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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第114話 外から来る者の視点と、内なる者の視点の相違見解。

「あれ~っ、お兄さんとシズネさんじゃんか。偶然だねぇ~♪」

「あっ……じゃ、ジャスミン!?」

「あら、これはこれは……」


 ブラブラと目的もなく、その行く先々で店の店主を亡き者にしていた俺とシズネさんだったが、偶然にも他地方の商品を扱う出店前でジャスミンと出会ってしまったのだ。しかも俺とシズネさんは未だ腕を組んだままの格好で。「さすがにこれはマズイかも……」っと思ったのも束の間、ジャスミンは明るくこう声をかけてくれた。


「お兄さん達デートしてるんだねぇ~。いいなぁ~……ま、でもせっかくの休日だし、夫婦揃っての時間って大切だもんね!」

「あ、ああ……実はそうなんだよ」


 今にして思えばジャスミンにも俺とシズネさんが夫婦であるということは既に伝えていたのだから、腕組みデートを見られたからと言って動揺する必要性はなかったのだ。


「朝から姿を見かけなかったけど、ジャスミンは……買い物か?」

「あっこれ? うん!」


 見ればジャスミンの右手には今さっき買い物したであろう、紙袋がぶら下げられていたのだ。今日は店が休日だからきっと俺が起きる前に、既に街へと出かけていたのかもしれない。


「何か良い商品がありましたかね?」

「そうだね……さっすがは流通の要の街『ツヴェンクルク』って言った感じだね! 各地方から色々な商品がこうして出店形式で流通してるんだもん。さっきからボクも目移りしちゃうよ♪ まぁでも……」


 シズネさんがそう尋ねると、ジャスミンは元気良く頷き『出店の数』や『商品の品揃え』、そして各地方からこれだけの商品が集まることに驚きながらもとても褒めていた。だがしかし、最後の方は何か問題があったのか少し影を落とした顔をしている。「一体どうしたのだろう?」俺はそんなジャスミンが気になり、聞いてみることにした。


「ん? ジャスミン、そんな暗い顔して何か問題でもあったのかよ?」

「あ~……問題というわけじゃないんだけど……。実は西方地方の調味料や食べ物なんかも置いてる店があったんだけど、値段がべらぼうに高かったんだよね。それも2、3倍以上はザラに……にゃはははっ」


 どうやらその品揃えの多さには満足のようだったが、値付けにはご不満の様子である。


「まぁ確かに……な。安くはないよなぁ~」

「でしょ!」


 俺が賛同するとジャスミンは両手を握り締めながら、前のめりにグイっと「そうだよね!」と迫って来たのだ。俺はシズネさんの手前、慌ててジャスミンにそれを伝える。


「じゃ、ジャスミン(ちけ)ぇって」

「わわっ。ご、ごめん」


 どうやら我を忘れ力を入れてしまうほど、商品がボッタクリのような値付けだったのかもしれない。


 この街がダンジョン誘致による観光資源から得られる収益と共に冒険者達から収めてもらう税や買い物などで消費される収益、そこに先程ジャスミンが言っていたように『流通の要』のため、物品などが各地方から集まることによる流通税(いわゆる関税)やその収益による税などにより、この街は維持されているのだ。


 だから各地方からの品物には当然税金なども上乗せされ、そこに運び賃なども加算されるために価格はその地方よりも断然高くなってしまう。もちろんあまりにも価格差が生じないようにと国側も関税などを調整したわけなのだが、前にも述べたとおり今はそれも商業ギルドが実権を牛耳っているため、緊急輸入制限措置(セーフガード)が機能していないのかもしれない。


 他の地方から来る商人達は皆一様にわざわざ遠い道のりを経てこのツヴェンクルクの街まで運び、その商品の種類によって関税を払い、そして売買して収益が上がった場合にもその利益の一部を税として街に収めなければならないのだ。


 このため、三重苦にも四重苦にも成りえてしまうので、各地方からの品物は値段が高い傾向にある。また広場も無料で提供しているわけではなく、場所代も当然取られるわけなのだ。もちろんそれもギルドが管理をして、国に収める税として徴収しているわけだ。


「でもほんっと、商品が高くて参っちゃうよぉ~。これじゃあまとも(・・・)に商売してるのが馬鹿みたいだもん!」

「そっか。他の地方から来たジャスミンからすると、この街はそう映るんだな……」


 だが今にして思えば、そんなジャスミンの憤りには俺も心当たりがある事だった。


 俺もシズネさん達に出会うまでは冒険者として、その日稼いだ分の利益をギルドへと収め、この街の宿屋に泊まり、食事はいつも外食だったのだ。だから当然知らず知らずのうちに買い物などもして、自然と税を納めていることになる。


 確かに「これはちょっと高いなぁ~」なんて思っていても、自分自身が冒険者なので「別にダンジョンに行けば、いくらでもお宝は得られるなら高くても仕方ないか」とか「ギルドに行って簡単な依頼(クエスト)でもこなせば、毎日食っていくくらいの仕事はいつでもあるし……」など楽観的に考え、倹約や貯金などという発想は持ちいえなかった。 


 たぶんそれすらも、下手をすればギルドの思惑の一つなのかもしれない。仮に一つ一つの税は安くとも、積もり積もれば相当な額になるのだ。もしかすると『ギルド』とは俺が考えている以上に巨悪で、既にもう庶民の生活とは気っても切り離せないくらい根付きすぎているかもしれない。


 それこそ、庶民にとって国よりも断然大きな存在として……。



 少しずつ物語の本質をチラリズムの如くチラリチラリさせつつも、お話は第115話へつづく

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