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第20話 騎士団長の試練

 ――アインベルクの城 王室。


「おはよう。ソラ殿、イリス殿」

「おはようございます」


 椅子に座ったアインストが挨拶を交わす。


「さあ、では本題に入ろうか――。溶岩島の『火竜』のことは知っているな?」

「はい――存じております」


 一瞬目を丸くしたソラとイリスだったが、素早くアインストの問いに返答した。


「まあ、簡単に言うとアレだな。火竜の討伐を頼みたい――イーディスの英雄である汝らに。最近、溶岩島の火竜がもっと暴れだしたらしい。そう報告があった。汝らの《クレア学院》に依頼クエストは提出していたとはいうが、誰も受注する者はいない――ましてや、依頼クエストの有効期限は切れたという話だから、王国が依頼クエストを引き取ったというわけだ」

「申し訳ございません」


 イリスが頭を上げて自分たちがその依頼クエストを受けなかったことに関して謝罪した。


「謝らくてもよかろう。別に汝らを責めているわけではないぞ? 仕方のないことだろう――火竜ドラゴンといったらこの世界でもトップクラスの魔物モンスターと言われているからな」

「お言葉は嬉しいですが陛下。火竜の討伐任務は私達二人では戦力が――」


 それを聞いた王女レイフェルが一歩前に出た。


「イリスちゃん? 兄上は二人で行ってこいとは言ってないよ?」

「ってことは、協力してくれる人がいるってことですか?」


 ソラが反応して尋ねた。――しかし、昨夜の風呂場事件を思い出してしまったせいか、お互いに頬を赤くしながら視線を逸らした。


「どうした妹よ……何かあったのか?」

「ああ、いや。なんでもない……けど?」


 額に汗を掻いて誤魔化した。アインストは咳払い一つして、


「そうか……。では、紹介しよう。汝らと火竜討伐に参加するアインベルク騎士団長レント・ドゥバルクライだ。入っていてくれ」


 と、開いたままの王室の扉の奥から人影が一人。

 そこにいたのは黄金の鎧を纏った騎士ナイトだった。若い顔つきをしていて、相当のイケメンといっても過言ではない。白髪のレントはとてもしっかり者という印象が伝わってくる。


「あなたが――」

「はい、僕はレント・ドゥバルクライ。アインベルク騎士団の騎士団長を務めています」


 と、胸に右手を添えながら一礼した。


「突然ですが、ソラさん。一つ試してもらってはくれませんか」

「……勿論……いいですけど……」


 レントが右手を上げた。


「来い……」


 その時、レントの右手に巨大な鋼鉄の黄金に輝くランスが出現した。レントはランスを腰の高さで構えた。


「僕のランスを受け止めてください――どんな手段を使っても構いませんよ」

「こっ、ここでですか!?」

「ソラ! あれを出して!」

「仕方ないな――紅血の剣ブラッディ・クレイモア――!」


 ソラが漆黒の剣を召喚。すると、レントはランスを突き出して勢いよく突進してくる。


 ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!


 剣とランスがぶつかり合う音が王室には鳴り響いた。ソラは剣を横にして幅のある刀身を盾にランスを受け止める。


(なんだこの力……強すぎる)

「来い!」


 レントは左手に別の同じ形状のランスを出現させた。


(おいおい、どこまでやる気だよっ! それにランス2本とか力ありすぎだ!)

「これは――受け止められますか!」


 レントの別のランスがソラを貫こうとしてきた――が、ソラは体の軸を傾けて、それを危機一髪で避ける。


「ランスは突くだけの武器ではないですよっ!」


 と、ソラの体ギリギリを横切ったランスが横に薙ぐ――。

 ソラはそのランスを剣で受け止めたが、力に押されて弾き飛ばされてしまう。


「がはっ」

「ソラっ!」


 勢いで壁にぶつかり、膝をついた。それを見ていたイリスがソラを心配そうに見ていた。

 レントは手に持った2本のランスを己の魔力で消滅させる。


「いってっててて……」

「すまない! つい……」

「いや、いいんだ――そっちも本気でやってくれたんだろ? だったらいいじゃないか」

「は、はあ」


 レントはソラに手を差し伸べて体を起こしてやった。ソラは立ち上がって、服についたホコリを払い落とした。


「成程。剣の腕は優れているようです……ですが、威力が足りないみたいですね。僕が見たところでは、ソラさんの漆黒の剣から無駄な流しているだけの魔力が見えました」

生憎あいにく……、魔力の使い方はまだあまり理解してないもんでね……」

「対人戦は技術が問われますが、火竜討伐などの大型モンスターを相手にするなら威力が問われるでしょう――今のソラさんはそれが足りてないのです」

「なら、一つ提案があるぞ」

「なんでしょう陛下」


 後ろから聞こえた声はアインストだ。アインストは立ち上がった。


「レント殿がソラ殿を鍛えてやってはくれないか」

「陛下! 僕にそれはできません」

「俺はレント殿が適任だと思っているのだかなあ」

「レント君、私からもお願い」

「王女様……。――分かりました。その代わり、しっかりついてきてくださいよ、ソラさん」

「お願いします! 師匠!」


 ソラはレントに深々と頭を下げた。その裏腹にソラは胸の高鳴りしか感じていなかった。


「そういえば答えを聞くのを忘れていた――ソラ殿、イリス殿。火竜の討伐任務、レント殿率いる騎士団と共に参加してはくれぬか」

「勿論その任務、同行します陛下!」

「これが王国のためになるのなら、断る理由がありません!」


 ソラに続いて、イリスまでもが火竜の討伐を決心した。 


「では、今日はゆっくり休むといい。本格的な火竜討伐任務の準備は明日から実行するつもりだ」

「はっ」


 ソラとイリスは国王アインストに向かって深々と一礼してその場を去る。

 王室の扉を出ていくと、そこには専属メイドのエイナが立っていた。


「火竜討伐、頑張ってくださいね」


 と、エイナはソラとイリスを応援する。ソラは大きく目を見開いた。


「――なあ、メイドさん。もし、火竜討伐に成功したら……俺をたっぷりご奉仕してくれよ」

「はい! 承知いたしました!」


 エイナはソラに満面の笑みを見せて答えた。

 が、背中からただならぬ殺気が差し込んだ。


(――ギクリ)




  *




 ソラとイリスはアインベルクの城の廊下を並んで歩いていた。


「ねえソラ? ご奉仕って何させるつもりなの?」

「そっ、それはだな。あんなことやこんなことを――別にやましい意味はないぞ?」

「へぇー、そうかしら。ソラはヘンタイだから分からないな」

「いっ、いいだろ!?」

「ふーん、まっ。――私も、火竜の討伐成功したらト・ク・ベ・ツなことしてあげるから」


 ソラはイリスの言葉に頬を赤くした。


「なっ、なんだよそれ……」

「はは、秘密!」

(やっべー、それすっげー気になる……!)


 二人の談笑は続いた。

 二人で話をして、時にはメイドさん達と話をして、ランチをレイフェルと食べ――と、その一日は呑気に過ごせた。アインベルク王国に来たばかりのころは突然変わる環境に精神を削られていたばかりであったが、賑やかな国王アインスト、女王レイフェル、メイドのレイナ、そして騎士団長のレントは誰も人が良くて心から落ち着いて過ごせた。

 ソラは異世界に来れて本当に良かったと思った。




  *




 ――溶岩島 奥地。


 溶岩島の奥地は60度近くの温度だと言われている。人が軽々とそこに入るのは命がけという程だ。


 火竜ドラゴンはそこにいた。


「GUAAAAAAAAAAAAAAAAA!」


 全長50Mにも及ぶ巨大な竜。鋭い牙と爪を持ち、口からわずかに炎を垂れ流しにしている。広大な翼を広げ、咆哮を上げる。赤色の存在感が高い体色が辺りのモンスターを引きつけない。

 溶岩島は永遠に灼熱の地となっている。溶岩の川が流れ、人は住み着いていない。そんな地にアインベルク騎士団率いるチームが足を忍ばせるなど、無謀な挑戦に等しかった。

記念すべき20話!これからもよろしくお願いします!

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