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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第131話 商いは飽きない?

 それから俺達は店に帰って来たアマネにアリアとアリッサを明日から一緒に働く奴隷仲間だと紹介をしてから、本来の姿を取り戻したサタナキアさんについても説明することになった。


 だがさすがの勇者であるアマネでさえも「そのような話、俄かには信じられないぞ……」と最初は疑り深くも信じようとしなかったのだったが、砕け散った宝石やサタナキアさんの声を直接聞くと、驚きながらもどうにか納得の表情をしていた。


 俺は「このままアマネが魔王を倒しにダンジョンへ向かうのか?」と尋ねると、意外や意外アマネは「まだそのような時期ではないだろう……」と至って冷静なまま、暫くはウチの店で働き旅に必要な路銀や仲間を集めるのだと言ってくれた。たぶんちゃんと理解しているのだろう。いくら魔王を唯一倒せる聖剣と勇者がいても、そこに辿り着けなければ意味が無いのだということを……。


 それにサタナキアさんの話では「まだ『本来の姿』を取り戻しただけなのじゃ。今の(わらわ)では、正直魔王を倒せるだけの『力』が全然足りぬのじゃ。それにアマネのヤツも技量不足じゃろうに……」などと、まだ魔王を倒せるだけの力を取り戻してはおらず本調子ではない、そして自分を装備できるアマネの技量不足も懸念であると説明してくれた。またその力とやらを取り戻す解決策もどうやらまだ判らずに「暫くはこれまでどおり過ごすのじゃよ」っとアマネ同様、これまでどおりウチで働いてくれるとのこと。


 俺はその二人の言葉を聞いてホッと一安心した。何故なら……まぁその倒すべき魔王様とやらがウチに、そして近くにいるのだから不安にもなるだろう。だが元魔王様のシズネさんはもちろんのこともきゅ子も、何食わぬ顔でその説明を聞いて「そうですか……ああああ、明日からもお仕事しましょうね! それがいいそれがいい……」「もももも、もきゅ! もきゅきゅもきゅきゅ」などと、至って冷静に声を震わせながら頷き、二人が残ってくれることを感謝していた。……してたよね?


 こうして俺達にアリアとアリッサという『ダブルアリアリ』が従業員の一員となり、またサタナキアさんも本来の姿を取り戻して騒がしくともその日一日、初めての休日を終えのだった。


「う~ん、っとぉ~。今日も色んなことがあったよなぁ~。アリアとアリッサみたいなお姉さんコンビが仲間になったり、シズネさんとはデートまでしたり……それに何より一番驚いたのはサタナキアさんの姿だよなぁ~」


 俺はベットの上で背伸びをしながら、今日一日を振り返るように主だった出来事を口に出して確認していく。……だがそれも決して文字稼ぎではないので、あしからずに。



 あれからすぐにウチの店と両隣の建物とを繋ぐ仕切り工事を終えたという山賊リーダーの言葉を受け、シズネさん共々初めて建物の中を確認することになった。正直、ギルド所有とはいえどちらも長らく使っていなかったのか、埃が溜まり掃除が必要になったのだったがこれまた意外や意外、どこも壊れている箇所などもなく「中は綺麗にするだけで事足りる」のだとシズネさんが言ってくれた。まぁ軽めの掃除をするだけで使えるならば、俺としても楽ができるので大助かりである。


 その言葉を受けた俺達はさっそく従業員総出で掃き掃除や拭き掃除を始め、昼食を挟み夕食を食べる時間前にはすべての掃除を終えることができたのだった。そして昨日シズネさんが言っていたように「工事の翌日には、営業をする予定ですので……」との言葉を受けていたジャスミンだったが、生憎と肝心要である『商品の仕入れ』状況の事情もあり、明後日より営業することに。


 その際ジャスミンは「まぁ無理をすれば、明日の午後からでも営業できるんだけどね……」と苦笑いしていたのだが、始めのうちは元手がいらず街の外で無料にて手に入れることが出来る『薬草』などを摘みに行く時間に充てたいらしい。また商売とは『いかにより良い品を安く仕入れ、そしてどこよりも安価な値段で安定的に供給し、それを定期的(・・・)に売り続けること』が最も大切なことだと、ジャスミンは説明してくれた。


 俺はそれに対して「品物をより安く仕入れるのは理解できるけど、客に高く売って利益を得るのが普通の商売なんじゃないのか?」と質問してみると、ジャスミンは「確かにそれが出来れば一番いいけれど、ボクのお店は知名度がないからね。まずはお客さんに安くて良い品がいつでも買えると知ってもらうのが先決なんだよ、お兄さん。これが商売を長く(あきな)う基本的なことだよ!」などと然も当然の如く、言われてしまった。


 確かにウチの店でもナポリタンやらエールなんかはギルド直営店の頃よりも、ほんの少し安価に提供していたのだ。それでもシズネさんの涙ぐましい努力(他店からの強奪スキル)によって、品質を維持し続けているからお客も来ているのかもしれない。


 またこれはどんな商売及び商品にも当てはまることなのだが『高品質の商品を高価格帯で提供して、年に一度ないし数年に一度利用してもらう』のか、それとも『安価な商品を生活の一部として、毎日継続して利用してもらう』のか、ウチの店は断然後者に当てはまる事だろう。


 前者はその商品が売れればドカンとした大量の利益が転がり込むのだが『いつ商品が売れるのか? 売れるまでの保管費用、維持(メンテナンス)費、従業員の給料などは?』などの問題が常に発生するハイリスクハイリターン。

 後者は単価こそ低く大きな利益には繋がらないが『毎日の安定した売り上げと、少ないながらも確実な利益、そして日銭が入る』ことにより、ローリスクローリターンとなるわけだ。

  

 ハイリスクハイリターンで一発賭けに出るか、それともローリスクローリターンで着実に利益を増やしていくのか、商いをする場合これはとても重要になり得る決断と言えるだろう。


 だがそこで「お兄さん、ボクが元いた街では『(あきな)いっていうのは『()きない』とも言うんだよ。人生時には賭けをするのも面白いかもしれないけれども、着実で地道な人生ってのもわりと楽しいものじゃない……違うかな?」とジャスミンに言われてしまい、俺はそこで今の自分のことを例え(・・)として言われているのだと嫌でも気づいてしまった……。



 第132話へつづく

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