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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第130話 魔神サタナキア、誤字力全開ボケ力全開

「あの失礼ですが、貴女は一体……」


 俺は目の前にいきなり現れた美人なお姉さんに声をかけた。

 真っ黒な黒髪に胸元が大きく開いた黒のドレス、首や腰周りには何やら赤い色で作られたなんともいえない装飾品、色っぽくも艶やかな唇に青い綺麗な瞳と、これまた綺麗に整った顔立ち、そして何より特徴的なのは額にある赤い玉のようなものだった。

挿絵(By みてみん)


「なんじゃ、何を驚いておるのじゃ小僧よ……って!? こ、これは妾……なのかえ?」


 どうやらそのお姉さんは自分の異変に気づいたのか、震えるように両手を見たり服を摘まみこれが現実であることを何度も確かめていた。


「お~っ! (わらわ)じゃ、これぞ妾なのじゃ。ついについに……妾は本来の姿を取り戻せたのじゃ!」

「あの、サタナキアさんで……いいんだよね?」

「ふふっ。なんじゃお主、妾のことを疑ごうとておるのかぇ?」


 声はサタナキアさんのまま、これはもう疑うべきもない事実である。どうやら本当に聖剣フラガッハに封印されていたサタナキアさんが、あの赤い宝石によって封印が解かれ本来の姿を取り戻したようだ。


「ほ、本当に呪いが解けた……のね」

「こりゃ~、さすがのあたいでも驚きさね。まさか剣から人が……いや、剣が人になるなんてさ」


 アリアとアリッサも最初は半信半疑といったところだったが、その姿を目の当たりにして驚きを隠せない様子。それもそのはず、先程までただの宙を移動する面白剣が美人のお姉さんに変身してしまったのだ。これで驚かないほうが可笑しいだろう。


「わわっ。ほ、ほんとのほんとにサタナキアさんなの?」

「ふむ。ついにサナの呪いが解けてしまった(・・・・・・・)のですね。そうですか……」


 ジャスミンも目を白黒させながら驚いている。だがシズネさんは驚きこそすれ、何故だかとても複雑そうな顔つきをしていた。


「ふぁ~っははははっ。みな一様に驚いておる様子じゃのぉ? もしや妾があまりにも美人すぎるから見惚れておるのかぇ? そうじゃろそうじゃろ」

「…………」

(中身、完全そのままだわ。なんだろう……この騙されていた感覚は? ってか、マジでこんな簡単に封印解かれていいものなのか? だってサタナキアさんってさ、『魔神』なんだよな? 確か昔世界を滅ぼすとか言っていなかったか? だとすると……)


 サタナキアさんはまだ高笑いしているが、俺は「これはマズイんじゃないのか……」と内心不安になってしまう。


「ってぇ~、ことはなにかい。アンタがこの剣に封印されていた魔神ってことになるのかい!?」

「そうじゃ、そうとおりなのじゃよ。今頃恐れをなしたのかえ?」


 アリッサは念を押すようにそんな確認を取る。


「って、ああっ!!」

「どうしたんだよ、アリアっ!?」


 いきなり素っ頓狂な大声を上げてアリアが何かを驚いていた。見ればそれは先程サタナキアさんの封印を解いた宝石だった(・・・)ものだ。


「ほら見てよ、粉々に砕けちゃってるじゃないのぉ~。これじゃ売りたくても売れないじゃないのよぉ~」

「ほんとだね。もう無残なまでに砕けていやがるね。せっかくの値打ちものだってのに……チックショー」


挿絵(By みてみん)

 アリアは惜しむかのように砕けた赤い宝石の欠片を両手に持ちながらわなわなと震え、アリッサに至っては悔しがるように舌打ちしながら地面を蹴る動作をしていた。どうやら二人にとって目の前の魔神などよりも、お金の方が大切なのかもしれない。まさにプライスレス……買えるものははした金(・・・・)で。


「たぶんサナの封印を解いたせいで、その宝石が力を失って砕けてしまったのでしょうね。どうやらこれは本物だった(・・・・・)ようですね」

「確かに本物かもしれないよ! でも砕けたんじゃ意味ないじゃないのさ!」

「お、落ち着けってアリッサ!」


 シズネさんは冷静ながらにそう分析したことを口に出すと、アリッサは「だから何なのさ!」と怒りを露にしていた。俺はそんなアリッサを止めるため、後ろから羽交い絞めにしてなんとか止めることに成功する。


「あ~っはははは~っ! 見にくい見にくいぞ、人間達よ!」

「み、見にくいって……」

(そりゃ~、両目瞑ってりゃ見にくいどころか、そもそも何にも見えないだろうけどよ)


 サタナキアさんは何故か両目を瞑りながら、俺達が争っている様を嘲笑っていたのだ。たぶん『醜い』と『見にくい(見えにくい)』とをかけたサタナキアさんなりの渾身のボケなのだろうが生憎と語彙力がないどころか、誤字力全開になってしまっていた。


「ふぉふぉふぉっ。まっこと愉快、愉快なのじゃよ。勇者がそのようでは、先が思いやられるわ!」

「ゆ、勇者だって……」

(いやサタナキアさん。アマネのヤツはただいま不在なんだよ。もしかして目瞑ってるから状況分からないのか? あと何でおじいさんっぽい笑いを今ここでした?)


 サタナキアさんは俺たちとは逆の方向を見ながら、そう声高らかにちょっと可笑しなことを言っていた。たぶんボケが進行したのだろう。そうに違いない。


 カランカラン♪ ちょうどその時、タイミングよく玄関ドアベルが鳴らされると勇者であるアマネが帰ってきたようだ。


「うん? みんな何をしているのだ? それになんだか見たことの無い女性ばかりいるぞ。もしや全員新しい従業員なのか?」


 そう言いながらアマネはアリア、アリッサ、そして最後の最後にサタナキアさんの姿を見てながら新しい仲間を歓迎するのだった……。



 ついに本来の姿を取り戻したサタナキア。そしてそこへ勇者が現れた。魔王を倒せるすべてのパーツが揃い、一体この後物語はどうなってしまうのか? それを次話までに考えつつ、第131話へつづく

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