第124話 例え味方と言えども、世知辛く攻撃判定
「実はアリッサったらね、いつも野外商店の怪しげなお店でヘンテコなお面やらツボとか、まるで呪いがかかってそうな物ばかり買おうとするのよ! さっきもそれでトラブルになってね、私が返品しに行ってる間にま~た別のお店で買っているんだもの。ほんと嫌になっちゃうわよ」
聞けば各地方で珍しい物を目にすると、アリッサは必ず何かしら買っているのだという。しかも見る目が無いのか、ボッタクリ商品だったりいかにも怪しげなそれこそ呪いのアイテムを高値で買い漁っているのだとか。そりゃ~、付き合わされるアリアとしちゃ、堪ったもんじゃないだろう。
「ああ~、じゃあさっきの店でも……」
「べ、別にあたいが悪いわけじゃないよ! まさか商売をしているヤツが客を騙すだなんて誰が思うだい? はん! あたいの見る目が無いんじゃなくて、騙す店が悪いのさ! そうさね!!」
俺は先程アリッサを見かけたときのことを思い出し口にすると、アリッサは慌てて誤魔化すかのようにそんな言い訳を口にしていた。
「それを『見る目がない』って言うんじゃないの……まったくもうぉ~っ。ね、ジャスミンだってそう思うでしょ?」
「にゃはははっ。ま、まぁアリッサの言うことも分からないわけじゃ~ないけどね。でも世の中良いお店ばかりじゃないのも事実かなぁ~。特に観光客をターゲットにした野外商店とかはその傾向が強いかもしれないね」
アリアは自分の考えに賛同するように商人であるジャスミンへと話を振った。ジャスミンはやや乾いた笑いを浮かべながらも、「アリッサの言うことも正しいけど、旅をするなら自分で気をつけないと……」と釘を刺した。
「ほら見なさい、アリッサ! いつも私が言ってたこと言われてるわよ!!」
「ぅぅぅっ」
出会ったばかりのジャスミンにまでそう言われ、そしてアリアからこれ幸いとばかり責められアリッサはぐうの音も出ない感じで言葉を発せず押し黙るだけであった。
「ま、まぁアリア。別にアリッサだけが悪いわけじゃないし……もうそのくらいでいいんじゃないか? な、ジャスミンもそう思わないか?」
「……っ! う、ん! そうだね……確かにお兄さんの言うとおり、騙されて買っちゃった物はもう仕方ないだろうし、頑張って働いて稼ぐしか道はないと思うよアリア!」
アリアに責められているアリッサがちょっと可哀想に思えてしまった俺は「もうそのくらいで……」っとジャスミンに賛同を求めるように話を振ってみた。その意図を汲んだのか、ジャスミンも頷きながら「終わったことだし、重要なのはこれからじゃない? アリッサをこれ以上責めないでよ……」と、アリアに告げる。
「うっ! た、確かに私だって傍に居てこうだものね。二人の言うとおり、アリッサだけを責めるのは間違いよね……ごめんね、アリッサ、私……」
「いいや、何もアリアが謝ることはないさね! 悪いのはあたいの方なんだから頭なんて下げないでおくれよ!!」
自覚があったのか、アリアはすぐに「言葉が強すぎたわ……」とアリッサに向け頭を下げ謝罪する。アリッサは戸惑いながらも、「あたいの方こそ、ごめんよ……」とアリア同様に謝罪する。
「ほっ……ん」
「ふふっ……」
それを見て俺もジャスミンも「良かったな」「そうだね」と互いに顔を見合わせ、ほっと一安心した。
「それでその、アリッサが先程騙されて購入した物とはどれなのですかね? ちょっくら見せてくださいな♪」
「ぶっ……ごほっごほっ。し、シズネさん!? 何もそんな言い方……」
空気読めるけど……敢えて読まない!! 代表人の俺の妻であるシズネさんが何食わぬ顔をしながら、再び火を放ちまくった。俺は戒めるため、咳き込みながらに彼女の名前を呼ぶがそれくらいで止まる『タマ』ではない。
「うっ!? あ、アンタわりと鬼なんだね……。ほらよ、コレだよコレ」
「ふにゃにゃ~、にゃ、にゃんで俺に、ふぁたるんだよ、ふぉんなのふぃふりんだ」
※訳:ふにゃにゃ~、な、なんで俺に、当たるんだよ、こんなの理不尽だ。
グリグリ、グリグリっとアリッサはその物を俺の左頬を抉るように減り込ませながら、キレていた。その餌食となった俺は何故か味方からなのに攻撃判定でダメージを受けながらアリッサに対して「理不尽すぎるだろ!」と苦言を漏らす。たぶんなのだか、アリッサも本能的に「シズネさんには勝てない……」と瞬時に悟ったのかもしれない。だから近くに居た一番弱い俺に当たってきたのだろう。
「へぇ~。すっごく真っ赤な宝石が付いたペンダントなんだねぇ~。それにとっても大きいし」
「ああ、何でも店の店主曰く、これは対象物の『呪いを解く』効果があるっぽいって話さ! どうだいすっごいお宝だろ? こんなのそこいらの店じゃ扱っていないって話だったよ! は~っはははははっ」
「ふぉんなのが、ふぉこらのみふぇにあるふのかあよ」
※訳:そんなものが、そこらの店にあるものなのかよ
ジャスミンは興味があるのか、その真っ赤で大きな宝石が付いたペンダントに興味津々と言った感じで食いついていた。アリッサも先程の落ち込みようが嘘のように元気になり、まるで自慢するかのように声を大きくして高笑いをしている。だが、未だその硬い宝石の餌食となっている俺は満足に喋れずに訳を通りしながら、物語本編の文字数稼ぎに貢献するのみだった。
「もしあれだったら、ちょっとボクに見せてくれるかな?」
「うん? ああ、いいともさ! ほらよ♪」
「わわっ、ととっ。もう投げないでよね!」
「悪い悪い、つい癖でね」
ジャスミンは商人らしく『商品に対する鑑定の心得』があるのか、そのペンダントを見せてくれるよう頼むとアリッサも快く承諾して俺の左頬から引き離し、まるで石ころを扱うようにジャスミンへと放り投げた。
いきなり投げられたジャスミンは「とっとっとーっ……」っと言ったようなお手玉の要領でどうにか落とさずにそれを受け取ることに成功する。そして「もう危ないでしょ、アリッサっ!」とジャスミンが怒るのだが、それでもアリッサは「ごめんごめん」と軽い調子であった。
「うっはあっ! ま、マジで死ぬところだったぞ……。って、HPゲージがもうほとんどねぇじゃねぇかよ」
見れば俺の体力ゲージは緑色から赤色へと鮮やかな変貌を遂げ、そしてそこに書かれた数字までも今にも0を指し示そうとしていた。もはや瀕死状態も甚だしいといったところなのだろう……。
自らのステータスにすらも馬鹿にされながらも、物語は滞りなく進みつつ、お話は第125話へつづく




