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『なあ、お前ら、〝忘れられた神話〟って知ってる?』


 そのスレの冒頭は、そんな一文で始まっていた。

 書き込み主の名は『伝道師』。所謂ハンドルネームというやつだ。それもとびっきり厨二寄りの。


 有紗ありさは画面を上にスクロールし、もう一度そのスレッドのタイトルを確認した。そこには一際大きな赤い字で、こう綴られている。


『死んだ人間に会いたいやつちょっとこい』


 問題の書き込みは、二○○九年八月十三日のものだった。〝「アレセイア記 死者」でググれ〟とある。


 有紗はすぐさまブラウザから新しいウィンドウを開き、ホームページで「アレセイア記 死者」と入力した。〝検索〟のボタンをクリックすると、すぐに結果が画面上へずらりと並ぶ。


 検索結果の一番上に、それらしいサイトがヒットした。リンク名は、『アレセイア記~死者の国と禁忌の神話~』となっている。どうやら個人の手によって開設されたサイトのようだ。

 試しにクリックしてみると、画面が真っ黒に切り替わった。

 その真ん中に、白い文字で短い一文が綴られている。


『あなたは神を信じますか?』


 見るからにオカルトサイトだった。画面に表示されているのはその一文と、『はい』、『いいえ』と書かれた二つのボタン式リンクだけだ。

 有紗は神など信じてはいなかった。昔父方の祖父が亡くなったとき、両親がうちはナントカ宗だからとか、寺がどうだとか騒いでいたが、有紗はもっぱら自分は無宗教だと信じている。


 けれでも今は、神はいるのだと信じたかった。それがどんな神でも構わないから、親友の陽香はるかを返して欲しいと思った。

 陽香は学校でいじめられていた有紗を救ってくれた、たった一人の友人だ。その陽香が今から一週間前、交通事故で他界した。

 飲酒運転をしていた乗用車に突っ込まれ、明らかに非のある運転手は助かり、何の罪も無い陽香だけが無惨な姿となって死んだ。有紗は運転手を呪い殺してやりたいと思ったが、そんなことをしても陽香は二度と帰ってこないという現実に打ち拉がれた。


 だから、神様。もしいるのなら。

 祈りながら『はい』のボタンをクリックする。新たな画面が表示された。やはり真っ黒なトップページだ。

 冒頭にでかでかとサイト名が記されたそのページには、『アレセイア記とは』、『禁忌の術~死者蘇生法~』、『管理人のブログ』と書かれた三つのリンクだけが用意されていた。その上に小さく並んだ文字が、このサイトの最終更新日が二○○九年の十二月二十五日であることを示している。


 その真ん中にある『禁忌の術』というのが気になったが、有紗はまず『管理人のブログ』と書かれたリンクをクリックした。ここがどんな管理人によって開設されたサイトで、信用に足る内容なのかどうか、それをブログから判断できるのではないかと思ったからだ。

 ブログの最新記事は、サイトの最終更新日と同じ日付になっていた。記事のタイトルは『hallelujah!』。やたらとやらせ臭い手短な本文の後ろには、三百を超えるコメントが付いている。


 有紗は何の気なしにそのコメント欄を開いた。記事に寄せられているコメントの大半は、読む価値も無い冷やかしや中傷の羅列だった。

 しかしその中に、ちらほらと気になるコメントが混じっている。二○一二年の九月二十二日、340番のコメントには何かの〝儀式〟に成功したという怪しげな内容が書き込まれ、その後ろに賛否両論のコメントが続く。


 それらをさらさらと流し読みながら画面を最後までスクロールすると、最新のコメントに辿り着いた。


 二○一三年十月三十一日。去年のハロウィンだ。


 コメント番号は398。そこにはこう記されている。


『俺も儀式に成功した。ここのコメント欄に書かれてあるとおりにしたらあの世に行けた。

 だけど全部>>340の言うとおりだった。俺は何もかも失った。

 もう後には引き返せない。だから俺は、もう一度あの世に行こうと思う。

 俺がアレセイア記から学んだ真実は一つだけだ。』



『悪魔は、自分の中にいる。』











(了)

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