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第112話 訪問

「何度も死んでる――じゃと」

 

 リリパトレア王国の荒廃した中心街でセレスティナは絶句した。


「この俺の体は我が本体ではないということだ。あらゆる物体に魂を憑依させ、体を借りているだけに過ぎない――よってこの俺を倒すことは不可能……」

「つまり貴様の骸骨(母体)を破壊したところで何の問題もないと」

「まあそういうこととしておこう。仮にお嬢さんに粉々にされたところでまた他の死体に憑依すればいいだけの話――ハデス様は無敵だ」


 セレスティナは万策尽きた。

 こいつを葬る手段は一つとしてない。

 セレスティナの魔法は砂を操り、それを自在に攻撃魔法へと変換する物理魔法だ。

 ハデスの魂に直接の攻撃が届かない限りハデスは死ぬことがない。

 ベル王国王女セレスティナは歯が砕けるほどの力で歯噛みする。


 魔界最強の魔導士『神聖魔導団(アルテンリッター)』。

 リリパトレア王国に優秀な魔導士は存在せず、王国に健在する魔導士はセレスティナただ一人だ。

 誰の力も頼れない。

 ――このままではただの持久戦だ。


「捕らえろ――我が下部(しもべ)共よ」


 セレスティナが目を大きく開いた頃はもう遅かった。

 ネクロマンサーハデスが地面から放った死霊の餌食となったベル王国王女。


「くっ、何をするつもりだ……」


 ハデスはセレスティナに近づき、その神聖なる女体をジロジロと舐めまわすように睨めつける。


「ほう……近くで見ると悪くはない」


 微かに耳元に聞こえる吐息にセレスティナは背を凍らせた。


「変態め……」

「ほう――美女に罵倒されるのもなかなか悪くはないが……貴様もここまでだ」

「なんじゃと」

「俺は死体に憑依するとは言ったが、対象物の魔力より自分の魔力方が優位に立っていれば乗り移ることだって難なことではない」


 ハデスの重みのある言葉にセレスティナは驚愕した。

 野生の肉食動物から逃げるシマウマのように――。

 

(いかぬ――手も足も動かせ……ない……)


 セレスティナは恐怖を見せられていた。

 

「怖いか小娘……無理もない。俺は貴様に死の苦しみを味わってもらっているのだからな……」

「魔法か……」

「そうともいえる。幻覚と言った方が近い正解か……」

「うっ――!」


 突然、セレスティナの視界が再び黒い血で染められる。


(まずい、意識が……)


 次の瞬間、セレスティナの精神は完全に遮断された。

 骸骨はただの抜け殻となり地に伏せる。

 死霊から解放されたセレスティナの体は、口元を緩ませる。


「フフ……フハハハハハハハハハ――待っていてくださいサタン様……我こそが頂点であり原点であることを魔界の愚民共に知らしめてやります……」


 リリパトレア王国には怪奇なセレスティナの声が響いていた。




     *




 ――王都イーディスエリー《クレア学院》。


 男子一名、女子大量。

 この生徒構成を持つ(多分)女子校である魔導高校。


 その学院の学院長室には白髪のアイリス・エーヴェルクレアが椅子に座っていた。

 ただ落ち着いていなかった。

 イーディスエリーからでもわかる。

 

 ――《六魔(サーヴァント・セイス)》との戦いが開戦していたことが。


 空は異様な魔力に包まれているのはアイリスでもわかる。

 学院長アイリスは基本的に学院を離れない為、生徒の無事を祈ることしかできなかった。


 ――特に妹イリスだけは失いたくないと。


 生徒の一人であるミリィ・リンフレッドは普段は調査団を連れるのだが、今回は一人で王都の見回りを担当し、学院を離れている。

 《六魔(サーヴァント・セイス)》との戦いに出ている生徒を思い、一つ溜め息をついた。


 とその時。

 

 ――コンコン。


「学院長、失礼します」

「どうぞ」

 

 と、一人の女生徒が学院長に入室してくる。

 彼女の名はセリーヌ・アレストレイ。

 青髪ショートの少女でミリィの調査団に属している。


「セリーヌ。久しぶりですね、どうかなさったんですか?」

「あの――学院の外の様子が」

「外の様子? それがどうか?」

「ラティス・レシストと名乗る女性が学院に来ているのですが――」

「ラティス――ってレクセア王国の『神聖魔導団(アルテンリッター)』!?」

「えっ、そうなんですか?」

「ええ、でもなんでこんな学院に……? まあ、いいです。案内お願いします。セリーヌ」

「はい!」


 セリーヌは笑顔で頷く。

 学院長アイリスに頼りにされているのが嬉しかったから――。

 これは恋心ではない――尊敬だった。





   *




 セリーヌに案内されてアイリスは《クレア学院》の玄関前にやってきた。

 そこには学院の生徒が群がっていて、動揺する生徒もいれば騒ぐ生徒もいる。

 レクセア王国新『神聖魔導団(アルテンリッター)』といえば、既に魔界に名が広まっている。

 「美しい」「きれい……」などと耳打ちする生徒だって見られる。


 生徒に道を作られ、一人の女性はアイリスに近づく。

 肩まで伸びている艶やかなウォーターブルーな髪と、純白の肌。

 そして、青いドレスを身に纏い、神聖な碧眼でアイリスを微笑みながら見つめる。

 触れただけで溶けてしまいそうな雰囲気でさえ感じる。


「ごきげんよう。わたくしがゼクス前『神聖魔導団(アルテンリッター)』に代わって、レクセア王国新『神聖魔導団(アルテンリッター)』に就任しましたラティス・レシストと申しますわ」


こんばんわ。そして、お久しぶりです。または初めまして。

前回の話からかなりの間が空いてしまったことをお詫び申し上げます。

この話は文章力が落ちていないことを祈りながらもゆっくり執筆させていただきました。

『ハーレム剣士の英雄録』はしっかりと最後まで完結させるつもりなので今後もよろしくお願いします。

プロットを少し変更し、8月中に完結する予定でいましたが、まだまだ続きそうです……。

また明日お会いしましょう。

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