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第24話 灼熱の地

 アイン村の自然を感じさせる夜は涼しい風と生暖かい熱気と共にやってくる。

 木造建築の空き家のベランダで、二人の恋人は月光に輝く海を見ながら夜を語っている。


「ねえ、ソラ?」

「ん?」

「抱き着いてもいい?」

「えっ、な。お、おう……いいぞ」


 口ごもるソラはイリスの問いかけに動揺の色を見せた。


「……ありがと」


 イリスはそっとソラの腰に手を回して体を密着させた。微かな胸の感触が伝わり、ソラの頬は赤くなる。


「ねえ……こんな私の胸でも……興奮するの?」

「…………ドキドキしちまうだろ? 別に興奮とかじゃあねえよ」

「……そう。ならよかったわ」

「どうしたんだよ……急に」


 数秒の沈黙があり、イリスの頬は徐々に赤くなっていくのが見えた。ソラの露出した腕にイリスのサラサラの薄桜色の髪が当たる。暖かい雪の肌が密着し、体温がある感情と共に上昇していった。


「ソラって私みたいな貧乳じゃなくて、やっぱり胸は大きい方が好きなんでしょ?」


 ソラは意外な質問に目を丸くした。


「俺は胸の大きさとか気にしないぞ。それに、イリスはスタイル抜群で……その……え、エロいんだから自分に自信を持った方が……」

(やべ、何言ってるんだ俺……)


 殺される。そう思ったが、そうはいかなかったようだ。


「ありがとう……ソラがそう言ってくれると何よりも安心するな」

「おう……」


 ソラは心の中であることを決心した。


「なあイリス! 俺は……!」


 と、そう言いかけたとき、あることに気付いた。――隣でイリスが立ったまま、そして、抱き着いたまま寝ていたことに。

 ソラには超絶美少女が自分に密着したまま眠っていたことに関してわくわくせずにはいられない。何かをしてやりたいと思ったのだが、さすがにやめておくのが恋人としての仁義なのだろう。


「おやすみ……イリス」




  *




 アイン村の朝は生暖かい空気に覆われていた。溶岩島からやってくる熱気から来ている。


「よしアンタらこの船が100人乗りの超耐熱船だ。とっとと乗りな」


 どっしりと構えたロカが自慢げにそう言った。

 そこにあった船は特殊な塗料で赤く塗装された豪華そうな船だった。2階建ての船は室内までも何もかもが完備されていた。


「……おばさん、すっげえな!」

「おばさんじゃないわい! アタシはエリート船大工さ!」

「おばさんっちすごーい!」

「だからおばさん言うな小娘!」


 ソラとミリィはロカに叫ばれるもそんなこと関係がなかった。早く乗って溶岩島に行きたい冒険者魂が熱く燃えていた。


「おばさん……。船の操縦は僕にお任せを――では、行ってきます」


 アインベルク騎士団団長のレントが代表して別れを告げる。


「アンタまでか……。アタシはおばさんじゃないわっ!」


 総勢100名の騎士たちがずかずかと超耐熱船に乗り込む。

 全員が超耐熱船に乗ると、敬礼。


「おばさんさん。この度はありがとうございました」


 アイリスが一礼。


「おばさんじゃなーい!」


 最後に交わしたその言葉と共に、超耐熱船の帆一斉に開く。




  *




「あ、熱い……」


 超耐熱船は無事、溶岩島に到着。

 アインベルク騎士団全員が上陸すると、その熱さを肌で感じ取る。

 溶岩島にいると体感温度は60度ほどに達する。溶岩や岩盤から放出される熱がその熱さの原因とされている。


「そういえば、冷却魔法の使える魔導師がいましたよね?」


 レントがそう確認すると、鎧をまとった一人の白髪の男性兵士が姿を現した。


「それは私のことでしょう……。私の魔法なら周囲の状態冷却により、体感温度は40度程落とせます」


 男性兵士はしゃがみ、左手を地面に置いた。


「……――アイスエイジ――」


 そう呟いた瞬間、空間に冷却魔法結晶がいくつも現れ、周辺を涼しくした。結晶は一人一つつき、一人一人を平等に涼しくする。

 周りにいた騎士たちもその涼しさに快感を覚えている。

 

「これは涼しい……」

「ホントね」

「騎士団長を代表して、感謝します……」


「お役に立てて光栄でございます」


 そう言い残して男性兵士は5歩後ろに下がって列に戻った。

 男性兵士の呟きに応じてイリスはぺこりと頭を下げる。


「では、イリスさん。アインベルク城で行った作戦会議の説明をお願いします」


 レントがそう言うと、イリスは少し前に出て、


「集団は大きく、《クレア学院》生徒、アインベルク騎士団に分かれます。約100名いるアインベルク騎士団は一気に四方八方から火竜を責めに行きます。その後に続いて、ソラ、私、アイリス、ミリィの四人は四方に分かれて援護の攻撃に移ります」

「それじゃ、そういうわけだからよろしくお願いします――。……ああ、それと今火竜は睡眠中と見受けられます。やるなら今のうちです」


「「はっ!」」


 騎士たちは一同揃って返事をした。

 ――その後、アインベルク騎士団は4つに分かれて、東西南北に溶岩島を包囲する作戦をとった。その後で一気に攻め込むという算段だ。




  *




 熱くてたまらない灼熱の地を何時間も歩き、ようやく、攻め込む準備ができたということだ。

 ソラとレント率いるチームは、火竜の様子をうかがっていた。大きな岩石の後ろに彼らは身を隠していた。


「――あれが、火竜なのか……。やっぱり、強そうだな……」

「気を付けてくださいよ。火竜は……強いです」


 全長50M程の巨大な火竜がいびきをかきながら、ぐっすりと眠っているのが見えた。眠っているだけなのに伝わる存在感がソラたちを恐怖へと落としていく。赤き胴体に黒々とした大きな爪が見られた。閉じているだけの広大な翼からも膨大な魔力が流れ込み、ソラの漆黒魔力の比ではないほどだ。


「出撃のタイミングは火竜の尾がぴくりと動いたときです――」

「「はい!」」


 しかし、ソラは少し笑っていた。

 こんなにもわくわくする出来事があっていいのだろうか、と思ってしまう。緊張感とは裏腹にソラの心は期待で満ちていた。火竜とやりあいたい気持ちがレントには響いてきた。


「ソラさん」

「気にしないでください。俺は新技を試したいし……それに、イリスにもいいとこ見せないといけないんで――」

「ふっ、その意気です」


 熱意が伝わる自身のあるその一言にレントは応えた。


 ――と、その時。


 火竜の尾がぴくりと動き出した。


 ――合図だ。


「行くぞオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォ!」


 レントが叫んで先陣を切り、飛び出す。

 それに反応し、後ろに引き連れた騎士たちも一緒になって飛び出す。

 レントたちが飛び出したのを見て、他の方向で隠れていた騎士たちも飛び出して来る。

 レントとソラ率いる南軍、ミリィ率いる東軍、イリス率いる西軍、アイリス率いる北軍は一気に火竜に向かって走る。


「GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」


 その異変に気付いた火竜も目を覚まし、広大な翼を広げながら膨大な咆哮を繰り出す。

今回は短めで、次回から3つに分けてVS火竜戦を更新していきます!

結構省略入れましたが、話が通るように努力致しました。

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