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第19話 裸の王女

 夜の晩餐会が終わり、国王アインストから城への宿泊許可が下りたソラは入浴場へと向かった。

 先にイリスが入浴し、その後でソラが交代で入浴するところだ。


(今日はいろいろあったな……。国王に会っただけでも凄いのにまさか、城にお泊りできるなんてな……)


 そんなことを思いながらソラはタオルを腰に巻いて入浴場の扉を気軽に開けた。大分、この城の雰囲気にも慣れてきた証拠だ。


(あっれー。待てよ、おっかしいな。何故だ? 先客か……。でも、俺一人で入浴するとあのメイドさんに言われた筈なんだが)


 そう。そこには先客がいた。

 ゆっくりとお湯に浸かっている金髪の美女……。後ろ姿だったが、金髪と言えばあの方しかいないとすぐに気づいた。


(おいおい、嘘だろ。まさか、王女様の裸見てんのかよ俺……)


 と思いながらも、急いで扉を閉め、着替え室を走る。


(やばいやばいやばいやばい……。今度こそ殺される! 殺されちまう!)


 今は姿だけでも見られたくない思いでできるだけ遠くに逃げようとした。

 ――が、遅かった。そんなソラの肩にトンと優しく手が乗った。間違いなく女性の手だ。


「あー、これは……その……」

「ごめんねソラ君。見張りもつけないで勝手に入浴しちゃった私が悪いのよ」


 大人の女性の透き通った声――。レイフェル第一王女の声だった。

 ソラは身が硬直して視線すら動かそうとしない。それに、瞬間移動したかのようなソラを追う速さになによりも驚く。


「せっかくだから、一緒にどう? 兄上には秘密にしておくからさ」

(どーする! 神薙ソラ! これは究極の選択だ! 仮に一緒するとなったらやばいけど、一緒しないとなっても王女様の命令に背くことになってしーまーう!)


 ソラは生と死の選択を目の前に頭が混乱した。

 ――とりあえず、謝るべきだ。


「すっ、すみませんでした王女様! このことは、この私神薙ソラが一生を持って償ってみせます!」


 土下座しながらそう叫んだ。ソラは全てを捧げる覚悟でいたのだが。


「いいのいいの。そこまで私は鬼じゃないから……ね? ほら、お顔を上げて?」

(女神だ…………)


 ソラは何か心が清らかになった気分でいた。そして、ゆっくり顔を上げた。

 ――しかし、そこにはバスタオル何一つ巻いていない全裸のレイフェルがいた。

 ソラは金髪美女の全裸を見て顔を真っ赤に染めた。茹でタコのように全身が赤くなった。


「ちょっ、王女様!? タっ、タオル巻いておられないのですかっ!?」


 ソラは飛び起きて、手を顔に当て、無意識に指の隙間からその絶妙たる姿を凝視しながらそう言った。


「ソラ君は可愛いのね。別に、裸見られたくらいで恥ずかしくなんてないわ……」

「おっ、俺がやばいんですって……! 俺、そういうのあまり慣れてなくて」

「ごめんごめん、タオル巻けばいいんでしょ? ほら、一緒に風呂行こう? ちょっと、話したいことがこっちにだってあるからさ」


 レイフェルは笑いながらタオルを体に巻いた。

 くびれも良く、胸も女性らしい、それにスベスベした肌をしたレイフェルにソラは魅了されていた。


「スタイル……いいですね……。あっ」


 ――しまった。


「うふふ、ありがとっ」

 

 ソラの言葉を素直に受け止めて彼女は笑った。




 *




「王女様、一ついいですか……?」

「どうぞ」


 ソラとレイフェルは背中合わせでお湯に浸かっていた。背中と背中が密着している訳ではなく、少し感覚は開いているが――。これは、ソラの要望でもあった。


「俺やイリスを王国に招待した理由って他にもあるんですよね。俺たちなんかのために晩餐会を開いてくれたり、お城に宿泊させてもらったり、やっぱり何かあるんですか?」

「そう……ね。まあ、あるにはあるかな? 詳しい話は兄上からあるとは思うけど……明日の朝あたりかな? それまでは、私も口止めされてるからね」

「そう……ですか」


 お城の入浴場はとてつなく広かった。こんな空間に二人しか入らないなんてあまりにも贅沢すぎた。真っ白な大理石で囲まれ、輝く魔力のオーブが点々と浮かんでいる。


「私からも、一ついいかな……?」

「なんでしょう?」

「ソラ君。君はこの世界の人間じゃないでしょ?」

「…………え」


 その刹那、ソラは心臓が締め付けられるような感覚を感じた。思いもしなかったその一言に数秒、いや、数十秒黙ってしまった。その空白の時間、お湯の音だけが空間だけが聞こえていた。


「違い……ますよ。俺はこの世界で生まれ育った身です」


 嘘だ。王女に嘘をついてしまった。ソラは後悔する。だが、言ってしまったことは仕方のないことなのだと。

 しかし、自分が違う世界から異世界転移してきたなんて話は言ったところで誰も信じてはくれないのだろう。それに、少し抵抗を感じる。


「そう……。まっ、また機会があったらもっと教えてほしいな」

「……はい」

「じゃあ、そろそろ私は上がるよ」


 と、レイフェルが立ち上がろうとしたとき。


「なら俺も上がりま――。わあっ」


 ソラは足を滑らせ、レイフェルの方向へ倒れようとしてしまう。


(まずい――このままだとあのシーンになってしまう!)


 無理に体の軸をずらしてしまったのが間違いだった。そのまま体は余計に重心が崩れ、レイフェルを押し倒してしまった。


「ソラ……君。んあっ! そこは……だ……め……」


 ソラの右手はあたたかくて柔らかいものを包んでいた。むにゅっと指が沈む――。

 気付くと、レイフェルは顔を赤くして苦しそうにしていて人差し指を口でくわえていた。

 そして、ソラの左手はその美貌な二の腕をがっしりと掴んでいる。


「すみません王女様! 俺の不注意で――」


 ソラはとっさに立ち上がって2歩後ろに下がった。


(次という次は本当に殺される――。もう許してくれる筈が!)

「大丈夫大丈夫、怪我とか特にしてないから……ね?」

「あ、ありが――」


 と、その時だった。突然、風呂の扉が勢いよく開く。


「ダーリン? 何してるのかなー? 遅いなーっと思って様子見に来たら――」

「イっ、イっ、イリスーーーーーー!? 違うんだこれはだな不可抗力で」


 そこには腕を組んで大迫力の存在感を出していたイリスがいた。


「へぇー。私じゃなくて、王女様じゃないとソラの欲求不満は解消できないのね。後でたあーーっぷりとお話し聞かせてちょうだいね」


 イリスの顔は、笑っているがその裏腹に何か不吉なものを感じ取った。


「…………はい」




 *




 あの後、2時間にも渡る説教をくらった。口論は、イリスの圧勝勝ち。

 ソラとイリスは同じ部屋で夜を過ごし、そのまま同じベッドで就寝した。

 王女レイフェルは笑ってソラの愚行を許してくれた。兄アインストへの告げ口も秘密ということにしてくれたという。

 


 ――そして、朝がやってくる。



 ソラとイリスの王国生活は2日目になった。

 

「ソラ様――朝になりました。お起きください」


 ソラがゆっくりと目を覚ます。

 目を覚ますと目の前には黒い服装の壁が一つ。

 これは――。

 メイド服か……? 

 ソラが気付いたのはそこからだ。メイド服……、それに見覚えのある顔。

 エイナ・ウルルエリ。ソラとイリスの専属メイドを担当することになった礼儀正しいメイドに間違いないのだろう。しかし、エイナはソラの体をまたいで四つん這いになっていた。

 いい香りのするお姉さんのサラサラとした黒髪が、ソラの首筋に触っていた。


「メイドさん!? 何してるんすか!?」

「同僚達が男の子を起こすのはこういう形にしろと――」

「そっ、そっかー。って、ちょっとどいてくれませんかね? イリスに見られると俺死ぬかもしれないからさ」


 耳打ちをするかのように隣で寝ていたイリスをチラ見しながら恐る恐る頼んだ。


「ソラー? 何してるの?」


 ソラは背筋を凍らした。隣から聞こえる透き通った声がソラの本能を刺激する。


(やばい! 死ぬ!)


 と、横を見てみると、イリスは眠りについているままだった。


(何だ、寝言か――。助かったぜ)


「あっ、そうでした。陛下がお呼びです――ソラ様」


 エイナはソラに乗っかったままそう告げる。


「りょ、了解……。とりあえず、どいてはもらえないかな?」

最近○○シーンが多いと思いますが許してください。

戦闘シーンはそろそろ復活します。

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