表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/125

第105話 炎魔イフリート

 ――アインベルク王国、大通り。


 ソラとイリスの前には《六魔(サーヴァント・セイス)》炎魔、イフリートが立ちはだかっていた。

 地中から噴出した溶岩が螺旋状に渦を巻きながら、空中に浮きあがり、踊っている。


「さあ、踊るんだぜ……」


「あれが炎魔の能力か……」

「溶岩を操るって(たぐい)かしら……」

「そのようだな――」


 渦を巻く溶岩がソラとイリスに向かって来る。

 ドリルのような溶岩の突きがソラの体を貫こうとしたとき、ソラは難なくかわしてみせる。

 

紅窮の神槍(オブリアス・モア)――!」


 刹那、イリスの魔法陣が放った炎の巨大柱が溶岩を打ち消した。


「ほう……。俺様と同じ属性ってか……」

「溶岩で来ようが、炎をなめてもらっては困るわね……」

「そうか? この世に溶岩より強いものはねえんだぜ!」


 イフリートが姿を消すとイリスの目の前に現れていた。


「イリス!」


(やっぱり、こいつも時空間移動使えるのかよ――)


「おらよ!」


 イフリートの溶岩を纏った右拳がイリスを襲う。


「うっ!」


 間一髪でイリスは炎で盾を作り、急所を避ける。

 イリスは後方へ弾き飛ばされたが、ソラがイリスをキャッチ。


「大丈夫か……」

「ありがとう……ってソラ――それは……」


 ソラの体に現れた紅の血筋。

 既に吸血鬼(ヴァンパイア)モードへの転換は完了していた。

 紅血の剣ブラッディ・クレイモアを右手に掲げたソラが剣を振るうと数M先の地面が斬り裂かれる。

 

「何だよ何だよ。威嚇かって――」

「どうせ避けられるのは分かってんだよ……」


 ソラが斬り裂いた地面はイフリートのすぐ傍で、かすり傷程度の位置だった。

 

「――刻参(ときまい)り」

 

 その時、斬り裂かれた地面から漆黒の魔力が迅速にあふれ出した。


「何……!」


 イフリートが漆黒の魔力に撃たれると、腕に刻印が現れる。


「何だこれは……」

「油断しやがったな炎魔――」


 その刹那、凄まじいスピードで刻印を中心にイフリートの腕が溶け始める。


「アアアアアアアアァァァァァァァァァ!」


 イフリートは悲鳴を上げるが、自らの溶岩で刻印を溶かした。

 イフリートの腕は溶け落ち、地面に転がる。


「てめぇ……」

「どうだよ。戦闘中に自分の左腕がなくなった気分は……」

「ちっ、うぜぇなお前――。サキュバスの野郎のデータにはこんな魔法なかったぞ。実はてめぇらがサキュバス殺したこと知ってんだぜ。だが、この魔法……」

「これが俺本来の魔法だ。漆黒の魔力は特性として『悪喰』っていう浸食作用がある。ま、言っても微量だけどな」


 イリスはソラの攻防に驚いていた。


「でも、どうやって微量な力なのに――あんなに浸食できたの?」

「簡単だ。刻印を打つことで漆黒魔力を凝縮させた……」

「そんなこと……できたのね……」


 


「勝った気でいてもらっちゃ困るぜ……」




 その時、前方からイフリートの一蹴が飛んでくる。

 ソラは腰にさしてあった聖剣シリウスを左手で抜き、イフリートの蹴りを弾き返す。

 と、聖剣シリウスにいつの間に付着していた魔法陣が暴発し、大爆発を起こす。


「しまっ……!」


 ――ドォン!

 

 大爆発に混ざった溶岩から灰色の煙が吹き出す。

 聖剣シリウスは無事だ。


(あの蹴りの時に魔力を忍ばせたのか……!)


「ソラ!」

「おっと、それだけで満足すんなって! ――舞え!」


 刹那、灰色の煙が螺旋状にソラを囲い、何かに斬り裂かれる。

 体の数か所に切り傷が入るも、ソラは魔力の威圧で煙を飛ばした。


「どうだ? 小細工ならこっちも負けねえってんだよ」

「火山灰だな……。お前の魔法ってのは溶岩だけじゃない――火山そのものか」

「ほう。てめぇは見た目のわりにはインテリジェンスなんだな」

「おい、見た目のわりにはって言ったな今」


 その時、イリスが足を踏み出す。


「私を忘れてもらっては困るわ――断罪の爆砕(ギルティ・ノヴァ)!」


「――ッ!?」


 イフリートの周りを纏っていた目に見えないほどの微細な魔力が、イリスが指を鳴らしたあとに爆発した。


 ――ドドドドドドドドドドン!


 爆発により煙が起こるが、煙の中からイフリートは現れる。


「ちょろちょろちょろちょろしやがって!」


 後退しながら宙を跳ぶイフリートの姿を捉えるソラ。

 背後から聖剣シリウスを振り上げると巨大な閃光の斬撃が轟く。


「剣技、ホーリースペクトル――!」


 イフリートはソラの斬撃を、聖剣シリウスを踏み台にしてかわした。

 閃光の斬撃が飛ぶ前に跳んだというのか。


「喰らうかよ!」


 ソラが時空間移動を駆使してイフリートに追撃の一閃を薙ぐ。

 一閃はイフリートの腹を掠る。

 直撃は避けられたようだ。


「――終骸の魔炎(デス・ピラス)!」

 

 イフリートが後退した先には、イリスの巨大な炎の壁が待ち構えていた。

 

「ちっ、ふざけやがって――ヴァイティーバス・イービル・アース!」




 ――その刹那だった。


 突如、地面がイフリートが放った魔力によって溶岩と化した。

 大通りの舗装されたコンクリートは溶岩に変り、家屋が溶岩によって溶かされていく。


 ソラとイリスはまだ溶け切っていない家屋に飛び移る。


 地面からは無数の溶岩の柱が上り、イフリート自身は溶岩の中に立っていた。


「おいおい、この俺様がお前らに押されているとでも錯覚していたのか? 冗談はよせよ。魔王の守護魔たるこのイフリート様の力はここからなんだぜ……」


「今まで力を隠してたのか――」

「ソラ……」


 と、ソラとイリスは自分が足場にしていた家屋が溶けきる直前なことに気づく。


「早く逃げた方がいいぜ――溶けるぞ……?」


 ソラとイリスはできるだけ遠くに、遠くに逃げ始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ