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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第146話 質とレンタルと客への信頼と

「西方地方でいうcaparra(カッパーラ)ってのはだね、いわゆる『(しち)』のことを指す言葉なのさね。こっちにだって質屋くらいあるんじゃないかい?」

「質……それって確か……」


『質』とは、お金に困った人が借りるお金以上の価値のモノを担保として相手に預け、お金を借りるまたは得る仕組みを指す。「それって普通じゃねぇ?」っと思うかもだが、質という仕組みは一味違う。

 

 借りた側がちゃんと期日までに借りたお金を返せる場合は、貸し金にプラスして利息も支払う。で、返済が終われば担保として預けたモノが戻ってくる仕組みなのだ。

 だが、もしも借りた側がお金を返せなくなった場合でも、貸した側は既に担保にしたモノで代物弁済してもらい、そしてその預かった品物を別の客に売ることで貸し金を返してもらい、そこで貸し借り両者の関係は終わることになる。


 だから貸す側としては、最初に利息込みでお金を貸す以上の価値のモノを最初に担保として預かるのが一般的である。

 そうすれば例え借りる側が返済したとしても、逆に返済できなかったとしても、貸す側にデメリットというマイナスは存在しなくなる。


 一見すると物の売り買いと同じようにも見えるこのシステムなのだが、借りる側は利息込みの借り金を返せばちゃんと担保として預けたものが返ってくる。

 だがもしその品物を売ってしまった場合、売って得られる金はその品物価値の半額程度、また再度それを買い直すには売った時の4倍程の金が必要になってしまうことがあるわけだ。


 例えば100シルバーの価値を持つ剣を武具屋に売れば、50シルバー程度の売価となる。だが再度買い直す時には150シルバーないし200シルバーの金が必要になってしまうのだ。

 これは買い受ける店側の鑑定料の他に当然『儲け』が含まれるのが一番の理由である。店側だって備品や家賃、人間なのだから飯や着る服、住む家が必要なので儲けが含まれるのは当たり前のことなのだ。


 だが仮に質で金を借り受ける場合に100シルバーを借り受け、返すときには利息込みで120シルバーないし150シルバー程度となる。もちろん金を返す期間によって変動するので一概には計算できないのだが、早く返せば利息は少なくて済む。


 よって金を貸す店側はもちろんのこと、金を借りる側にとってもメリットがある構造……それを称して『質制度』と呼ぶ。


「ま、CPR(カパラ)の仕組みを簡単に説明するとこんなもんさね。もっともあたいにゃ、人に貸すだけの金はまだ無いからねぇ~。当分はその前段階として武具の貸し借りの『レンタル』って形になると思うさね。追々資金に余裕もできてくれば、CPRもやっていければいいとは思ってるよ。なんせそっちの方が儲かるからねぇ~♪」

「武具のレンタル……それって要は客が店にある武器や防具を新品なり中古品を購入するんじゃなくて、一時的に借りるってことなのか?」


 どうやらアリッサは将来的にCPRで貸し金もやりたいようなのだが、資金不足のため武具の売り買いだけではなく、手軽な武具の貸し借りつまり『レンタル』から始めようと言うのだ。

 これまで売買の仕組みはあっても、レンタルという制度は聞いたことがない。やはり西方地方では、商売にかけて他の地方よりも優れているのかもしれない。それも何事も金を稼ぐという信念のように……。


「う、うーん……武具のレンタルかぁ~……でも、それって……」

「うん? なんだい、文句でもあるってのかい?」


 それまで話を聞いていた俺だったが、新たな懸念材料が生まれてしまい思わず首を傾げてしまう。だがアリッサにはそれ(・・)が気に入らなかったのか、少し怪訝そうな顔つきで眉を顰めている。


 アリッサに睨まれ少し怖いのだが、俺はアリッサに思い切って矛盾点を聞いてみることにした。


「いや、レンタルっつてもよ、結局は相手……つまり客を信頼しないといけないんだろ? でもアリッサのところは新規の店なんだからさ、客への信頼もヘッタクレもないんじゃないかと思っちまってな。そこら辺大丈夫なのか? そのまま持ち逃げとかされちまったり、借りてないとか開き直られちまうんじゃねぇのか?」

「ぅぅっ……あ、アンタ、意外と鋭いじゃないか。そのとおりだよ……」


 アリッサはまさかこの俺に制度の弱点を言い当てられると思っていなかったのか、少しだけ悔しそうにしている。


 客に武具を貸し出すレンタル制度と言っても、結局店側は一時的とはいえ商品を相手に預けることになるのだ。どれくらいの価値がある商品にせよ、そのまま持ち逃げされたりしていてはまったくもって割に合わない。

 むしろレンタルは担保も無く貸すことになるので、店側にとって質よりも断然リスクが高くなる。


 またアリッサはギルド側から商品を委託販売する形なので、もしも金を払わずそのまま持ち逃げでもされたりしたら……その損害はすべて、アリッサ自身が負うことになるだろう。

 だから担保を取っている質までは話が理解できるのだが、商品のレンタルについては時期尚早だと思い質問してみたのだ。


「そこはそれ、解決する方法が無いわけではないですよ」

「あれ、シズネさん?」


「シズネさんがどうしてここに?」と言葉を続けようとして、ふと我に返る。そういえばもう昼近くなるので、レストランに客が来始める時間帯だったことを思い出してしまう。

 きっといつまで経っても来ない俺達を呼びに来てくれたのかもしれない。ま、本当のところは労働力が減ってるこの最中、サボっていると思って制裁(お仕置き)しに来たのだろうとは思うけれども、敢えてはそれを口に出さなかったのだった……。



 その解決する方法とやらを次話執筆までに考えつつ、お話は第147話へつづく

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