面倒事を押し付けられた
乙女ゲームのタグを付けたのに活かしきれていない気が…
活かせるように頑張るので、お許しください(*・ω・)*_ _)ペコリ
私はお金持ちの子供達が通う学校に通っている。
その名も、桜庭学院。
春になると、校内にある桜がとても美しいことからこの名前らしい。
だけど、そんなことはどうでもいい。
私にはもっと大事なことがあるから。
それは、目の前に立っているお馬鹿さん達をなんとかするという、大切な役目なのだ。
私の言う「お馬鹿さん達」とは、6月の半ばにやって来た転校生の前田萌奈に夢中になった人達のことだ。
恋愛は個人の自由だから、彼女に夢中なことを咎めるつもりは全くない。
なら、何故私が彼らを何とかしなければいけないのか。
それは、彼らが婚約者達を邪険に扱ったり、ボロクソに言って一方的に婚約を破棄したからだ。
さっきも言ったように、我が校はお金持ち達の集う学校。
つまり、学院の中に婚約者がいる人が多い。
一般人でも、一方的な婚約破棄は良いとはされていない。
我が校の生徒で婚約者がいる人の大半は政略結婚だ。
家同士にメリットがあるからこその婚約なのだ。
つまり、勝手に放棄すると会社に悪影響を及ぼすかもしれない。
そんなことに気づかづに婚約破棄をする人が多数でた。
すると、生徒会に苦情が多数寄せられたらしい。
「生徒会がなんとかしろ」と。
我が校はまるで漫画のように、山奥にある。
しかも、先生よりも生徒会の人間の方が立場が上だ。
そうなると、必然的に問題が起こると対処は生徒会役員が行なわなければいけない。
しかし、生徒会役員の男性陣は萌奈に骨抜きにされてしまって全く働いてくれない。
残った女子の生徒会役員が働く中、説得とか面倒くさそうだからやりたくないなぁ、なんて私は思っていた。
そして、何故か生徒からの信頼が厚いなどという理由で、私に白羽の矢がたった。
絶対、めんどくさいから押し付けただけでしょ。
「あまり睨まないでいただけますか?萌奈が貴方の般若のような顔に怯えています。嗚呼、なんと醜いのでしょう。」
そう言うと、副会長が萌奈を背中に隠した。
副会長の後ろで萌奈が、大丈夫だよ、と目にうっすら涙を浮かべて話していた。
私は現実逃避をして遥か彼方をみていただけなのに。
それなのに般若…
「ねぇ、琴音。私の顔って般若に似てるのかしら?」
困ったように振り返れば、生徒会で会計をしていて私の親友の沢口琴音がまさか、と首を振る。
「彩花は般若より、天使にそっくりだよ?」
天使…
それはそれでちょっと…、なんて考えていると、横槍が入った。
「萌奈の方が、どう見ても天使だ!」
「はぁ?どう見ても彩花さんの方が美しいわ!」
私の近くにいた生徒が叫ぶとぎゃあぎゃあと言い争いが始まった。
はぁ…
時間の無駄だ。
コンクールのためにヴァイオリンの練習しなきゃいけないのに。
このままでは、いつまでもつづきそうなので、パンパンと手を叩き言い争いをやめさせる。
「貴方達が誰に恋をするかは自由です。だけど、他人に迷惑はかけないで。とくに、生徒会役員の皆さん。お仕事をする気がないなら、役員を辞めてくださいね。あと婚約者のいる方々は、正式に家の了承の元婚約を破棄してからどうぞ?」
私は矢継ぎ早に言いたいことを言った。
さっきも言ったように、婚約には双方にメリットがあるから結ばれている。
いくら親に可愛がられていても、家同士の取り決めを一方的に解消すれば、大問題だ。
最悪の場合、破門される。
私は暗に、その覚悟があるのかしら?、と問いかけた。
私の言いたいことが分かったのか、何人かは青ざめたり、下を向いている。
「彩花さん。自分の婚約者が私のところにいて悲しいからって、酷いこと言うのはやめてください。」
萌奈が涙を溜めて震えながら私に言った。
嗚呼、なんて愚かなのだろう。
酷いこと?現実を見れない貴方には酷いことでしょうね。
だけど、夢の中で人は生きられない。
私はため息をつくと、萌奈ではなく自分の婚約者に話しかけた。
「賢介、私がヴァイオリンに夢中なばかりに、貴方に婚約者らしいことが何一つ出来ませんでした。ごめんなさい。私との婚約を放棄してください。」
私はそう言って、お手本のようなお辞儀をした。