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第118話 世界樹の上へ

「行ったか……」

 

 荒廃した王都イーディスエリー跡で対峙するルークと。

 そして、セレスティナの身体を――魂を乗っ取ったハデス。

 周囲にはエステル、リンフィア、エステルといった魔導士達がその戦いを見守っている。


 ソラとイリスは――、


「まぁ、いい。あの魔導士二人はルシファーに任せるとしよう。ヤツに勝てる者はいないからな……」

「お前はソラという男を見下しているようだが――そう甘く見るな」

「何だと?」

「あいつは召喚神ロギルス様が選んだ魔界の革命児だ……」

「ロギルスか……あいつはたしかルシファーが殺したと報告が入ったが……」

「…………」


 ルークは押し黙った。

 ロギルスは正確には生きている筈だ。

 そう信じているから。

 ルークは二刀ライフルをハデスに向ける。


「ほう……、いいのか? これは貴様らの戦友とやらではないのか」


 どこからか歯ぎしりをする音が聞こえる。

 その通りだ。

 今ルークが銃弾を打ち抜こうとしている身体はセレスティナ。

 ベル王国『神聖魔導団アルテンリッター』であり、国王の娘。

 彼女を殺すのは同じ『神聖魔導団アルテンリッター』であろうと処罰されかねない。

 そして仲間である彼女を殺すのは許される筈がない。


「セレスティナ……すまない――ちょっと痛い思いをしてもらうぞ」


 そうつぶやいた刹那、ルークが二刀ライフルを投げ捨ててハデスに向かって走り出した。

 ハデスは驚愕する。


「馬鹿な……貴様、まさか体術で……!」

「俺が狙撃馬鹿だと思っていたのか!」


 ハデスは舌打ちをしながらも鎖鎌を投げる。

 ルークは苦なく鎌をかわし、ハデスの域に入り込んだ。


(速い……!)


「アイリスさん……あれって……!」


 エステルが質問する。


「あれは、時空間移動と歩行術の組み合わせですね……。ルークの通った軌跡を残しながら相手を視線誘導し、攻撃を外させる――」

「そんなことができるんですね……さすがです、ルークさん」


 ルークがハデスの間合いに入り、拳を振り上げると中腹に直撃。


「ぐはっ!」


(ほんとにごめん――セレスティナ)

 

「エステル! ライフルを俺に投げつけろ!」

「えっ、はい!」


 エステルが足元に落ちている二刀ライフルをルークに投げつける。

 その瞬間セレスティナの身体から蒼い炎のようなものが飛び出す。

 

「これがてめぇの魂とやらかよ!」


 ――ルークが二刀ライフルを手にした瞬間、一つの銃弾が王都跡に鳴り響く。



 倒れかかるセレスティナの身体。

 ルークは白馬の王子様のようにその華奢な体を受け止める。



「おぉぉぉぉ……」



 なぜか、拍手が響いた。

 意識のある女生徒やアイリス、エステル、リンフィアの全員が称賛の嵐である。


(な、なにこれ……)


「かっこいいですルークさん! あの《六魔(サーヴァント・セイス)》を容易く撃破した上に――王女様と王子様の演劇でも見てる気分です……」

「な、何を言っているのかなエステルは――」


 戸惑うルークだったが、体はもう限界だった。


「おっと」

「ルークさん!」


 ふらつくルークにエステルが駆け寄る


「だ、大丈夫ですか……」

「心配するな。ちょっと疲れただけだ……」

「そうは見えませんけど」

「はぁ、エステルは何でもお見通しなんだな」


 ルークは愛想笑いをする。


「笑わないでください!」

「えぇっ!?」

「体に悪いですよ!」

「別に笑ってもよくない!?」





  *




 

 世界樹(ユグドラシル)は全長10kmの巨大樹である。

 今まさにソラとイリスはその樹を上っているわけで。


「頂上が見えないわね……」

「そうだな……」


 まさか手上りをしているわけではない。

 ボルダリングではあるまいし。

 魔力の足場を作り、それを踏み台としてかなりのスピードで頂上を目指している。

 イリスはそんな技術はなく、異常な魔力量を誇るソラが足場担当をする。


「この先にはルシファーがいるのか」

「もしかしたら、魔王が目覚めてしまっているのかも……」

「そうだな。何が起きるか分からんな――」

「ソラ、わたしから離れないでよ?」

「それはこっちの台詞(セリフ)でもあるけどな……」


 その時。

 魔力の流れが急に変わる。


「これって……」

「ああ、飛ばすぞ――!」

「そうね!」



 ――その刹那、目の前の風景が一瞬にして変わった。



 周囲には人骨のようなものが積まれており、足場は黒い触手なような床で覆われている。

 現実では考えられないような風景が広がるその場所は――。


「ようこそ、()()()()()へ――」

「っ――!」


 突如聞こえる、聞き覚えのある声。


「ルシファーか!」


「御名答。よく辿り着きましたね。えらいえらい……」

「ムカつく――」


 目の前に現れるは残す一体の《六魔(サーヴァント・セイス)》天魔ルシファーだ。

 漆黒の堕天使の翼を広げ、大剣を軽々と片手で下げている。


「せっかくのお客さんです。魔王様を紹介しましょう」

「何……?」

「魔王様は今そこに眠っていらっしゃいます……」


 ルシファーが指さすその先にあるものは巨大な触手に包まれた卵。

 

「貴方たちの目的は魔王様――ですね?」

「当たり前だ。俺はそいつを倒しにきた。どけ!」


 ソラが紅血の剣ブラッディ・クレイモアをルシファーに向けながら飛び掛かる。


「学習能力のない魔導士ですね――我は絶対防御を……ん?」


 ルシファーの目の前からソラは背後に移動していた。

 ソラの狙いはルシファーではない――魔王だ。

 目覚める前に倒すのが最善策だ。


「我を目の前にしてそんなことができるとでも?」


 ソラの足が止まる。


「ちっ!」


 ソラを止めたのはルシファーの重力魔法だ。

 足場にかかる重力を倍増させ、ソラの足を止めている。


「そう、我の重力からは逃れることができない。故に――」



 ルシファーがソラの目の前に現れ、轟轟たる大剣が振り下ろそうとされていた。

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