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第120話 醒め刻

「魔王様……」


 ルシファーは地に大量の地を吐き捨てながら、卵から延ばされる影の貫通を受ける。


「のう……ルシファー。ここから出たいんだが、生憎俺は裸だ……。お前の力を奪う。罰として、だ」


「そん――な。我は……」


 次の瞬間ルシファーの身体のすべてが影に吸い取られ、そのすべてを失う。

 ルシファーが言い残そうとした言葉さえも制して。

 その光景を見ていたソラやイリスから出る言葉もなかった。


 ――魔王。


 ソラたちの最期の敵であり、最大の敵。

 魔界の全てがかかったその戦いに――。

 

「あららぁ……先客がいたようだ」

「――ッ!?」


 卵から一つの人間――否、魔王の手が出てくる。

 その体の一部だけでも姿を現した刹那、尋常ではない膨大な魔力を感じる。


(なんだこれ……本当に魔力かよ……)


 ――圧倒されている。

 

 そして、全ての身体を魔王が表した時、身体は安静を保てないかもしれないというその恐怖。


「怖いわ……」

「イリス……」


 イリスが腕を体に回し、寒気を覆うように震えている。


(はぁ……死にたくなりそうだ)



 ――。



(俺、今、死にたいと感じた……!?)


 何故だ。

 何故そう思ってしまったのだ。

 そのすべてが分からない。

 ただ、目の前の現状に呆気にとられ、意識を一瞬失った刹那。

 命を粗末にしようと錯覚した。


 ――この時のソラは気づけなかった。


 ――それが無意味な戦いを意味することに。




 ――その刹那。




 ソラの隣で立っていた筈のイリスが地に伏していた。


「イリス!?」

「ソラ……ごめん、耐えられ……ないかも」


 次の瞬間、イリスの目は閉じられた。


(おいおい、嘘だろ……魔力でイリスが倒された!?)


 ソラが魔王の方向を見返すと、魔王の全貌が明らかになっていた。

 ソラの身長よりは高い方で、人間と見た目は変わらない。

 ルシファーを吸収し、背中に漆黒の羽が生えている。

 左右の双眸の色が黒と赤と違う色になっていた。


 全身を露わにした魔王の魔力は明らかに先程より膨大になっている。


「ほう……、俺を目の前にして立っていられる者が存在するとはな……。お前で二人目だ……」


 そう、魔王の復活はこれで2度目。

 

 最初に復活した魔王は倒され、先の卵に封印されていたのである。

 ――一時的に。


 それは魔王が実際には一度も死んでいないことも意味していた。

 

 そして、卵の殻に閉じこもっていたのは封印という体で自分の力を溜めるということで。

 

「そうか……お前が俺を殺すのか。今度こそ殺せるんだろうなぁ?」

「そんなもん――やってみないと分からない……だろっ!」


 ――吸血鬼(ヴァンパイア)モード。

 剣を地に突き刺し、赤い魔法陣を発動させるとソラの身体に幾千もの赤い筋が刻印される。


「殺してやるよ! 魔王ォォォォォォォォォォ!」


 時空間移動で魔王の間合いに入ると紅血の剣ブラッディ・クレイモアと聖剣シリウス――黒と白の剣撃を交錯しながら相手を襲う秘技。


「――桔梗仙花(ききょうせんか)!」


 漆黒魔力と通常魔力のバランスを混合し、均一に保ちながら攻撃する難関技。

 吸血鬼(ヴァンパイア)モードなら何も難しくないわけで。



 ――だが、



 ――ギィィィン!



 縦横無尽に舞うはずの剣舞は舞うこともなく――。



「嘘……だろ……」



「何だよ――その程度か……期待して損したぞ」


 

 紅血の剣ブラッディ・クレイモアと聖剣シリウス――。

 その二つの剣は魔王の片手によって――素手によって拘束されていた。


 魔王は二本の剣を玩具を扱う子どものように振り回し、ソラごと地面に叩きつけた。


「ぐはっ――!」


 職種にめり込むソラの身体。

 魔王が蹴りの追撃をかけようとした刹那、ソラは魔王の身体を足場にして時空間移動で逃げる。


 ソラの口元から血筋が滴る。


「あぁぁ、久しぶりに外の空気を吸ったから体が動かん……」


 確かに魔王はさっきから一歩も足を動かしていない。

 

(こいつ――ルシファーと格が違う……)

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