第3話 美貌な学院長
――見たことない天井だ
――ん?何だこれ
――柔らかくて気持ちいい
ふわりとした肉厚で、むにゅっと指を沈み込ませると弾力を感じる。
ソラはその弾力の正体を見ようとゆっくりと目線を動かした。
「――大胆なんですね」
そう。
ソラが堂々と触っている――いや、揉んでいる正体は女性の胸そのものだった。
白髪の女性はソラが寝ているベットで一緒に横になっている。
「ごっ、ごめんなさい!!」
ソラはとっさにベッドから跳び起きた。
女性はソラの愚行に関してあまり触れず、にっこりと笑っている。ソラは自分がいる部屋を見渡した。
――広い
が、そこには知っている同い年の少女が一人、イリス・エーヴェルクレアがいた。
「イリス!?」
「――ヘンタイ」
(嘘!さっきの見られた!?)
しまった。とソラは思う。イリスは頬を赤く染めていた。
「心配…させないでよね、5日間も眠っていたんだから――。死んだと思ったじゃない。よく心臓刺されて生きてるんだと感心したわよ」
「5日間も寝てたの!?」
(そうか俺。心臓やられたのか)
『5日間』。その言葉がソラの頭の中で飛び回った。
「そういえば!あの後どうなったの!?」
「男は他の協力者と一緒に逃げてしまいました」
ソラの質問に答えたのは、さっきソラが胸を揉んでしまった白髪の女性だった。
「協力者と!? ――あ、そうだ、あなたは?」
「はい。私はアイリス・エーヴェルクレア。この《クレア学院》の学院長を務めています」
「わざわざ学院長様が俺のところに!? ――エーヴェルクレアってまさか」
「よく気づきましたね。そうです。私がイリスの実の姉です。先日は、イリスを助けてくれてありがとうございました」
「いえいえー。――って、イリスのお姉さまだとオォォォォォォーーーーーーーー!?」
不覚の驚愕な事実がソラを刺激した。
「あっそうそう。ソラにはこの《クレア学院》に入学してもらいます」
数秒の沈黙。
「――今、何て?」
「もう一度ですか?《クレア学院》に入学してもらいます!」
彼女、アイリスは笑う。
――『《クレア学院》に入学してもらいます』
何度ソラの心の中で繰り返しても間違いはなかった。
「え、まじ……」
「まじです!」
アイリスは微かな笑みを向けたまま答えた。
「いいーっ、よっっっっしゃァァァァァァァァァァァーーーーーーー!!!」
ソラは大きな声でガッツポーズをとる。
「で、でも。この学院って女子しかいないんじゃ――。そこに男の俺が入っちゃっていいの!?」
「いいんですよ。あなたのその膨大な魔力、すさまじい戦闘技術。あなたをイリスの推薦による本学院、首席特待生として歓迎します」
――えっ、今何て!? 首席って言った!?
――嘘だろ……。俺が首席!?
――首席ってつまり、1位、トップ。
――でもあの時は不意打ちで。
「感謝しなさいよね……。ソラが《クレア学院》に入りたいって言ったんだからね。別に……あなたのためじゃないけど、交渉してあげたんだから」
と、イリスは曖昧な表現で言葉を発し、また顔を真っ赤にした。
(待って、ツンデレ美少女とか俺のタイプすぎるんですけど!? ――そして、顔を真っ赤にするところ天使だ……)
「でも、首席特待生ってなんで俺が!?」
「あなたほどの魔力なんて、見たことないです。もっと魔導師として極めればこの王都最強も夢ではありませんよ」
「ま、まじかよ!」
(俺をこの異世界に召喚してくれた神様!どなたかわからないけどマジでありがとうーーーー!)
ソラは心の中で涙を流した。
もう現世なんてどうでもいい。
そう思った。
「あの……ソラ……?」
(なんだ、イリス…顔が赤く)
イリスの顔は赤く染まり、可愛らしい唇を微かに動かしながら、両手を自分の太もも辺りで組んでいる。
「この前は……その……助けてくれて……ありがとう……」
「お、おう」
(ヤバすぎィィィィィ!!! マジイリスちゃんってば天使の上行っちゃってるから……もう、イリスと一緒に住んでたらもう死んでもいい!!!)
「だから……、さ……、私のパートナーになってよ……。――その! だって、私、自分にピッタリのパートナーいないから」
――こんなことがあっていいのか。
――俺がこんなにも超絶美少女のパートナー!?
――これも異世界ならではってやつか。
「あ、当たり前じゃないか!俺がイリスのパートナーとか出会った時から望んでたことだし――。それに、イリスにパートナー申請されて断る人なんかいないくらいだ!」
「そうでもないですよ…? イリスはちょっと強すぎてパートナーとして成立する人がいないくらいでした。ソラとの出会いは運命中の運命って感じですよ。だって、イリスはソラが《クレア学院》に入ってくるまでは、この学院の首席でしたから――」
「ええぇぇぇぇっっ!? やっぱりイリス凄いな! 俺があの時見た魔法凄すぎたし!」
「でもあの魔法は、全然本気じゃないっていうか」
「ってことは、その上もあるってこと!?」
「そ、そうよ…。だからその、よろしくソラ……」
「おう!」
――とこんな感じでソラとイリスはパートナーとなった。
そして、ソラは《クレア学院》に入学することになる。
※一部訂正(「学園」→「学院」)しました。