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第100話 神国の危機

ついに100話突破しました。

実際には外伝含め105部なのですが、ここまでありがとうございました。


この調子で最終話まで気合を入れて書こうと思うので、よろしくお願いします。

 ――レクセア王国、入国ゲート前。


「全員揃いましたわね」


 ラティスが全員に問いかけると、一斉に頷いた。

 それぞれの『神聖魔導団(アルテンリッター)』たちとその付き添いの魔導師たち。

 その魔導師たちの前にはレクセア王国の豪華な馬車が聳えていた。

 馬は純白の馬で、容姿はペガサスのそれと変わらない。

 普段は移動用ではなく、戦闘用に使われる軍事国家(レクセア王国)の馬だという。


「かっこいい馬……ですね……」


 ソラは知らない馬――いや、人間界上では伝説上の白馬(ペガサス)を見て興奮していた。


「なんじゃ? 見たことないのか?」


 セレスティナがソラを煽るようにして話しかける。

 まるで、高貴さをアピールしているかしていないかのような微妙なところだ。


「嫌味ですよね――」

「わらわは好奇心(こうきしん)で尋ねておるのじゃぞ? 決して高貴心(こうきしん)では尋ねておらぬ……」

「いや、どっちの〝コウキシン″か分からないんですけど……」


 セレスティナは貧相なその胸を張って強調させている。

 ソラが微妙に目をそらすと、ラティスの大きさ、形、張り具合のパーフェクトな豊満な胸を見て、目を大きくした。

 いや、厳密にはラティスの胸はソラのすぐ近くにあった――何故か。


 ――むにゅっ。

 

 と、柔らかな効果音がソラの頭の中で響く。

 ラティスはソラの頭を両手で抱え、自分の豊満な胸に押し付けていた。


「ん……んん……!」

「やっぱり、ソラ様は大胆ですのね……」


(いや、大胆なのそっちでしょ!?)


 言葉に出して反論できない程、ソラは窒息しかけていた。 

 ソラの顔がだんだん赤くなってくると、ラティスは喜んだ顔を見せる。


「あら、こんなに顔赤くしちゃって――可愛いですわね」


(違うんですけど!? 現にあなたの胸で窒息して――って、もう息が……!)


 と、その時、イリスがラティスの拘束を解き、ソラを引きはがした。

 イリスはジト目でラティスを睨む。


「今朝の説教を忘れたなんて言わせないわよ……?」

「え? 何のことですか……? 忘れてしまいましたわ……」

「…………」

「…………」


 数秒の沈黙。

 しかしその裏腹には、ラティスとイリスの激しい感情の衝突でソラには幻覚なのだろうが火花が散っているのが見えていた。

 

「でもイリス様? ソラ様は欲求不満なのですわ……」

「は? 何よそれ――私だって今朝、ソラと……って言わせるんじゃないわよ!」

「勝手に言いましたわよね……」

「ラティス・レシスト――今すぐ『神聖魔導団(アルテンリッター)』を降りてもいいわよ?」

「嫌ですわ。わたくしの最終目的はソラ様と世継ぎを作ることですから……」


 反応の使用のない稚拙な口論にルークやソラ達は絶句していた。

 『世継ぎ』という言葉にソラが若干動揺している気もするが、エステルは見て見ぬフリをしている。

 

「ねえねえ、ソラお兄ちゃん……世継ぎって何?」

「――ッ!」

 

 ソラは聞きたくもなかった言葉をリンフィアから聞いてしまい、背筋を凍らせた。


「なんだ、リンフィア、知らないのか。世継ぎってのはなこど――んんんっ!?」

「お願いですからルークさん、まだリンフィアちゃんにはそういうの教えないでください」

「…………?」


 ルークが言いかけた途中でソラが手で制して止めにかかると、リンフィアは頭の中に疑問符を浮かべるだけだった。


「ちょっと、お二人共! 今はそういう話をしている場合ではありません!」


 エステルがラティスとイリスの口喧嘩に割り込むと、二人は黙る。

 これも『神聖魔導団(アルテンリッター)』ならではの権限なのだろうか。

 イリスとラティスはまだ不満を顔に露わにしたまま、睨み合い続けていた。

 

「はぁ――」

 

 ソラが安堵と呆気が入り混じった溜め息をつく。 

 そして、裏腹にはまた理性の敵が増えたと少し焦燥も若干。


「そろそろ出発のお時間です――」


 と、ベレニスが全員に伝えると、一斉に気持ちを入れ替える。

 ラティスはレクセア王国で護衛をすることになっている。

 ラティス以外の全員は白馬とレクセア軍兵士率いる馬車に乗り、アインベルク王国中心街に向けて出発した。





   *





 ――魔界の遥か上空。

 ある一定の高度で特定の魔法詠唱を発動することにより、神の集う地(ドリュアセルタ)への道は拓ける。

 故に、許された者以外がその地に踏み込むことはほぼ不可能に近い架空の地はそこにあった。

 そして、そこに入ることを許されるのは神そのものである。



 

 ――が、その地はまさに崩壊していた。

 蒼白の雲は闇の炎に包まれ、純白で聖地とも言われる神聖な場所は漆黒の夜に苛まれていた。


 周囲には、血まみれになって雲の地に伏している神官や神と思われる人物。

 その中で、短い白髪をした若き容姿の神が洗い息を吐いている。

 ――召喚神ロギルス。

 それが彼の名。

 神薙ソラを人間界から召喚し、一定回数の不死の力を与えた神。

 

 ロギルスの眼前には一体の悪魔――いや、一体の堕天使が立っていた。



「くっふっふっふ……。貴方は実にしぶといですねぇ……。だが召喚神ロギルスよ。貴方の矛先が我に届くことは――ない」



「――ッ!?」



 

 漆黒の翼を生やした一体の堕天使――《六魔(サーヴァント・セイス)》天魔ルシファー。

 一本の刃付きの杖を雲の地に突き刺し、ロギルスが息を上げていた。


 ――ルシファーは突然現れた。

 神の集う地(ドリュアセルタ)で《六魔(サーヴァント・セイス)》討伐に関する神達による会議の途中――災悪は訪れる。

 次々に神を闇の炎で包み、数々の神官たちの命を刈り取った。

 大剣を片手で軽々と持つ怪力のルシファーには神でさえも誰一人として敵わない。




「――ユニバース・ジェノサイド」


 


 ルシファーが呟いた刹那、ロギルスの足場に重力場が発生し、自由を奪い取る。

 最大限の重力で相手を拘束し、立つことを許さないルシファーの魔法は万物に通用していた。


「ぬしは何故、神々を殺しに来た……」

「我々の目的のためです――我々は魔王を復活させるのです。守護魔とはそのための存在。故に、魔王の計画の阻止をする者は誰であろうと全員殺す。今、魔界の各地に五体の魔が降臨しているのです」

「そのためだけに儂らの命を……」

「当然です。恐らく、貴方たちが一番の難敵になるでしょう。と思っていましたが――あまりにも弱すぎて驚きましたよ」

「なんだと……。今世の魔導師や神共は弱すぎます。古代の魔導師はかなり強かったのに……残念ですよ雑魚すぎて――」

「ちっ」

「なにか言いたそうな顔ですね。貴方が死ぬ前に一つ遺言を許可しましょう……」

「貴様が魔界の雪国で神薙ソラを殺さなかったのが運の尽きだったな――。彼は恐らく、魔界最強だ。いや、魔界最強になる――」

「わざわざ忠告お疲れ様でした――では、貴方も堕ちてください」


 


 次の瞬間、一人の神の心臓に、大剣が刺さる。

 ――大量の血飛沫と共に、彼の眼前の視界はぼやけ、漆黒に染まっていった。


 

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