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第1話 異世界と桜の彼女

 ――そこには全裸の超絶可愛い美少女がいた。


 薄桜色の透き通った髪と雪のような今にも溶けてしまいそうな真っ白な肌。

 俺はさっきまで一人で風呂に入浴していた。なのに、何故俺は女の子の上に覆いかぶさっているの!?

 なんだこの場所は。森……?


 気づいたら俺は、浅い湖に着水していた。

 周りは神秘的な木で囲まれている。清々しい森の生命のエネルギーを感じる。

 女の子の肌についた水がまぶしい太陽の光で反射していた。


「いつまで、私の上に乗っている気!? このヘンタイッ!!」


 急に女の子は叫んで、俺の頬を張った。

 ベチンという甲高い音が湖に響いた。

 これは一体。……痛い。


「あっ。また、やっちゃった……」



 *



 どうやら俺は気絶していたらしい。

 何かが俺に囁いてくる。

 俺を心配してくれている天使の声なのだろうか。

 って、そんなわけがないか――と、とりあえず俺は目を開けた。

 

 ――ッ!


 俺は興奮した。これで二度見る顔だが、あまりにも超絶美少女を見た俺は理性を制御できない。


「こっこれは! そのサラサラのピンクヘア! 整ったビューティーフェイス! 出すぎてない胸のキューティースタイル! まるで、俺の夢にも出てきそうなパーフェクト幼女じゃないか!」

「なッ――!?」


 俺は酷く自分の悪い癖を後悔した。……しかし、これは不可抗力だ。不可抗力であってほしい。

 美少女が頬を紅潮させているのを目にして、数々のアニメを見てきた俺はこの先の少女の言い分を何となく予想できた。


「今、幼女って言った――よね?」

「い、い、い、言ってない……です」

「私は正真正銘の十八歳よ! 次に私を『幼女』なんて言ったら命はないと思いなさい!」


 嘘!? 俺と同じ!?

 俺は決心した。流石に、年が同じだとは思わなかった。

 可愛らしい小さな胸を見て、十四歳かそこらの年齢だと思ったわ。

 俺は被せてもらっていた布きれ1枚を体に巻いて立ち上がる。


「本当にすみませんでしたァァァ! どうかお許しを! 神の御恵みを!」


 土下座した。

 誠心誠意を込めて俺は全力で――。


「本当に悪いと思ってる……? このド変態め……」


 少女は頬を膨らませぷいっとそっぽ向いてしまった。

 俺はその仕草を見て自分の心臓を撃ち抜かれたように感じた。

 僅かな愛嬌を感じた俺は頬を赤く染める。

 ――いかんいかん。

 俺は自分の顔を振り切り、理性を保つ。


「思ってます……」


 と言っておく。

 しかし、俺はこの場所はどこか全く知らない。

 無論、風呂に入っていたら急にこの場所にワープ(?)されて来たのだから――。

 仕方ない、聞くしかないのか。


「あの……。ここってどこ?」

「あなたここを知らずに来たの!? ――まあ、いいわ。ここは《王都イーディスエリー》よ」


 オウトイーディスエリー……? 聞いたこともない言葉が俺の頭の中を錯乱した。 

 ――しかし、勘の良い俺はすぐにわかった。星の数ほどのアニメを見てきた俺だが確信できる。


 異世界召喚……? 俺は、異世界に来てしまったのか。

 まあ、この子に聞いても分からないよな……。

 とりあえず俺は立ち上がる。

 ――というか、この子の服。変わった服だ。学生服? まさか!


「ひょっとして、この世界に魔法とかあったりする…?」


 俺は少し照れながら彼女に尋ねた。


「何言ってるの? あるに決まってるじゃない」

「嘘だろォォォォォォォォッ!?!?」

「魔法を知らないとかあなた――ふざけるのもいい加減に」

「いやいや、俺はこのイーディスなんちゃらとか知らないし、ここがいつなのかも知らないし――」

「……呆れた。まあ、いいわ。置き去りにするのもアレだし――この優しい私がイーディスエリーを案内してあげるから……さっさと服でも着ろッ!」

「まじ……?」


 微かに頬を赤くしながら俺にそう叫んだ彼女はまるで天使のような可愛さだった。

 それに、この異世界を案内してくれる美少女とか俺恵まれすぎィィィ!


「あの……俺。服とか金とか持ってないんだけど」

「あなた一体何者よ……」

「お願いします!何でもするから俺を天国の道に導いてください!」


 俺は彼女と離れたくない一心で両手を強く合わせてお願いした。


「その代り、お礼してよね……。あと、女の子の裸を見た『責任』とってもらうから……」


 彼女は小声で俺にそう言った。

 しかも照れまくってる顔マジ天使。――とそれは置いておいて……。


「はい……。あっそうそう! 俺は神薙ソラ(かんなぎそら)。ソラって呼んでくれ」

「ふーん。じゃあ、ソラ。あなたの服買いに行くからついてきて」


 彼女は即急に用事を済ませようと歩を進めた。

 

「ちょっと待ってくれよ。これから行動を共にするんだから、名前くらい……」


 彼女は急に足を止めた。――ちょっと言い過ぎたか?



「イリス……」

「……ん?」


 ――今何て?



「イリス・エーヴェルクレア」


 その瞬間、彼女のロングな薄桜色の髪が爽やかな風で(なび)く。

 俺に甘い女の子の香りが流れ込んできた。



「ああ、よろしくイリス」


この小説を読んでくださりありがとうございます。東雲蒼都と申します。


そして『俺』視点で書かれていますが、次話からは三人称視点へ変わります。

あ、イリスはとっても可愛い女の子なんですよ。

――というのはさておき。


これからもどうぞ、よろしくお願いします。

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