外伝1-1 裏路地の淫れ
※この話は本編と少し路線がずれたお話――番外編となります。この番外編では本編とは違い、ソラを視点とした一人称で書かれています。
――俺はどこに来ているのだろうか。
視覚、湯気と何か動く――人?
聴覚、女子の声。
触覚、甘い泡の香りと微かな硫黄の匂い。
味覚、はいつも通りだな。
触覚、生暖かい。
俺の五感は全てを物語っていた。俺は、目の前の女の子たちを目の前にしているが、自然体で接触されている。どうなってやがる――ここ――一般の温泉だぞ。
そう、俺はいわゆる《女子》になっていたからだ。
「さあさあ、イリスっち早くー!」
酷い話だ。罪悪感しかない。
*
時は1時間前――。
俺は同じ部屋で寮生活をしている恋人イリスにおつかいを頼まれた。あのロイドとの闘いから聖剣シリウスを肌に離さず持っているため、聖剣シリウスを腰に差し、寮を出た。
イリスに頼まれた物は、これから出発する予定のクエストに使う魔器だ。寮からはちょっと遠い距離にその目当ての商品は売られている。入院で足が鈍ってきていたため、交通手段は一切使わず、徒歩で目的地へ向かう。
ゾルザークに滅茶苦茶にされた王都もソラの復興金の援助によって八割は回復しているらしい。そのため、商店街も変わらず賑わっていた。
「おー! お前は神薙ソラじゃないか! どこ行くんだ?」
と、俺は見知らぬ八百屋のおっさんに話しかけられた。
「今から町外れにある店に行って魔器を買いに行くんだ」
「ほーなるほど。長旅になるんならこれ持ってきな!」
と、おっさんはソラによくわからない果実(?)を投げた。ソラは、両手で見事にキャッチする。
「いや、でも……」
「なあに、ちょっとしたわしからのお礼だ。わしの兄貴はロイドにやられてな……そのお礼ってことで頼むぞ」
「おっさんのお兄さんが……!?」
「すまない。良くないことを言ってしまったな……」
「いっ、いえいえそんな! じゃあ、俺、急いでるんで! 帰り寄ってくんで!」
「おうよ! 頑張れよ若者!」
俺は、八百屋のおっさんに手を振って商店街を再び歩き続けた。
*
ソラが歩く先には、裏路地に入る一本の道がある。
(まあここ近道だし、仕方ないけど通るか……)
俺は八百屋のおっさんに貰った謎の果実をかじりながらその裏路地を歩く。裏路地は、数々の生ごみが散乱していて、カラスが襲った形跡も残っている。腐敗した空き家や街の不良共が描いただろう落書きまでもが目立った。死体のような異臭もして、気味が悪くなり、果実も不味く思えてくる。
「お兄さん♡」
(――げっ!)
嫌な感じがした。違法風〇店の小娘ギャルのような声。若い。そして、嫌な勧誘心。
俺は恐る恐る後ろを向くと、そこには、予想通りのバニーガールの巨乳ギャルが自分の胸を強調しながら堂々と立っていた。バニーガールはステップを踏みながらソラに近づいてくる。
(まずいだろここ……! 俺が誰だか知ってるのかよ! これは逃げるしか……!)
と、俺が逃げ出そうとしたとき、俺の両腕は奴等の支配下に置かれていた。
(力強すぎだろっ!)
「だめよ♡ あなたはアレミル様の求める理想の男性なのよ♡
「誰だ……それは……」
バニーガールはいつの間にか三人に増えていて、既に俺を包囲していたのだ。
ソラの腕を掴んでいるバニーガールは表情が緩んでいて、本気を出せばソラの腕が簡単に逝くとみた。
(なんだこの匂い……。なんか、変な気分に……)
バニーガールの胸の谷間から嫌気を差すような匂いが充満してくる。
俺は見事にその匂いを嗅いでしまい、目に映る景色が歪んできたのを感じた。ついに、脳までにも支障をきたしたのだろうか、脳が眠ってしまったのか、意識が朦朧とし、最後に覚えた感触はバニーガールの胸の柔らかな感触だった。俺はその谷間に押し付けられ、気絶した。
「イーディスの英雄とやらも色気には弱いのね……」
と、ボソッと一人のバニーガールが呟く。
*
目を覚ますと俺は見覚えのない天井の下にいた。周りを見渡すと紫色のカーテンに囲まれ、両手両足は拘束具で拘束されていたのだ。
「ふふっ、あんた寝顔……可愛いんじゃん!」
不意に、若くて可愛らしい声がした。誰だと思い俺はその声がした方向を見る。――そこには、桃色のビキニ姿の超絶可愛い豊満な胸を持つロリ娘がいたのである。
「誰なの君……!」
(そうか、俺は変なバニーガールに眠らされて……ってことはここは!)
「ウチはアレミル・アレルミンチ! よろしくねっ!」
「あれみる……あれるみんち? ちゃん……? 不思議な名前だな……」
その時、アレミルがその小柄な体を使って無抵抗なソラの服を破りはがした。
「なっ、何を……!?」
「ちょっと、その魔力――貰うね?」
「魔力だって!? 君は一体……!」
「さっきから君君って! ウチ19なんですけどぉ……」
(みっ、見えないわ……!)
「まっ、いいんだけどね? 結局、今から寝てもらうんだし」
「え……?」
アレミルは俺の体を手のひらでそっと撫でまわした。上半身全体を触れられ、時々ビクッてなる。
でも待って!? 何をしようとしてるの!?
しかも、こんな可愛い子に馬乗りされて俺の本能とかそういうのが崩れ始めて――。
――と、アレミルはソラの上半身に自分の舌を持ってくる。
「え、ちょっ……!」
すぅーー。と美少女の舌が腹部から胸部へと通る感覚。
でも、やっぱりこういうのイリスにしてほしい……ってかそんな場合じゃない!
――俺はまた意識を失う。ゆっくり、その瞳孔を閉じながら。
*
気付くと俺はまた違う場所に来ていた。
さっきのが夢なのか、現実なのか――。分からない。そしてこの今いる場所が夢なのか現実なのか――。
実際に俺は二回も眠らされた。どうなっているんだ。
ここは……、旅館か? 和室の畳の上に四枚の布団が敷かれていた。
だが、そんなことより少し身が軽かった。筋肉の質量が軽くなったイメージだ。しかし、頭が少し重い。髪の毛が多くなったからか。だが、それはなぜか――。理由はすぐそこにあった。
肩を通る透き通った薄桜色のロングヘア。18歳にしては少し小さめの胸――。いや、小さめというよりかは俺の胸が少し大きくなった感じだ。ふと、そばにあった鏡を見てみると、
――イリスだ。それ以外に考えられない。
待ってくれどうなってるんだ。なぜ俺が女になって……!?
加えてイリスになってる……!?
「ははん、驚いちゃったかな……?」
と、さっき聞いたばかりの淫乱な少女のロリ声。
――そう、これは美少女が犯した楽しいデスゲームの開始の合図であった。




