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第103話 王族との再会

 ――アインベルク王国王城。

 

 ある一つの王室で、ソラとイリスは膝をついていた。


 金髪で整った顔をしたアインスト・アインベルク国王陛下。

 その隣に立っているの金髪美女は国王の実妹のレイフェル・アインベルク王女だ。


「本当に久しぶり、ソラ君、イリスちゃん。ロイドとの戦い以来ね」

「こちらこそお久しぶりですレイフェル王女」


「――汝ら実に堅苦しいな……。ソラ殿、汝はもうアインベルク国の立派な代表魔導師だ。汝が俺に頭を下げる必要はなかろう」

 

 と、今まで礼儀正しい態度で話していたソラだったが、突如アインストに否定されてしまった。


「でも……それは……」

「汝が俺に向かって膝をつく必要はないぞ? それに、お隣のイリス殿も同じだろう……」

「私も……ですか?」

「そうだ。汝らはアインベルク王国を《六魔(サーヴァント・セイス)》から護ってくれる勇士ではないか」

「そうでもあります、けど」

「ソラ君。ここは、兄上の言葉に従ったらどうかな? 兄上、こう見えて簡単に引き下がらないよ?」

「余計なことを言わないでくれないか? レイフェルよ」


 ソラは一度イリスの顔色を伺った後、アインストの言う通りに立ち上がった。


「分かりました――」

「それはそうとソラ殿。汝に授けた聖剣シリウスの調子はどうだ?」


 アインストはソラの腰にささっていた純白な美を放つ聖剣シリウスを直視した。

 聖剣シリウスは元々アインベルク王国に代々伝わる国宝のようなものだったが、ロイド戦以降聖剣シリウスは正式にソラの手に渡った。

 ソラが『神聖魔導団(アルテンリッター)』に任命されたのも、聖剣シリウスの授受が立派な伏線だったのかもしれない。


「はい。おかげさまで先日のサキュバス戦でもかなり使わせていただきました。この剣がなければサキュバスに勝てなかったと言っても過言ではないかと――」

「いや、それはソラ殿自身の実力だ」

「え……?」

「聖剣シリウスは元々アインベルクの血を継ぐ者にしか、(つか)を掴むことを許されていない。そんな聖剣シリウスを難なく使いこなせたのは汝自身の実力だろう」

「ありがとう――ございます……」

「今後も、漆黒と純白の剣士としてアインベルク王国を護ってくれ」

「勿論です……」

 

 ソラがアインストに確かな笑みを向けると、アインストも笑みを返した。

 これこそが、国と魔導師との繋がりというものだ。

 国を護るのは魔導師であり、魔導師を護るのは国の役目だ。

 アインベルク王国ではこの支え合いが、お互いの境地を築き上げてきた。


「イリスちゃん」

「何でしょう……?」

「ソラ君も随分立派になったとは思わない……?」

「まあ、あの時と比べればかなり変態度は失せてきましたよ」

「ちょっと!? 何言ってるのイリス!?」


 イリスの爆弾発言にソラが否定しようとしたとき、まさかのレイフェルからの言葉が殺到した。


「そうだね。ソラ君は、私を見た瞬間飛びつこうとしてきたのに今では落ち着いているからね……」

「王女様まで!? まあ――今となっては黒歴史です……」


 ソラでも王女レイフェルには逆らえなかった。

 あの後、ソラがレイフェルと一緒に混浴するとは思いもしなかった事実ではあるが。

 

(ん? 待てよ……そうなったらレイフェル王女も変態――いや、やめておこう。口に出したりなんかしたら打ち首だわ)


 イリスは無意識に言葉に出していなかったことに安堵の息を吐いた。

 

「じゃあ、どうするの? 兄上……」

「《六魔(サーヴァント・セイス)》は必ずこの地に現れるだろう。それまで、城で待機ということにしておこうか――っと、ソラ殿、イリス殿、懐かしの訪問者だ」


 その時、王室に扉のノック音が三度響き、ゆっくり扉が開かれる。

 そこに見えたのは黄金の鎧を身に纏った白髪の男性が現れる。

 そう、アインベルク王国騎士団の騎士団長を務める彼だった。


「――レントさん!」


 ――レント・ドゥバルクライ。

 ロイド戦の一件で右手に義手を付けていたが、その若い美男な顔立ちは変わらずにいた。

 

「お久しぶりです。ソラさん、イリスさん。夢魔との戦闘お疲れさまでした」

「まあ、また《六魔(サーヴァント・セイス)》の誰かを相手しなければなりませんけど……」


 ソラは愛想笑いをした。

 レントも愛想笑いをした後、アインストの方向を向く。


「お言葉ですがアインスト陛下。ソラさんとイリスさんを城で待機させるのは違うかと思われます」

「というと……?」

「話を聞く限り、《六魔(サーヴァント・セイス)》は強い魔導師の前に現れます。それが、彼らの目的と聞きました」

「なるほど……。餌という名の待ち伏せ――ということか?」

「はい。それにソラさんやイリスさんを城に待機させては、この城も危ないかと。決して、お二人を差別したいというわけではありませんが……」

「だが、それは本人がどういうか――アインベルク王国は魔導師を護る存在。魔導師は王国を護る存在……だからな」


 意見の対立に決着をつけたのはソラだった。


「俺もレントさんの意見に賛成です。ぜひ、そうさせてください」

「私もそう思います。それで国の被害を最小限に抑えられるのなら喜んで引き受けます」


 ソラとイリスは実に前向きだった。

 二人はアインベルク王国のために戦いたい――そして、愛する恋人のために戦いたいと思っていた。





   *




 ――ディオ王国。

 

 魔界の南国故に海の国と称された王国の深海には王城があった。


 ルークとエステル、リンフィアの三人はつい先程、王国の国王陛下に《六魔(サーヴァント・セイス)》に関する情報と目的を報告した事後だった。

 王城に長居することはなく、三人はすぐに陸上に上がり、《六魔(サーヴァント・セイス)》出現に備えなければならない。

 

 眼前にあった潜水艦に三人は乗り、即座に出発する。

 魔力を動力源とする潜水艦は、エンジンをかけ、王城を纏う泡の壁へと衝突した。


「しっかり掴まっていてください!」


 操縦士が、声を上げると、潜水艦には凄まじい衝撃が(ほとばし)る。 

 泡とぶつかっただけで火花が散ってしまう程の衝撃。

 故に、特殊な泡の頑丈さが身に染みて分かる。


「これは、またしても凄いな……」

「内からの護りもさすがというべきですね――」

「いったたたた――頭打った」


 三人の悲鳴が聞こえると、潜水艦は泡の壁を抜け、海中に放り出された。

 潜水艦は高速で海水面に向かって浮上する。

 

「大丈夫か? リンフィア……」

「ルークお兄ちゃん心配してくれるんだ――」

「え!? 俺でも心配だってするけどな!?」

「ルークさんは下心丸出しですから、痛がる妹13歳をそういう目で見ているのかもと思いました……」

「なんで13歳強調したんだ!? 俺は別にロリコンじゃ……」

「お姉ちゃん、そういう目って何?」

「リンフィアはまだ知らなくていいんだよ?」


 


 ――その刹那だった。


 ――ドン!

  

 突如、潜水艦に激しい音と共に、巨大な衝撃が走った。

 何か、大きな障害物にもぶつかったかのように。


「だっ、大丈夫ですか!? お、おかしいな……センサーの反応がない……?」

「大丈夫です。それより、潜水艦は……」

「まずいです。さっきの衝撃でエンジンが故障しました」

「えっ――!?」


 操縦士が焦燥する中、衝撃の正体はすぐ目の前にあった。


 ――巨大な岩石だった。


 無数の岩石が海水面から潜水艦に向かって沈み込んできていた。


「おいおい、嘘だろ……」


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