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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第120話 静かなる場所の作り方とその褒美

「はい。着きましたよ~」

「……で、結局シズネさんが言う『その静かな場所』ってのが、ここ……ってか、ウチの店なんだね」


 見れば……というか、シズネさん先導の元、案内された場所とは何を隠そうウチの店であった。確かに他の邪魔が入らない場所であるが、今日に限って言えば邪魔は入りまくり~の、騒音出しまくり~、の今もっとも静かなる場所とはかけ離れた場所。それが『悪魔deレストラン』である。

 カンカンカン、ギコッギコッギーコッ。ま、今現在改装の真っ最中なのだから騒音くらい普通に出ているのは何ら不思議ではない。むしろ無音の方が怖いくらいである。


「ず、随分騒がしい場所なのね~。外でこれだけ煩かったら、中でなんて話できたもんじゃないわよ……」

「そうさね。なぁ、アンタら、ここはちょいと静かな場所ってヤツとはかけ離れてやしないかい?」


 アリアもアリッサも「何でここに連れて来やがったんだ?」と、文句タラタラ嫌味のようにそう述べていた。


「あ~っ。ぶっちゃけ、そこらの喫茶店で飲み物を買う金が惜しかっただけですよ。ウチならタダとは言いませんが、かなり安く済みますしね。ね、旦那様?」

「……あー、うん。そうかも……しれないね」

(というか、そもそも俺文無しだから金のあるシズネさんに一切逆らえないんだわ。あといつ俺達が働いた分の給金出るんだろ……ちゃんと出るよね?)


 どうやら俺達はシズネさんのお財布事情により、問答無用で店に導かれてしまったようだ。そして俺にも賛同するようと、未だ握られた腕に指の跡がめり込みほど強い力を込められてしまい、頷き賛同する他なかった。


「にゃはははっ。シズネさんじゃないけど、お金は大事だもんね~。アリア達だってそんな路銀に余裕あるわけじゃないでしょ? 違う?」

「ぅぅっ。あ、相変わらず鋭いわね、ジャスミンも」

「ふん!」


 一応フォローのつもりなのか、ジャスミンも「ウチの店でいいんじゃない? お金ないしさ……」などと女子にあるまじき経済観念の持ち主だった。だがそれはアリアやアリッサ達、旅をする者にも当てはまるのか、それ以上口を挟むことはない様子。

 確かに旅をするならば、いつも安定的に仕事を得られるわけではないだろうし、それに稼ぐと言っても日雇いが主になるだろうから路銀は大切な命綱になる。宿泊費や食料に飲み水などの消耗品。一口に旅をすると言っても色々な出費が出るため、不必要なものにはお金をかけられない。


「ま、立ち話しもなんですから、とっとと中へ入りましょうかね。騒音の方はワタシがなんとかいたしますので……」


 キィィィィィィーッ。そう言ってシズネさんはいつもの調子で、木で作られた両開きの玄関ドアを開け放った。


「(『もし仮に材質が木から別なものになったら、どんな音を奏でてくれるのだろう?』な~んて、思ってしまう俺はいけない子。鉄素材のドアに代わったら『スッチィーーールッ』とかって音なるのか? もしくは『てつーーっ』か? ……どちらにせよ、アホらしい音源この上ないよなぁ)』


 そうして俺達は未だ工事が終わらぬ店の中へと入っていく。だがこれまた当たり前の話なのだが、外よりも当然中は更に騒音が酷いのは言うまでも無い。


 ガンガンガンガン。ギィィィィィィゴッッッッ。もう濁音交じりで文字表現でもしないと、外との騒音区別が付かないほどである。 


「おい、てめえら早くしねぇか。間に合わなかったら、シズネ神様(しんさま)にドヤされちまうだろ!」

「へいっ、アニキ!」


 中ではリーダー格の男が下っ端共に大雑把な指示を与えていた。本気でシズネさんのことが恐ろしいのか、皆一様に文句一つ言わず懸命に働いていた。


「あ~、忙しいところすみませんが……」

「誰だ、このクソ忙しい時に声なんて……あっ」


 シズネさんがチョンチョンっとリーダー格の男の肩を指で二回ほど叩いて、来訪者を伝える。これまたクルリっと向きながら、邪魔をする声に怒りを露にするリーダーであったが、それがシズネさんだと理解するとすぐさま非礼を詫びる土下座をしていた。


「すすすすす、すみませんですシズネ神様っ! どうか愚かな俺をお許し下せぇぇぇっっ!!」

「うっわぁ~……」


 もはやその姿は奴隷そのものであった。最初出会った頃の威勢の良さなど微塵も見せず、ただただ頭を床へと擦り付け許しを請うのみ。そんなものを見せ付けられ、俺は「マジかぁ~、情けねぇなぁ~」と哀れみとも思える言葉が思わず口をついてしまった。


「(俺も傍から見たら、あんな感じなのかなぁ~。今後、言動にはより気をつけないと……)」

 

 俺はそんな地面に這い蹲る男を前に自分自身の身の振り方、立ち居振る舞いを考える機会を強制的に与えられてしまった。いわゆる人の振り見てなんとやら……だ。……いや、別に最後分からないから三点リーダで誤魔化したわけじゃないよ。ほ、ほんとだよ。


 そうしてシズネさんは一歩前に出ると、謝りついでに床掃除をペロペロ舐めて綺麗にしなんばかりの男に向かってこんな言葉をかけた。


「いえ、別に大丈夫ですよ。それよりも私達、店の方で静かに(・・・)話がしたいのです。少しだけ工事の騒音ってか、この音をなんとかしてくれませんかね~? ……ってか、それくらい察しろよ」

「へ、へへぇ~っ。おい、てめえら!! 作業音には最善の注意を払え! あと文字稼ぎで、『ノコギリ音』とか『打ち付ける音』も一切合財無しだからな! 気をつけるんだぞ! いいな、分かったなてめえらっっ!!」

「「「へ~い」」」


 シズネさんはどうにか工事の騒音を抑えるようにと丁寧にお願いをしていた。そしてすぐさまリーダー格の男より、下っ端共へと通達されるとそれまで耳を塞がなくてはいけないほど騒がしかったのが嘘のように静かになっていた。


「こ、これで大丈夫でしょうか?」

「うむ」


 リーダー格の男はチラリっと顔を上げてシズネさんの機嫌を伺うように質問していた。

 そしてシズネさんは満足そうに一言頷き、「ほれ、褒美だ!」と言わんばかりにその男の後頭部に右足を乗せてグリグリ、グリグリっとまるで「ほれほれ、さっさと床と一体化しろよな」と言った感じで踏み付けていたのだ。


「ありがてぇ~、ありがてぇ~こってすぅ~。シズネ神様ぁ~、ご褒美ありがとうございますですぅ~」


 だが相手も満足そうに惚悦しているので、俺は何も口を挟めないのだった。むしろ挟んだその瞬間、俺まで床とお友達にさせられることを危惧してのことだった……。


 

 若干シズネさんの性格が変わり……いや、最初からこうだったか。などと迷走しつつも、お話は第121話へつづく

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