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第119話 絶対防御の力

「うおォォォォォォォ!」


 ソラがルシファーの大剣を紅血の剣ブラッディ・クレイモアで弾き返す。


「ふん……」

「見下してんじゃねえぞ!」


 ルシファーがソラを眼下に嘲笑を含ませる。

 同時に弾き返された紅血の剣ブラッディ・クレイモアを返すと、ルシファーに鋭い一突きを喰らわすが――。


「我の防御は……絶対です」


 その刹那、ソラの足元が一瞬浮いた感覚がする。


(重力操作か……!)


 ルシファーの目が一瞬開かれると、ソラは魔王の卵とは反対方向に蹴り飛ばされた。


「ぐっ!」


 黒々とした触手に叩きつけられ、多少の吐血。

 

「ソラ!」

「イリス――。あいつは危険すぎる……!」


 ルシファーが纏う絶対防御。

 これを撃破できなければ天魔の生身に剣一閃すら届くことはない。


何人(なんぴと)たりとも我に触れることはできないのです。故にこの戦いは無意味。そろそろ魔王様にその身を捧げる覚悟でもしてはどうです?」

「魔王に身を捧げる……? そんなこと――俺の身が朽ち果てようともさせねぇよ!」


 それでもソラは抵抗した。

 左手に聖剣シリウスを掲げ、白き閃光の一閃を放つ――が、


「この程度ですか?」


「なっ――!」


 その刹那、ルシファーは白の斬撃を手に持っていた。

 ルシファーの身に届くことなく。

 そして槍投げのように斬撃を投げつけ、ソラの身を貫通する。


「――ッ!?」


(今、攻撃が見えなかった!?)


 イリスが驚愕するも、ソラは自分の身の危険に気づかない。

 自分が攻撃を受けたのを悟るのは数秒後になる。


「い、痛い……だと……」


「くっふっふっふっふ……。驚いているようですね。なぜ、自分が攻撃されているのか、聞きたいような顔をしていますね」

「…………」


 ソラは劣勢に置かれた自分の状況を呪い歯噛みする。


「簡単です。貴方が放った斬撃に時空間移動の魔法をかけたのです」

「何……」


 そんなことできるはずがない。

 現状、この魔界の時空間移動魔法とは単なる移動手段であり、それもたった一握りの魔導士しか使うことが許されない魔法。


「まぁ、やり方を教える気はありませんが……。あら? そこのピンク髪のお姉さんは棒立ちですか」

「ふざけないで! 時空間移動魔法なんてなくても戦えることを証明して見せるから!」


 イリスは既に攻撃を始めていた。

 

「これは……」


「――断罪の爆砕(ギルティ・ノヴァ)


 空間上に見えない微小な魔力粒子が点々とルシファーを覆う。 

 イリスが指を鳴らした刹那、メフィストは爆炎の嵐に巻き込まれた。

 

「追撃をかけるぞ……!」

「待って、ソラ!」

 

 目を紅に染めたソラが爆炎の煙の中に飛び込む。


天斬(てんざん)――!」


 漆黒の雲を発生させ、降り注ぐ魔力を剣の力へと変換する高火力斬撃。

 

 どんなに強い防御でも――絶対防御でも防御力が火力を上回れば通じると思っていた。

 

 ――だが、


「馬鹿ですか?」


 砂煙が去った後、ソラを貫いていたのはルシファーの大剣だった。


「打ち取りましたね――おや?」


抜刀襲神影ばっとうしゅうじんえい――」

 

 ルシファーが貫いていたのは幻影。

 ――ファントムだ。


 代々神薙流に伝わる高速居合でルシファーを圧倒――できなかった。


「言ったはずです……これは絶対防御だと――ユニバース・ゼロ!」


 次の瞬間、メフィストに膨大な重力が発生し、重力が一気に解除されるとその万物(すべて)が黒々とした触手の壁に叩きつけられた。




「――しまっ!」




 ルシファーは気づくのが遅かった。

 とんでもないことをしたことに。





   *





 世界樹(ユグドラシル)の下。


 倒れるセレスティナの身体を学院の瓦礫の傍に預けると、彼女は目を覚ます。


「わらわは……」

 

 目をゆっくりあけ、体を起こす。


「セレスティナ――起きたのか」


 声をかけたルークは若干驚いた仕草を見せる。

 つい先程、ハデスにその身を奪われていながらもすぐ目を覚ますという回復力に魅了されていた。


「ここは、リリパトレア王国ではないのか……」


 セレスティナが周囲を見渡すとその地は荒廃し、リリパトレア王国のようなスラム街の空気は存在していなかったのである。


「ああ、ここはアインベルク王国、王都イーディスエリーだ」

「そんな……」


 暗い顔をするセレスティナにルークは手を肩に乗せた。

 心配するな、必ずイーディスエリー否、魔界は取り戻すと。

 心に不安の炎をともしながらであっても。

 必ず信じなければならないと。

 樹の上の戦いに。


「すまぬ、ルーク……。わらわは何も役に立たなかったようじゃ――」

「案ずるな。俺はやれることをやったまでだ。お前を一人で行動させてしまった俺たちの責任でもあるからな」

「そうか……。わらわも勝手にリリパトレア王国に来てしまったこともある――」

「セレスティナさん!」


 そう添加するように声をかけた主はエステルであって。


「ソラ君やイリスちゃんは今、上で戦っています!」


 エステルの言う上とは世界樹(ユグドラシル)の上――故に魔王の地メフィスト。


「そうか――あの餓鬼、いや少年もそこまで行ったのだな」

「セレスティナさんがそんな顔ではどうやってあの二人を迎えるんです!」

「すまぬな……その通りじゃ。ちと、体が痛む――休ませてくれぬか。腹がとても痛い」


「そ、それは俺が殴った場所だ――悪い」

「なっ……」


 ハデスがセレスティナの身体に憑依しているとき、その中腹にルークが拳を一つ入れたのである。

 無論、本気で。

 セレスティナの痛みはきっとそのことで。


本気(マジ)で殴ったからな……」

「そ、そう……か……」


 次の瞬間、セレスティナは瓦礫に倒れ込む。


「ちょっ!? セレスティナ!?」


 セレスティナが再び目を覚ますのはずっと先のことである。






   *





 ――魔王の地、メフィスト。



 ルシファーのユニバース・ゼロで吹き飛ばされ、触手にめり込むソラとイリス。


 だが、それと同時に反動を喰らわした物体が一つ。

  



 ――魔王の卵。




 漆黒の卵から触手は完全に引きちぎられ、一つのヒビが走っていた。

 その卵はもはや卵と言ってもいいのだろうかという完全なるオーラを放つ。




 ――その刹那。




 ――魔王の卵から発された黒い影のような針がルシファーの心臓を襲った。




 ――その影はルシファーの絶対防御さえも破って。




「魔王……様……」



「おいおい、ざけんじゃねぇぞルシファー。これじゃあ寝たりねぇ――」

いよいよラストスパートです!

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