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第68話 レクセア賭戦Ⅰ

 レクセア王国王城では二人の最強が対立していた。

 五大国の最強魔導師『神聖魔導団(アルテンリッター)』だ。


 ――南国ディオ王国の最強、ルーク・アルトノイト。

 ――北国レクセア王国の最強、ゼクス・アーデルニア。


 南北の対立ともいえるその雰囲気は、王室の一室に駆け寄ってきた兵士の肌に刺さるように感じられた。

 

「率直に言うぜゼクス……」


 そう、ルークがわざわざここにやってきたのも単なる交渉のためだった。


「人間界に《六魔(サーヴァント・セイス)》夢魔が出現した。力を貸してほしい――」


 ルークは突如、声のトーンを落として話を振る。

 それを聞いて尚、何も動じないゼクスはただ押し黙る。


「ふん、そんなことだと思っていた……。答えを言おう――却下だ」


 予想していた通りの返答が返ってきたのにも関わらず、ルークは手を強く握る。

 今後の危険を予知したルークから痛苦と憎悪が滲み出ていた。


「お前はいつもそうだ――ゼクス。何故いつもそんなに非協力的なんだ。あの時のことも……」

「まあ、落ち着け。貴様は何もわかっていない。俺の利益にならないものに何故――どんな理由があって関わらなければいけない? 貴様が言っていることは、自分のために戦ってくれ――とただそれだけを訴えているだけだ。俺にとって何の価値も利益もない」

「もし、人間界をサキュバスが占領すれば、勢力はこの魔界にも及ぶ……」

「ほう、それがどうした?」

「お前の王国にも危機が訪れる可能性だってあるんだぞ」


 ルークは言葉を慎重に選びながらも半分逡巡していた。

 ゼクスは常に攻撃的だ。

 二人の思想は常に相反していた――故に、常に意見が合うことはなかった。


「別にこのレクセア王国がどうなろうが俺には関係ない。俺はこの国の兵士共を自分の快楽のために利用しているに過ぎないからな……。この世界は常にゲームに捕らわれている。強者が弱者を支配し、自分の都合で利用するのは当然の定義だ。俺は強い。だからこそ、兵士共を駒のように扱っている」

「何が――言いたい?」

「レクセア王国に夢魔が襲撃してこようと、駒を使えば簡単に撃退できる――つまり、俺がわざわざ出る必要がないということだ」


 ゼクスは淡々と語る。

 その頑固さにルークは耐えているだけだった。


「どうしたルーク。ついに出る言葉も失せたか――哀れな弱者が。レクセアからしたら貴様はただの外敵に過ぎない。振り下ろされた刃は返すのみ。俺を動かしたいならば、貴様が俺より強いことを示せ。強者が支配できるものは弱者のみだ!」

「――っ!?」


 その刹那だった。

 ゼクスが腰にさしてある柄を掴んだ時、その姿が消えた。

 ルークは瞬時に悟り、傍にあった豪勢な椅子を宙に投げた。

 椅子は瞬きできる間もなく、たったの一閃で綺麗に両断される。

 

「時空間移動――貴様もできるだろう?」


 ゼクスが低いトーンで呟いた時、一瞬でルークの手前に右足を着地させると紫電の一蹴がルークの胸元に目掛けて飛んでくる。

 ルークは間一髪で両腕で防ぐと、後ろに飛ばされる。

 王室の壁を砕き貫き、雪国の吹雪の中へと轟音とともに追い出された。

 

(ちっ。まだあいつの動きにはついていけない……!)


 ルークも時空間移動を使い、ゼクスに対応しようとしたが完全にそのスピードに体が追いついていけなかった。

 反射神経の僅かの差も含めて及んだ結果だろうか。

 ゼクスのいる王室に寒気と吹雪が入り込む。

 冷たい風にゼクスの白髪は踊らされていた。


 ルークは着地場所を見つけ、眩む白銀の雪地の上に足をついた。


「はぁ……。はぁ……。はぁ……」


 ルークの息が白くなり、雪のなかへ溶け込む。

 さっきまで王室にいたゼクスは吹雪の中を歩き、ルークを睨んでいた。


 ゼクスが手にしているのは二本の刀剣――双剣だ。

 対して、ルークは二刀ライフルを既に手にしていた。


 ルークのライフルは基本的に距離感が求められる。

 そこに、俊足な近距離型のゼクスがいるとするとルークにとって相性は最悪だった。


「どこを見ている……」


 低い声はルークの頭上からのものだった。

 ルークは上からの双剣を察知し、後ろへ跳ぶ。

 再び間一髪でかわし、ゼクスの双剣は雪に刺さる。

 ルークは瞬時に一発の銃弾を撃ち込んだ。


 ――ドン。


 銃弾はゼクスの振り払った剣と共に弾かれる。


「しまっ……!」

 

 ルークが声を上げたのはゼクスの魔法にあった。


「俺の魔法を忘れていたか? そんなただの金属の塊を打ち込めば俺の駒になるのは避けられないぞ?」

「……斬りつけた対象物を支配する魔法か」


 ゼクスの魔法は自分の刀剣で斬ったものを完全に支配し、自由自在に操る魔法だ。

 『神聖魔導団(アルテンリッター)』の最強にふさわしい魔法といっても過言ではない。

 ルークが放った銃弾は宙に浮遊していた。

 故にゼクスが振り払った時に斬りつけていたからだ。


 銃弾は光速でルークに向かって飛んでくる。

 ルークは自分の心臓を打ち抜いてくる寸前に体の軸をずらし、避ける。

 ――が、銃弾は宙にとどまり方向を変えてルークに襲い掛かる。

 

「くっ……!」 


 ルークは反射的にライフルで防御をとった――一本の銃が弾き飛ばされた。

 銃弾が眼前を通過するともう一本のライフルで銃弾を撃ち込んだ。


魔障弾(ましょうだん)……!」

 

 魔力を断ち切る銃弾は、ゼクスが支配していた銃弾に当たった。

 ゼクスは実際、魔力で銃弾を支配していた。

 故にその魔力さえ遮断すれば支配は解ける。

 打ち抜かれた銃弾は威力を失い、地に落ちた。


「狙いを定めずに的確に当てるとはさすがの狙撃力だ。魔界最強の狙撃力を持つ貴様には少し簡単すぎたか?」

「……甘く見られては困るぞゼクス!」


 ルークが狙撃した銃弾は、高速で飛び回る燕をスコープを覗かずに撃ち落とす技術に等しい――故に常人にはできるはずのないスキルだ。

 ルークは時空間移動を使い、弾かれたライフルを拾う。

 

(時空間移動をこれ以上連発するとまずいな……)

 

 時空間移動はかなりの魔力を消費する。

 時空間移動自体、使用できる魔導師がごく僅かに限られている。

 故に、その移動を使うだけでも魔力を消費してしまう。


 ルークは魔力空間からライフルの銃弾を転送で入れ替えた。

 ルークの魔法は自分自身の魔力空間を所持していることだ。

 魔力空間は無限大で万物を保管し、転送を繰り返す。


「次はこちらのターンだぜ、ゼクス……!」


 ルークは二刀のライフルを天に向ける。


連弾(れんだん)故雨(こう)……!」


 ゼクスの周囲に雨のような連続的な鋭い魔力の銃弾が降り注ぐ。


「実体のないもの――つまり魔力であればお前の支配の魔法は発動できない! ……終わりだ!」


「ソニックブレード……」


 ゼクスが呟くと、双剣を雪の地に叩きつけた。

 刹那、大量の雪の塊がゼクスの頭上に浮かんだ。

 ルークの放った魔力弾の雨は大量の雪に吸収された。


「嘘……だろ……」


 ルークは驚愕する。


「ソニックブレードにより、剣を振動させ雪を大量に斬りつけた――ただそれだけの話だ」

「やれやれ、一筋縄ではいかない――と」

「当然なことだ。強者である俺が簡単に根を上げる筈がない……」


 刹那、雪国の戦地に緊張感が迸った。

一週間ぶりの投稿となってしまい、申し訳ございませんでした。

諸事情により、二月は投稿頻度が若干下がってしまいます。

ご理解いただけると幸いです。

 

さて、勘の鋭い方はサブタイトルにも書かれている「Ⅰ」から推測できたと思います。

そうなんです。このゼクスとルークの戦闘は長く続く感じになるんです。

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