後ろを振り返れば、金髪でマッシュルームカットの三男坊と呼ばれる男が倒れ(うずくま)りながら、助けを求め叫んでいる。一瞬客である彼を助けようかと躊躇(ちゅうちょ)していると、そこへ思わぬ助けが入ることになった。


「止めなっ!! なんだいなんだい、アンタら寄って(たか)って一人をボコ殴りにしてからに! まったく……ほら、アンタもいつまでも地べたに()(つくば)っていないで、さっさとお立ちよ(ささっ)」

「もきゅもきゅ♪ (カチャカチャ……スチャッ)」

「あ、ああ……ありがとう。助けてくれて……」


 どうやらアリッサともきゅ子はウチの従業員らしく、客であり襲われている彼を助け起こそうとしているのが見えたのだ。だがしかし、そう思ったのも束の間、アリッサが彼を立たせるために寄り添い手を貸したその瞬間、懐へと手を入れ何か袋のようなものを抜き取ったのだ。


 またもきゅ子までも、彼のぶら下がっている左手へと背伸びしながら腕時計のベルト部分を外すと、そのまま自らの右手に装着したように俺には見えてしまったのだ。


「っ!?」

(あ、あれってまさか……あ、あ、あ、あ、アリッサともきゅ子のやつぅ~っ)


 たぶん最初から助ける振りをしつつも、財布と腕時計をスル(・・)のが目的だったのかもしれない。


「(グッ!)」

「(ニッ♪)」

「はいなー!」


 アリッサは空いている右手をジズさんに向け親指を立てながらウインクをし、もきゅ子はシズネさん顔負けの怪しげな笑みを浮かべ、ジズさんは右の羽根を挙げてそれに応えている。


「(わざと騒ぎを起こして助ける振りをしつつ、ターゲット(カモ)が身に着けている金品を盗む……。もろ詐欺師の手腕じゃねぇかよ、アイツら。ってか、いつの間にそんな盗賊スキル覚えやがったんだ? いや……元盗賊の頭(アリッサ)のせいか)」


 そんな背後で繰り広げられている『民衆の怒り』と『スリ』を尻目に、俺は急ぎ店内へと入って行くのだった。


 きっと帰り際に彼が「財布がない!? 腕時計も!?」などと泣き叫ぶ光景が、今から目に浮かんでしまうのは、もはや言うまでもないことだろう。


「旦那様っ!」

「悪い悪いシズネさん。あまりに珍しいというか、客達が店から居なくなっちまったからさ、ついつい心配で外に様子を見に行っちまったんだよ」

「はぁ~っ。まったくもう……」


 俺は言い訳がてらシズネさんにそう告げると、呆れたように溜め息をつかれてしまった。そしてそのまま俺に背を向けるよう、クルリと歩いて行き、俺を置いていってしまう。



 そんなシズネさんの背中を追うように慌てて店内に戻ると、客がいるテーブルを除いて、ほとんどのテーブルの上は既に片付けられており、これならば外で待たせている客達の数でも十分に対応することができるだろう。


「おっ! 随分片付いてきたんだね。これなら客達をこれ以上待たせることもないよね!」

「ええ、ええ。旦那様が遊んでいる間にアマネ達が頑張ってくれていましたからねぇ~。そりゃ~、片付いていますとも……旦那様が遊んでいるあ・い・だ・に!」


 これは相当怒っているのかもしれない。シズネさんはやたらと「俺が遊んでいる間」という部分を強調するように二度言い、横に並び歩く俺の視線からぷいっと顔を背けてしまっている。


 どうやら俺が外に居たのは、ほんの数分くらいだと思ったが、意外と時間が経っていたのかもしれない。3話、文字数に換算すると約8541文字ほどの時間が……。



 この物語ってほんとレストランの話なんだよな? っと今頃そんなことに気づきながらも、お話は第155話へつづく

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