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第42話 絶望

 ついに魔力が消滅した。

 叶ってほしくないことが叶ってしまった。

 望んでいないことが――。

 そして、救うという意志を突き通せなかった。


 

 世界を――――守れなかったのだ。



 体中の骨がバキバキになり、意識不明の重体に陥っているソラ。魔力を失った他の戦闘員。


 その中でたった一人と一体だけが、身体に魔力を保持している。

 そう。ロイドとゾルザークだけが――。

 

 魔力を失った以上、できることは皆無。魔導師という立場から外され、自分の無力感だけを味わっていた。


 アインベルク騎士団の騎士団長レント・ドゥバルクライは、ディスバーストにより、全ての魔力を使い切り、魔力を失った。――未練はあったものの、後悔はなかった。自分ができることは全て尽くした。ただそれだけが一つの救いだ。

 対して、ミリィとイリスはソラのサポートに回ったものの、ソラを犠牲にしたという罪悪感を感じたままだった。


 言葉を失い、希望を失い、魔力を失い――だが、失っていないものはただ一つ。




 ――生きるという意志。




「逃げましょう……ここから、遠くまで……。ずっと、ずっと……遠くまで……」


 レントは目の前を絶望を受け入れて、喉を潰したような声をかけた。




 ――逃げた。




 ずっと、逃げた。できるだけ、遠く。命の尽きない限り――。


 逃げることしか考えていなかった。



 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない…………。



 その思考だけが、イリス、ミリィ、レントの頭の中を錯乱していた。目の前が白くなるまで自分の無力を呪った。それと裏腹に、責任を放棄したという思いも同時に巡る。

 もう戦えない。――勝てないのだ。

 目の前の敵を討つことができないのだ。

 如何に今までの魔導師が魔法に頼っていたのだと痛感する。魔力がない世界がこんなにも惨いのだと。


 逃げて逃げて――それでもイーディスの外へ出るのは程遠かった。



 ――その時、逃げる魔力を失った魔導師たちの前に魔の手が差し掛かる。


 逃げ場を遮るゾルザークの根が地中から、道のコンクリートを突き破って飛び出す。ゾルザークの根は無抵抗なレントを捕まえ、根で縛り、拘束した。


『まずは貴様からだ。レント・ドゥバルクライ。俺の右腕の科しは受けてもらおうか……。やれ……ゾルザークよ』


 ゾルザークの根は徐々に拘束の力を強める。


「やめろ、やめろ……。やめろォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!」

 

 レントの心の叫びは弱まり、身体からバキバキというえぐい音が数秒に渡り、鳴り響く。


 ――攻撃は想像を超え、一方的過ぎた。


「やめてよ……。やめてよ……」


 イリスは頭を抱え、地面に膝をつく。心臓に包丁を突き立てられたかのような残酷な心持ちが交錯する。不意に涙まで溢れただす。――絶望感だ。

 ゾルザークはレントをコンクリートの地に何度も叩きつける。イーディス中に響き渡る音。叩きつけられるたび、吐血し、何度も肉体的苦痛を叫ぶレントを見ていられないイリスとミリィ。


「レントっちを離して!」


 ミリィは子供のように泣きながら、レントを拘束するゾルザークの根に向かって石を投げつける。無論、びくりともしない。ノーダメージだ。


『そうか、貴様も死にたいのか……』


 ロイドがミリィに向かって死の宣告をしたとき、ミリィがしてしまったことを深く後悔した。イリスは慌て、ミリィの手を取る。


「――逃げるよ」

「イリスっち! それは……!」

「何も……できないの……」

「でもそれだと! レントっちを見殺しに……!」

「私だってレントさんを置き去りになんてしたくないわ!」

「無理だってば……」

「――え?」


 さりげなくミリィの口から発せられたたった一つの言葉。

 

 ――無理。


 無理? そんなことあっていい筈がない。それは諦めるということを意味していた。

 イリスは考える。こんな時、ソラはどうしていたのかと――。

 ソラは諦める人間? それとも、諦めない人間?

 そんなもの決まっていた。


 ――ソラは諦めず、守りたいものは必ず守り通すのだと。


「――ミリィ、ありがとう」

「イリスっち……?」


 そう言い残して走り出す。ゾルザークの元へ、そして、レントの元へ。

 不可能だと分かっていても闘おう。もし、失敗しても失敗した時に考えよう。逃げるのを諦めたのは、自分が諦めないことを諦めたからだ。

 ――だって、自分だけ逃げるだなんで卑怯でしょ?


『――――』


「レントさんを……助ける……!」


『――――』


 イリスは近くの武器屋にあった太刀を無断で手に取り、ゾルザークに向かって走る。


『――――』


「はァァァァァァァァァァァァァァァッ!」


『――醜いな』


 ロイドが不意に放ったその言葉を後に、イリスはレントを拘束しているゾルザークの根に太刀を突き刺す。吹きだした緑の樹液がイリスにかかる。その光景は、イリスの心の中の復讐心を反映しているようだった。


『ふん。やれ……、ゾルザーク……。世界を背負うことを知れ……』


 底辺で足掻く罪人共を哀れむようにイリス達を見下しているロイド。無論、ロイドは自分以外の命を惜しむことはなかった。ゾルザークは他の3本の根で一斉にイリスを串刺しにしようとする。

 絶望だった。


 ――と、イリスが覚悟をして目を瞑ったその時。



 ――一斉に、ゾルザークの根は切断された。と、レントは拘束から解かれる。



 ――何年も磨き上げられてきた剣の匂い。そのそばからは、人の気配が一、二、……いや、無数なのだろうか。



「世界を背負うことを知るのはロイド・イスタンベラ……、(なんじ)である……」


(まさか、この声……!)


 イリスの前に立っていたのは、一本の剣を持った金髪の騎士。鎧は纏っていないもののマントを羽織った豪華な服装――。貴族と思わせられる容姿だ。

 その背後には、長い金髪で前髪をストレートに垂らした王女編みチックな可愛らしい髪型をした美人の女性。そして、その女性の後ろに立ち並ぶ数え切れないほどの兵士。


「アインスト陛下……!? レイフェル王女まで……! それに、アインベルク騎士団の兵士たち……!? 嘘……よね……」




 そう、そこに舞い降りし騎士はアインベルク王国、現国王アインスト・アインベルクだった――。




「イーディスの英雄の仇、討たせてもらう…………!」

第42話を読んでいただきありがとうございます

遅くなりましたが、7月、8月は更新が遅れたため、9月はかなり更新頻度を上げていきたいと思います。

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