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第4話 討伐クエスト

 ――《クレア学院》のとある教室。


 教室は広かった。

 部屋は隅々まで黒い大理石(?)で囲まれ、生徒の机は段々となっていて、前の黒板をよく見渡せる。

 生徒100人は余裕で座れる机の数。

 さすがは魔導師学院と言ったところか。

 生徒はやはり全員女。年齢はバラバラだが、大体が現世(モラル)でいう女子高校生。

 その教室がハーレムへと天地開闢するのは数秒後と言っても過言ではなかった。

 黒板には『神薙ソラ』という文字が少し大きめに書かれていた。


「あの…。神薙ソラです。よろしくお願いします」

(やはり、女だけの教室って緊張する……)


「まっ、そういうことだから仲良くしてやってくれ。神薙、その辺に座っとけ」


 と、女教師はソラをゴミ捨て場に放り投げるかのように、適当にその場を流した。


(あれ?あれってイリスじゃん。丁度いい、あそこに座ってやろう……)


 と思って、何事もなかったようにイリスの隣の席に着く。


「なんで、ここに座るのよ……」

「しっ、仕方ないだろ……。初対面の人ばっかりなんだし……」


 イリスは、怒っているのか照れているのか分からない素振りだ。


(もう。私とソラが変な関係だと思われちゃうじゃない!まっいいか、いずれバレるんだし)



「ねえ、この学院の男子って初めてだよね」

「あの子ちょっとカッコイイんじゃない?」

「何言ってるの可愛いって」

「可愛いとか……」

「まさか!」



 教室が無数の女性徒の声でざわつく。

 《クレア学院》の生徒はどんな教育を受けて、どのように育った生徒かは無知だ。

 中にただ普通の暮らしをしている生徒が居るのかもしれない。

 中には有名財閥のお嬢様がいるのかもしれない。


 ――俺の天国なハーレム・ライフはここから始まる。





 *





 お決まりの休憩時間がやってきた。


(俺が数々のアニメの研究を通してここから起こるイベントはもう予想がついている――そう、俺の周りに女子が集まる)


 ――が、何故だ。教室の女子たちはソラを迷い込んだオオカミを見るような目をして、ソラをジロジロと見ていた。


(何故だ何故だ何故だァァァァァァァ!)


 と、小柄な少女が女子の集団からぴょこっと出てきた。

 いや小柄か?小柄な割には、学院長のアイリスほどの胸が出ている。

 ライトブルーの髪色で、髪を後ろで一つ縛りにしている。


 ――ポニーテールだ――


 小柄な少女はソラの方にとんできて、ソラの体を人差し指で3回つつき、上半身から下半身に向かって指を撫で下ろす。


「ああん」

「わッ! 何か変な声でたよッ!?」


 と、小柄な少女は驚いて二歩、三歩、後ずさりした。


(しまったァァァッ。あまりにも、この女の子がやらしい手つきで体つつくわ触ってくるわで俺の性的本能が刺激されて声が出てしまったァァァッ!)


「驚かせてすまなかった」

「いいよー! だってソラっち可愛いんだもん!」

(ソラっちだとォォォォォ!?)


 『ソラっち』それは、ソラが現世(モラル)で中学時代に呼ばれていたあだ名だったので、懐かしい思い出が一瞬蘇った。

 ただし、俺に対するいじめっ子はそんな愛称で呼ばない。読んでもくれないのだ。


「ミリィはソラっちとランチ行きたいなぁ!」


(ミリィ? この子はミリィって名前なのか……)


 彼女の名は、ミリィ・リンフレッド。

 《王都イーディスエリー》育ちで、商店街の看板娘をしているらしい。

 看板娘といえば、店の客の心を惹きつける娘のことだ。

 こんなにも元気で、顔立ちもよく、出ているところは出ている女の子はそう簡単にはいない。

 看板娘になっているからには当然のことなのだろう。


「そっかー、じゃあミリィちゃん。今日の昼、食堂で会おう!」

「やったあ~! ミリィとっても嬉しい!」


 ミリィは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねている。

 こんなにも小柄で可愛げな女の子が魔導師と考えると不思議な心持ちになる。

 ――しかし、物事はそう簡単に進む筈がない。

 隣でずっと見ていたイリスがソラにつんつんと肘をつく。

 

「ちょっと! 朝、昼話があるって……」


 と、イリスはミリィに聞こえないくらいの小声でソラに耳打ちする。

 ソラの耳に美少女の生暖かい息がかかる。

 耳が微かに赤く染まる。

 ――超ドキドキするのは言うまでもない。


(そっ、そうだった! あまりにも可愛いロリッ子を前にして約束忘れるとか、俺、人としてどうなんだよ!)


「ごめんね! ミリィ――ちょっと昼はソラとの用事があって」


 と美少女イリスは美少女ミリィを説得する。

 ――美少女の会話とか初めて見たわ。とソラは思う。

 現世には余程の女子がいなかったのだろう。


「そっかぁー残念。でも、イリスっちが言うなら仕方ないな」


 幸い、ミリィとイリスは友達だったため、この場は軽く済ませることができた。


「じゃあ、ミリィちゃん。明日にしようか」

「うん! そうだね! ソラっちとのランチ楽しみ~」


 と、そんな会話をしていたらあっという間に休憩時間は終わったのである。



 *



 昼休憩の時間がやってきた。


 ソラとイリスは《クレア学院》の長い長い廊下を歩いている。

 要約すると、この学院を何も知らないソラをイリスが案内している。ということになる。

 パートナーとしてアイリスに任されたことであるが――。


「イリス? あそこ何かあるのか?」


 廊下の先には何やら大きいホールが見えた。

 そのホールにはたくさんの女子生徒が集まっている。

 女子たちは男のソラを見つけるのが早かった。



「あれって、例の特待生の」

「聞くところ首席らしいよ」

「そうそう、あのイリスのパートナーっていう話も聞いたわ」

「年頃の男女が2人で……」

「キャー!」



 《クレア学院》の女生徒に絶賛されるソラ。

 女の子に注目されて嬉しくない筈がない――筈だったが少し気恥ずかしい気持ちも持ち合わせているのは確かだ。

 ソラは周りにいる女子たちをジロジロと見渡してしまう。

 ――とその時だった。


 ソラの背中にむにゅっと生温かくて柔らかい感触が伝わる。

 後ろを振り返ろうとすると、真っ白な両手がソラの腹を包んだ。


「えっ!? ちょっ、イリス!? 何してるの!?」


 周りにいる女子たちが顔を真っ赤にしてキャーキャー言い始める。

 一部の女子は両手を顔に当てて指の隙間からこちらを見てくる。


「って、それ私じゃないんだけど!」


 イリスは必死に否定する。

 と、ソラの背中から柔らかい感触は離れた。

 そこにいたのは学院長のアイリスだった。

 ギャルゲーによく出ているメインヒロインの如く、後ろに手を組んだまま上目遣いでソラを見てくる。


「可愛いらしいですねソラは」

「って、アイリスさん!? 何故ここに!?」

「アーイーリースーーーー!」

「そう怒らないでください――廊下を歩いていたらあなたたちを見つけて後を追っていたら丁度いいところに来たようでしたから」



 アイリスは人差し指を唇に当てながらそう話した。


「せっかくなので、私からこの場所を説明しますね……。ここには、王都イーディスエリーの一般人を中心に依頼(クエスト)が集まる場所です。まあ、簡単に言うと《クレア学院》のギルド的役割を果たしています」

「すっげー。万能だな!」

「はい。依頼(クエスト)をクリアしますと報酬が貰えるのでお金に困った生徒さんもよく利用します。あっ、あと、単に鍛錬も兼ねて利用する生徒さんもいますよ」

「なあ、イリス。何かやってみようぜ」


「まっ、いいけど? 力試しってことで――」


 3人は依頼書が貼ってある掲示板までやってきた。

 そこにはたくさんの依頼書が貼っており、討伐から護衛まで、様々な依頼(クエスト)があった。


「あっ! イリス、これ行かないか?」


 ソラは掲示板に貼り付けてあるクエストを指さす。




*************

【溶岩島に住むドラゴンを倒して】

最近、溶岩島に住んでたドラゴンの動きが変なんだ。

今にも王都に飛んでくるかと思い、毎日が不安で仕方がねぇっすわ。

どうか、討伐をお願いしたい。


依頼人:溶岩島で鉱物を採ってる俺

報酬:1,400,000エリー

備考:3~4人以上推奨

*************




「却下…」


 イリスが首を左右に振りながら、右手を片目に当ててそう言った。


「えー! なんで! ちょっとケチなんじゃ……」

「そんなに命がけな依頼(クエスト)は行きたくないわよ。まずはせめてこれで」


 イリスが依頼書を手に取る。




*************

【森の農場のピクフィーの討伐】

俺の森の農場に変なモンスターが来て、野菜とか荒らされちまった。

ちっと追い払ってほしい。


依頼人:農場のおっさん

報酬:3,0000エリー

*************




「まあ、イリスがそういうなら……まあ、いいか」


 ソラは美少女からの好感度を下げるのだけは避けたかったので仕方なくイリスが指定した依頼(クエスト)を受けることにした。


「本来なら担当の教師が受注の手続きをしますが、今回は特別に私が学院長の権限を利用して手続きを済ませちゃいますね」


 アイリスがそう告げると躊躇する間もなく、依頼の受注は済まされた。


『【森の農場のピクフィーの討伐】受注完了』

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