表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/125

第11話 憤怒の炎

 激闘が続いてきたこの地下で、ガンダスはイリスと対峙している。

 地下を構成している岩石はボロボロで、今にも崩れ落ちそうなくらいに耐久が落ちている。ところどころ真昼の太陽が光が射して地下を点々と照らしている。


かたきをとるのは友達の仇だけか?」

「勿論、ガンダス・メラの名は10年前から忘れたことがないわ……」


 ガンダス・メラ。イリスは一日もその名を忘れたことはなかった。

 10年前の王都の大火災。虚無の棺桶(ボイド・コフィン)幹部、ガンダス。

 ――あの日、イリスの母親を目の前で殺害した男の名。

 一度も忘れたことはない。忘れられなかったのだ。


「母親の……仇……」


 黒髪で長い男の容姿は特徴的で、10年前とほとんど変わっていない。イリスは王都の森の全焼事件でガンダスを見た頃からこうなることは予想していた。できれば、あの頃に殺しておきたかったと、深く後悔するも……。


「奇遇だ。俺もあの貴様の母親は忘れていない……。泣いてる子供の前で親を殺すのは快感の極致だったからな……」

「人の痛みを知らないあなたたちに誰の気持ちも理解できない……。あなたは殺しても許さないから……」

「幼い顔して……よくも恐ろしいことを言う小娘だ」

「ん? 今何か言いました?」


 突然、イリスは満面の笑みで敬語を使った。

 『幼い』……。その言葉はイリスの何かを強く刺激する。


「私は18歳だし、顔だって幼くない! 胸だってぺったんじゃないしどこが『幼い』の!?」

「背丈は18歳と認められるが、顔が幼い」

「『幼い』『幼い』『幼い』って……! 私が美少女のことに嫉妬でもしてるんじゃないの!? あなた!!!」


 イリスの精神がおかしくなっているのを見た女生徒たちはイリスの自画自賛に呆れてしまう。当然だ。


「イリス先輩……。自分で言います? それ」

「ホントそれですわ……」


「茶番は終わりだロリ顔娘……」


 イリスが気付いたときには周りに赤いオーブが無数に浮いていた。


 ――ドドドドドドドドドンンンンッ!!!


 赤いオーブは引火してイリスを襲った。


「――紅窮の神槍(オブリアス・モア)――!」


 そのとき、砂煙から巨大な炎の柱がガンダスに向かって放たれる。


「はぁっ!?」


 ガンダスが信じられない事実を目の前にして驚愕している。

 とっさに口から紅蓮の炎を吹く――。


 ――だが……。

 炎はイリスの方が優勢だ。威力でいうと元《クレア学院》の首席だったイリスは誰にも負けない。

 ガンダスはイリスが放った炎の柱に飲まれて壁に向かって流され、衝突した。

 岩石が一気に崩れ落ち、ガンダスを下敷きにする。


「私を幼いとか言うからバチがあたったのよ! もう本当に――ぶっ殺すから!!!」

「こっ、怖いですよ……イリス先輩」


 イリスの凶器のような発言にセリーヌは呟く。


 ――ドーン!


 積み上げられた岩石が爆発し、ガンダスは体を起こした。


「クソ!――マグマオーシャン――!」


 ガンダスがそう叫ぶと周囲に半径50M大の炎が海の如く広がった。

 が、炎はイリスが召喚した超巨大な魔法陣に吸い取られた。


「私に炎なんてきくとでも……?」

「馬鹿な!」


 魔法陣はガンダスの方向に向いた。


「や、やめろ……。まじで、おい! タイムだタイム! やめろ、馬鹿野郎。頼むからやめてくれええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


 イリスの魔法陣は赤白く光る。


「喰らえ――爆炎の砲台(セイル・アディス)――!」


 マグマのように熱い炎が発射――。


「嘘……だろ……」


 ――ドガーン!


 炎はガンダスにクリティカルヒットしたようだ。


「あ、あっつい! 熱い! 熱い! 熱いいいいいい!」

「もう一発だ」

「やっ、やめろ!」


 巨大な魔法陣から2発目が放たれる。


 ――ドガーン!


「アアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」


 ガンダスは抵抗できない。自分の魔法がイリスより劣るとわかってから戦意は喪失した。

 ガンダスはその場から逃げようと地上への抜け道へと急ぐ。


「逃がすか!――連射型(マシンガン)爆炎の砲台(セイル・アディス)!!!――」


 ――ドドドドドドドドドドドドドドドンンンン!!!!!


 膨大な威力の炎が大量かつ高速でガンダスに直撃。


「アアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」


 ほぼ黒焦げのガンダスは硬直して立っている。


「……降参だ。もう……やめてく……れ」

「イリス先輩……Sだ」


 その異様な光景を見ていた女生徒は一斉に呟いた。変なところで気が合う。


「まさか、これで終わりだとは思ってないな?」

「何だと!?」

「母親の命、たくさんの人の命を奪ったあなたにはそんなもので償えるとでも!? あなたは、何をしたって許されない! 終わりよ――紅焔繚銃火エターナルガンファイアァァァ――!!!」


 イリスの周囲の空間に現れた数十の魔法陣。同時に炎は放たれ、一気にガンダスを襲った。

 ガンダスは半泣きの状態で攻撃を受けた。


「グアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァッッッ!」

(もう知らねえよ。運命なんて……。俺がやってきたことが真実として帰ってくる……のか)


 立ち上る砂煙に紛れて、ガンダス・メラは地面に倒れる。


「イリス先輩。ドSだった……」

 

 口を開いて信じられない光景を見ていた女生徒はまたも一斉に呟いた。



 ガンダスの気絶により、魔導爆弾の回路は活動をやめた。王都イーディスエリーはこれでひとまず助かったのだ。10年前の事実。それをまた繰り返すわけにはいかない。人々の魂の叫び、呻き……。もうなにも苦しさを聞きたくない。聞かせたくない。そんな思いがただ普通の学生たちが命がけでとめた。

 地下の空間はとても綺麗な状態だったが、岩石が崩れて半壊してしまうほどの戦いはここでは起こった。

 少女イリスは前を向く。復讐の目は勇敢な天使のような美しい目に変わる。やっとここで自分の恨みを晴らせた気がしたのだ。10年前無力だった自分を変えてここまでやってきた。ここまでやってきてよかった。そう思えた。



(やっと、仇を討てたよ――ママ……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ