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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第135話 モンスターは常時裸体族と贅沢品の課税について

 ビューッ。屋外にある露天風呂ということもあり、直接冷たい吹きさらしが裸の体へと当たってしまう。


「へ、へ、へっ……へっくしっ。ぅぅっ……寒っ」


 冷たい風のせいで、俺は思わずその場で身を震いをしてしまう。これは体を震わせ動くことで、少しでも体温を上げる生存本能からくるものだ。


「もきゅ? もきゅもきゅ!」

「ほれ、いつまでもそのような所に突っ立っておらず、湯へと入るのじゃよ。風邪を引いてしまうぞ」


 そんな俺を見ていたもきゅ子は「何で入らないの? 早くおいでよ!」と手招きを、そしてサタナキアさんも早く入るようにと促してくる。

 俺は「確かにこのままでは風邪をひいちまうよな……」っと二人に言われるがまま、体を温めるためとりあえず湯へと入ることにした。

 もちろん湯に入る前には最低限のマナーとしてちゃんと石鹸で体全体をくまなく洗い、そして髪は専用の香料入りの液体で洗った後、かけ湯をしてから足から湯船へと入っていった。


「んっ……んんぅ~ん♪ はぁ~~っ、温かくて気持ちいいなぁ~」


 俺は溜め息交じりに湯の温かさに癒しを感じていた。


「それに今までの風呂って言ったら、せいぜい湯を沸かして簡単に体を洗うくらいだったもんなぁ~。こうして温かい湯に体全体を浸かることなんてできなかったし……」

「そうじゃろうに、そうじゃろうに。風呂は身を清め、心身共に疲労を回復させるにはもってこいじゃからの~」

「もきゅぅ~~」


 俺達は揃いも揃って肩まで浸かれる湯の温かさと気持ちよさ、そして何より癒しを存分に堪能する。これもシズネさんがギルドの宿屋から温泉を強奪……いや、おすそ分けさせた(・・・)おかげである。


 俺も以前冒険者だった頃はギルド直営の宿屋に泊ったことがあるのだったが、宿泊代が安い店のせいなのかせいぜい体を洗うくらいしかできず、こうした温泉なんてものは無かったのだ。

 もちろん宿屋に温泉が備わっている場合、利用するには無料ではなく別途料金を徴収されるか、もしくは宿泊代に上乗せされることになるわけだ。


 またこの世界では温泉に入るのでさえ贅沢と称され、温泉の利用費の他にちゃんとした税金まで発生する。

 そして温泉で得た収入源は『入湯(にゅうゆ)税』として、ギルドから一応(・・)国へと収められているはずである。

 

 この他にも贅沢品などに課せられる『贅沢税』として一例を挙げるとワインやエールなどの『酒税』、タバコや葉巻などの『喫煙税』、金や銀また宝石などを購入する際に発生する『貴金属税』、庶民には不必要と称される甘味に課税される『砂糖税』などがあり、この前ジャスミンに飲ませてもらった『コーヒー』やそして『お茶』なども嗜好品としての税がかけられている。


 それとは別に庶民の日常生活に欠かせない品である塩の『(えん)税』、綺麗な水を利用する『水源税』などなど、様々な税が国ではなくギルドが課しているのだが、それについては嫌でも後々説明することになるだろうから、ここでは割愛させてもらう。



「それにしてもサタナキアさんも大変だよなぁ~。美女にさせられたり、剣に戻されたりしてさ」

「うん? まぁのぉ~、それが(わらわ)の……魔神サタナキアとしての定め(・・)というものなのかもしれんしな」


 俺も振り回されてばかりだったが、ここ最近物理的にも物語的にも一番振り回されているのはサタナキアさん本人だろう。気持ちを理解しているのでそうしみじみ語りかけると、サタナキアさんは「それも自らの定めだ」と冷静ながらに納得している様子。


「それで足りない例の『力』だっけ? それって呪いを解く宝石だかが、また必要になるのか? それとも待ってれば自然と回復するものなのか?」

「う~ん……どうじゃろのぉ~。物語の進行上の都合もあるじゃろうが、作者の匙加減次第じゃしのぉ~。なんとも妾からは何とも言えぬのじゃよ」


 サタナキアさんは「すまんのぉ~」と最後に質問に対する謝罪の言葉を付け加えてくれた。


「そっか……。俺達じゃどうしようもないし、仕方ないもんな」


 それは兎にも角にも、俺達が嫌でも物語の登場人物であることを痛感させられる重い一言だった。


 もはや本編中だろうとサブタイトルだろうと制作秘話(ネタバレ)を恐れないその姿勢に、俺は半ば呆れ果ててしまう。今後についても尋ねようと思ったが、それは前話あたりでしたので敢えては聞かないことにする。……これを読んでる読者さんに文字稼ぎとバレてしまうから。


「…………」

「ぷかぷか♪ ぷかぷか♪」


 俺は真正面を向いたまま、そしてサタナキアさんは湯に浮かび下だか上だかを見ながら、互いに無言のまま(サタナキアさんは自分が浮いてる様を口に出してはいたが)湯に浸かっている。男一人と子供ドラゴン、そして剣が湯に浮いている……それは傍から見れば、とてつもなくシュールな光景に映ることだろう。


「も、もきゅぅ~~~っ」

「うん? おおっ、そうかそうか。妾のせいで長湯をさせて済まなかったのぉ~。小僧よ、もうもきゅ子が限界のようなので妾達は先に(・・)上がっておるからのぉ~」

「ああ、ごめん。ありがと……」


 湯でのぼせてしまったのか、もきゅ子は目を回しながら「もう出ようよ……」と訴えかけてきた。このままでは茹で上げもきゅ子……略して『茹でもきゅ』になってしまう。

 一瞬「俺が一緒に……」と口に出そうとしたのだったが、先にサタナキアさんがそう言ってしまったのでここは気持ちを汲み感謝の言葉を述べ、そのままもきゅ子の世話を任せることにした。


「さぁもきゅ子よ、いつものように妾へと掴まるがよいわ。さっさと妾達の部屋へと帰るのじゃよ。ふぁ~ん♪ ふぁ~ん♪」

「もきゅ~~っ」


 ざぱーん。そう言いながらサタナキアさんは湯から勢い良く浮かび上がると、柄の部分にもきゅ子を掴まさせてそのまま脱衣所へと向かって行ってしまった。


「…………いつ見てもシュールな光景だなぁ~」


 それはサタナキアさんが浮遊している姿か、それとももきゅ子が柄の部分に掴まり移動している姿か……いや、その両方だったと思う。まぁサタナキアさんが湯に浮かんでたのが一番シュールなんだけど。


「ん~っ、はぁ~~っ……と。……(ぽつり)そういやもきゅ子って服、着てないんだよな……まぁドラゴンなんだから当たり前なんだけど」


 意味深にそう呟くとようやく一人になれた俺は、そのままゆっくりと静かに一人の時間を楽しむのだった……。




 温泉から贅沢品への課税についてを紐解きながらも、お話は第136話へつづく

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