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第9話 爆炎

  * * * * *


 燃え盛る王都イーディスエリーで、幼い薄桜色の少女は泣いていた。

 突然起きた爆発による王都の全焼。家屋はほぼ全焼――。

 

「熱い……よ、ママ……!」


 少女は、母親に助けを求める。……が、顔を見上げると母親の後ろには黒髪で長髪の男が一人。手の甲には棺桶やらの紋章。


虚無の棺桶(ボイド・コフィン)……?」


 10年前当時の虚無の棺桶(ボイド・コフィン)は王都イーディスエリーでもとても有名なギルドで、『正義』を目標として活動し、人気を誇っていた。

 ――しかし。


「イリス……逃げ……なさい」


 全身を火傷した母親は娘の少女に忠告した。


「嫌だよ……ママ! きっと虚無の棺桶(ボイド・コフィン)のお兄さんが助けてくれるよ!」

「違うのイリス!!!」


 と、母親が大声で叫んだ刹那――。


 ――ドーン!


 母親の後ろに立っていた虚無の棺桶(ボイド・コフィン)のメンバーと見られる男が母親に触れた瞬間、大爆発を起こした。


「マ……マ……?」


 少女から見る母親は涙でにじみ、よく見えなかった。

 突然、母親が爆発に巻き込まれたと分かっていた少女は涙が止まらなかった。


「不条理という言葉を知っているか……。世の中には魔法のようには上手くいかない……。逃げるなら逃げろ……。だが、来るなら来い……」


 少女は泣き叫びながらもその場から……。



  * * * * *



(夢……?)


 魔導協会に牢獄に囚われていた少女イリスは目を覚ました。

 10年前の悪夢を見た少女は汗を掻く。


「イリス」


 と、聞き覚えのある声がする。イリスはゆっくり顔を見上げると。


「アイリス……? 何で?」


 そこには透き通るような白髪をした女性が一人立っていた。


「……変な夢でも見ていたんですか?」

「え、ええ。ちょっと」

「10年前の事件とか……でしょうか?」

「まあね。さっき、ソラが来てね。話を聞いたの……」

「やはり、そうですか」


 ソラは、デリエラと対峙する前に魔導協会に訪れていたという。


「イリス、あなたの無罪は証明できました。これでも私、学院長の特権がありますから」


 と、アイリスは少し微笑みならそう言った。


「え!? それじゃあ」

「行ってあげてください……。現在の情報では王都のギャンブル街の地下でミリィが戦闘しているという情報があります」

「分かったわ」

「気を付けて……」



  *



――王都地下。


 そこには、ライトブルーの髪のミリィ・リンフレッドが虚無の棺桶(ボイド・コフィン)の生き残りガンダス・メラが対峙していた。

 ミリィ調査隊は10人だが、ほとんどが探索魔導師。回復ヒール魔導師が2人ついているが、まともに戦闘ができるのはミリィただ一人だ。


「爆発魔法の発動まで1時間……。それ以内に俺を倒せなかったら王都の負けだ」

「そう……ならミリィがあなたの息の根を止めるしかないんじゃないかな!」


 と、ガンダスが発した言葉に対してミリィが叫んだ時

 ――ミリィの背中から2つの羽が現れる。真っ白で綺麗な羽で美しい。


「ほう、天使エンジェルか……」

「そう言われると調子狂うんだけどね!」


 ミリィは右手を前に突き出して魔力をためる。羽を丸めて、魔力が逃げないようにする。

 ミリィの右手に魔力が集中し、周辺に強い風が流れ込む。

 それを見ていた女生徒たちは腕を額に当てて、強い風を防ごうとする。


「すごい……」


 ミリィから発生した強く吹く風に女生徒は驚く。


「はッ!」


 科学の限界を無視して高濃度に濃縮された空気が男に向かって放たれた。

 すさまじい勢いで魔力がガンダスにぶつかった。地下はまるで嵐。恐ろしいほど強い風が女生徒を巻き込んだ。


 ――ドーン!


「……嘘」


 ガンダスの目の前で突如爆発が起こった。


「いくら威力が高かろうと、爆発してしまえばそれは消えてしまう……」

(爆発で私のサイクロン・バーストを防いだ!?)


「あの、先輩の攻撃を防ぐなんて何者なの……!?」


 と、セリーヌは呟く。

 ミリィは自らの羽を使って空中を飛んだ。地下で狭い空間だが、飛び回るには問題はなかった。


「――イラ・ベラ・デリ・オリーラ――!」


 ミリィが魔法詠唱のようなものを叫ぶと、ガンダスを囲むようにして数十の竜巻が現れた。

 ガンダスが竜巻に触れたその時。ガンダスの手から血液が飛び散る。


「――!?」


 ガンダスが目を大きく開いた。驚愕のあまり、手を引いてしまう。


「その中にはね。魔力が忍ばせてあるの」

「ただの竜巻ではなさそうだ……。斬る魔力か……」


 逃げ場をふさいでガンダスをみじん切りにしようとする策だ。

 竜巻が輪となって男を囲むと、ミリィはガンダスに向かって球体のものを投げ込んだ。


 ――男の頭上から落ちてくる玉は突如、白く光り出し大爆発を起こす。

 高濃度に濃縮された魔力で構成された魔力弾と思われた。


 「眩しい!」


 女生徒が不意に呟いた。ミリィには勝機が見えた。


「す、すごい……」

(爆発には爆発で対抗する……。これで――!)


 それを見た女生徒は目を疑った。

 ――しかし、人影は倒れてなどいなかった。


「悪いが、少し俺もお前を舐めていたようだ」

(くっ。……でも少しは効いてる筈!)

「だが、これで終わりってもんだ。天使エンジェルのお嬢さん」


 気づいた頃には遅かった。ミリィの目の前――いや周辺に無数の小さな赤い魔力のオーブのようなものが浮かんでいた。


 「……しまっ!」 


 ――引火。


 ――ドドドドドドドーーーン!!!


「ミリィ先輩っ!!!」


 あまりもの爆炎で地下を造っている岩石が一部崩れ落ちた。

 ミリィは羽で自分の身をとっさに護っていた。


 ――しかし。


 ミリィの背中から羽が消えた。

 少女は倒れる。

 


 ――少女の闘志は爆炎とともに燃え尽きた。



「せんぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっっっ!!!!!」

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