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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第139話 朝の身支度と歯磨きと

「これ小僧よ、もう朝なのじゃぞ~。起きるがよいわ。ほれ、小僧よ! 早く(はよう)起きろと言うておるのじゃ!!」

「もきゅもきゅ♪」

「ん~~……サタナキアさん? もきゅ子? ん~~~~っ。ふぁあぁ~……っと」


 今日も今日とて、こうしてサタナキアさんともきゅ子が元気一杯と言った感じに眠りについている俺を起こしてくれているのだ。


 サタナキアさんは俺の頭を剣の平らなところで軽く叩き、もきゅ子はその短い手で俺の顔をペチペチと叩いて起こす。サクサク……。そしてもきゅ子の爪が顔に刺さり、俺は朝っぱらだというのにもうダメージを受けまくっていた。


 ここに来てからまだ半月程度にもならないのだが、既に誰かに起こされるのが習慣になりつつあるのかもしれない。それだけ俺もこの生活に慣れてきたということだろう。……いや、ダメな慣れ方だけどね。


「今日も一日、大変なのじゃぞ~。仕事の合間にジャスミンやアリッサなどが店をやるというのの手伝いをするのじゃろうに?」

「……あ? あ~……そっか。そういやそうだったな……二人を手伝うことになってたなぁ~」


 そこでようやく頭が覚醒していき、昨日あった出来事を再認識していく。どうやら今日はいつもよりハードな一日になりそうだと改めて自覚した。



「おはよ~」

「あっ、おはようございます。旦那様にもきゅ子、それとサタナキア。今朝食が出来上がりますから、顔を洗ったら席に着いていてくださいね」


 もきゅ子を抱きまるでお供のようにサタナキアさんを従えて一階に降り立つと、いつものように朝食を運んでいるシズネさんに出くわして朝の挨拶を交わす。そこで以前の俺だったら、朝の挨拶を交わすことも皆無だった事を思い出してしまった。いつの間にか、こうした何気ないやり取りが俺の日常(ふつう)へと移り変わりつつあるのかもしれない。


「う~い」

「きゅ~」

「分かったのじゃ~」


 そしてシズネさんに言われたとおり、朝食の前にまずは三人で洗面所へ行くことにした。これもいつもの朝の日課である。


「きゅ! きゅ!」

「今拭いてやるぞ」

「きゅ~♪」


 パシャパシャッ。もきゅ子は水が張られたもきゅ子専用の小さな木桶にその短い両手を使い、ペチペチと自分の顔へとかけていた。そして俺がタオルで顔を拭いてやると「ありがと~♪」と言いたげにとても嬉しそうに喜んでいる。ちょっと可愛い。


「ごぼぼぼぼぼっ」

「……なぁサタナキアさん。毎朝のことなんだけどさ、それ(・・)は顔を洗ってんのか?」

「ごぼぼっ? そうじゃぞ。他に何に見えるというのじゃ?」

「……いや、別にいいけどさ」


 サタナキアさんは木桶にそのままドップリっと浸かり、顔を洗っているのだと言う。俺としてはただ単にごぼごぼ言いながら溺れているようにしか思えないのだが、本人がそれでいいならいいと思う。……朝っぱらからシュールなこと、この上ないけれども。


「んっ。今度は歯磨きだぞ。もきゅ子、大きく口開けてみ。あっ途中、口を閉じるんじゃないぞ」

「もきゅ~~~~っ」


「あ~ん」と言ったようにもきゅ子が口を大きく開き、俺はもきゅ子の歯ブラシで歯を磨いてやる。顔洗いと一緒でこれも朝の日課となっていたのだった。最初は「ドラゴンでも歯を磨くのか?」などと疑問に思っていたのだが、野良とは違いもきゅ子は人間の食べ物を食べているので虫歯になりやすくなるのだとシズネさんに言われてしまい、それからは俺が磨いてやることにしたのだ。


 スッスッスッスッ……。正直他人の歯なんて磨いたことが無かったので最初は要領を得なかったのだったが、撫でるように優しく上下に動かせば問題無いと今では手馴れたものになっていた。


「んっ……これでよしっと。ほい、次は水だ。しっかりと口の中をゆすげよ~。残ると苦いからな!」

「もきゅ~っ! もきゅきゅきゅきゅきゅ~……きゅっ!」


 もきゅ子に水の入ったコップを手渡して、口をゆすぐよう促してやる。利口なのか、ちゃんと俺の言葉を理解して歯磨き粉を飲み込むことなく、口に水を含みもきゅもきゅ鳴きながら口をゆすぐとしっかりと吐き出していた。


 別に歯磨き粉ならば多少飲み込んでも問題ないだろうが、なるべくは吐き出す方が良いだろう。特に人間ではないもきゅ子にとっては些細なことで、お腹を壊したりする心配もあったのだ。ドラゴン専用の歯磨き粉でもあれば別なのだが……そんなものに需要はないだろう。


「ん~~っ……ぺっ。んっ……ぺっ。よしっ!」


 ガシガシガシッ。今度は急ぎ早に俺も歯を磨く。一度磨き口をゆすいだ後、もう一度磨いて再び口をゆすぐ。いわゆる二度磨きである。時間をかけ丁寧に磨いたとしても、少なからず汚れは残るものである。ならば、どうするのか……時間は短くとも、二回磨いてやればいいだけのこと。これで大抵の汚れは落ちるだろうし、また食後にもう一度歯を磨いてやれば完璧になるだろう。少なくとも虫歯のリスクを大幅に減らすことができるのだ。


 虫歯とは口の中に残った食べかすや糖分を栄養に歯垢(プラーク)歯石(しせき)などの過程を経て、そして歯を侵食しながら虫歯へとなるわけだ。歯垢のうちならば、歯磨きだけでも十二分に落とすことが出来るが歯石になってしまうと文字通り石のように硬くなり、専用の器具でないと落とせない。また虫歯になればその部分を削るか、最悪歯を抜くしか方法がなくなってしまう。


「もきゅ~♪」

「あっ、こら! 動いてたらちゃんと拭けねぇだろ……まったく」


 もきゅ子共々、簡単に歯磨きが終わり濡れた口元を乾いたタオルで拭いてやるのだが、もきゅ子は嫌々っとして逃れようとしていた。だがそれも決して嫌悪感からではなく、タオル生地が擦り少しくすぐったいのだろう。その証拠にちょっと笑っていたのだ。


 そしてそこでふと「そういやサタナキアさんって、どうやって歯磨きしているのだろう?」と目を向けてみることにした。


「っ!? さ、サタナキアさん、それは……」


 だが、そこには目を疑うような予想もできない斬新な歯磨き光景が広がっていたのだった……


 

 とりあえず振るだけ振っておいて、その斬新な歯磨き光景とやらを次話までに考えつつ、お話は第140話へつづく

※歯を抜く=昔は歯を抜くのに大工などで使う『ノミ』と『金槌かなづち』を用いていたらしい。

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