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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第103話 悪レス式、タイトル回収の謀り方とその適当さ

 さっそくジャスミンが先程焼いたという焼き菓子アップルパイと、カフェラテを飲みながらティータイムに勤しむ。ま、ぶっちゃけ飲んでいるのが『お茶』ではないので『ティー』ではないと思うのだが、この際目を瞑る事にしよう。


挿絵(By みてみん)

「お~っ♪ このアップルパイ? ってのも外側がサクサクしてて美味いな! それに甘くともほろ苦いカフェラテと相性抜群だしさ!」

「そうだな。それに中に入っている林檎の甘さとすっぱさが絶妙なハーモニーを奏でている感じにも思えるぞ♪」

(わらわ)もこのサクサクは気に入ったのじゃ! ほれ、どんどん切り分けてやるのじゃ」

「もきゅもきゅ♪」


 俺はアップルパイの外側の生地と、カフェラテの相性について。アマネは中に入っている林檎の二味を、そしてサタナキアさんは己の特技を生かしてアップルパイを切り分けていた。そうして俺達は評論家ぶるつもりで、各々思いつく限りの感想を述べていく。こんなときボキャブラリーの多い人と、鳴き声オンリーのもきゅ子が羨ましいと感じてしまう。


「ふふっ。みんなからそんなに喜んでもらえてボクも嬉しいよ♪」


 ジャスミンは鼻の下を右人差し指で擦りながら、少し恥ずかしそうにしている。


「ちなみにこの林檎はわざとすっぱい銘柄を使用しているのですね? 仮に林檎が甘い品種のモノでは、こうした甘さとすっぱさが絶妙にコントラストできるアクセントがある味には仕上がりませんし、それに林檎自体の甘さと砂糖の甘さとが混ざり合うことで喧嘩してしまい、このような繊細な味わいは消えてしまうでしょうね。またこのカフェラテも程好い甘さと最後に来る苦味のおかげで、後味がすっきりとして重くなりすぎないのが良いですね♪」


 シズネさんは俺達の感嘆の言葉を打ち消しにかかったのか、全力で食べた感想を述べていた。まさに元魔王様はモブ相手にも、全力で倒しに来るスタンスなのかもしれない。


「(というかシズネさん、絶対さっきの補足説明文(地の文)意識して発言したよね? チートすぎるんだってばっ!!)」


「わわっ!? ほんとシズネさんって凄いんだねぇ~。『わざとすっぱい品種の林檎を使ってるって』とか指摘されたのは、ボク初めての経験だよ! 普通、こんなお菓子を作る時には『甘さx甘さ』が理想の形だってみんなに思われがちだけど、実はそうじゃないんだよね」


 ジャスミンはシズネさんの感想に感激すると、アップルパイに秘められた味の二面性(・・・・・)についてを語りだした。


「さっきのシズネさんの言葉を借りるなら、二種類の甘さによってくどい(・・・)甘味になっちゃうし、相互に打ち消しあっちゃうからどちらかの存在が希薄になっちゃうんだ。だからボクはすっぱい品種の林檎を使う事により、『アップルパイ』って言う一つの料理の中でも味のメリハリを付けて楽しむ。それを目指して作ってみたんだぁ~♪」


 確かに一つのモノに二種類の甘さでは、最後まで口に中にその甘さが残ってしまい後味の余韻(よいん)が重くなってしまうだろう。甘さとすっぱさがあることにより、最後まで飽きずに食べられ、楽しむことができるのかもしれない。


「それに外側のもサクサクしてて、食べたことのない食感だもん」

「うん! それが『パイ』の特徴なんだよ。でも少しでも力を入れると、すぐに崩れちゃうからオーブンから慎重に取り出さないといけないから意外とリスキーなんだ」


 外側のサクサクはパイと呼ばれるものらしい。林檎とパイで『アップルパイ』とは何とも究極完成形の名前に相応しい。


「これってさ、別に林檎じゃなくても作れるよな? 例えばさ、別の果物を使ったりしても……」

「おっ! お兄さん、良いところに着目したね。そう、林檎と同じくすっぱい味のベリーを使えば『ベリーパイ』に、果物じゃなくて変わったところだと魚を入れた『フィッシュパイ』、それにひき肉を入れた『ミートパイ』なんてものも作れるんだ。それこそ中に入れる()によって、様々な味と顔を見せるのがパイの魅力かもしれないね♪」


 俺は中に入れる具材を変えることで、別の味を出せるのでは? っとジャスミンに聞いてみた。すると既に知っていたのか、様々な具材を使ったなんとも味の想像ができないような名前が次々とあがっていく。どうやら『パイ』とは、とても奥が深い料理の一つなのかもしれない。


「へえぇぇ~っ。そんなに種類あるのかよ? うっわ、何だかそれだけでも世の中の広さを感じちまうよなぁ~」


 パイ一つで俺は世界が広いことを痛感してしまった。確かに各地域ごとに色んな料理があり、例え同じ料理だったとしてもその地方の特色が取り入れられるため一つとして同じ料理になり得ない。


「にゃははっ。まぁ……ね。でもさ、『人が食べ物を食べて美味しい』って感情だけは万国共通だとボクは考えているんだ。ほら、美味しいものを食べる時って人は自然と顔が綻んで笑顔になるじゃない? 人が笑顔になれば争いなんて起きにくい(・・・・・)んじゃないかな? だから笑顔こそ、世界共通の『平和の象徴』じゃないのかな? なんて思ったりしながら、ボクはいつも料理を作るんだよ♪ あっ、もちろんサタナキアさんやもきゅ子も、美味しいって感じるだろうけどね!」


 ジャスミンは美味しさの定義について自分なりの考えをそう披露していた。確かに美味しいものを食べれば人は笑顔となり、周りにいる人とも話が弾み、悪い事をしようとは思わなくなるだろう。ひいては争う機会も自然と少なくなり得る話だ。食とは人の根源であると同時に活力でもある。よく食べよく飲み、お腹が満足さえすれば、自然と人と人の間に争いなんて起こらないのかもしれない。


 もしかするとこの物語も……そこ(・・)こそが最終目的地ではないだろうか? っと俺はジャスミンの話を聞きながらそう思ってしまうのだった……。



 たまにはそれっぽい雰囲気で適当に話を締めつつも、物語自体の意義を説いてみたりしながら、お話は第104話へつづく

※適当=いい加減(無責任)などの意味もあるが、適切に物事を当てはめるなどの意味もある。この場合の引用は後者となる。

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