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他愛もない話をしていると学校についた。
あたしは2年A組。歩はC組。
靴箱からだと歩の教室のほうが近い。
「じゃあね」
「おう」
歩はそのまま笑顔で教室に入っていった。
「おはよう」
あたしが教室に入ると凛子が「おはよ〜」と挨拶を返してくれた。
凛子は教室の一番後ろの廊下側、あたしは運動場側。
とりあえずあたしは自分の席にかばんを置こうと席につくと、凛子はついてきていたようで「昨日はありがとう」と後ろから話しかけてきた。
「あ、ううん、大丈夫」
《昨日》とは昨日は彼氏の誕生日だったが、凛子は日直。先生からの頼まれごとをあたしが代わったことだった。
「どうだった?彼氏さん」
「喜んでくれたよ〜、ほんと美波のおかげ。ありがとう」といい、凛子は抱きついてきたのだった。
凛子はかわいい雰囲気、話し方も仕草も女の子らしい。でも根はしっかりしてるから頼りがいがあり男女問わず好かれるタイプ。
凛子があたしの前の席に座るのを確認してから尋ねた。
「彼氏さんとは何年になるんだっけ?」
「えーと、2年かな」
「結構長いね、いいなー」
「はやく美波も彼氏作ろーよ。あの幼馴染くんいいじゃん、えーとあゆむくん…だっけ?」
「いや、歩は女には興味ありませんって感じだから。ありえないよ」と笑ってごまかす。
「そうなの?かっこよくて爽やかな感じだし、絶対美波にはいいとおもうんだけどなー」
凛子は続ける。
「頭もいいんでしょう?みなみちょうどいいじゃん」ちょっとおどけて彼女はいう。
「どういう意味よ、それー」少し流し目であたしは言い返してみる。
「うそうそ、ごめんごめん」と笑って彼女はごまかした。
「勉強は教えてもらうこともあるよ?でも、あたしたちは恋が芽生えたりとか…そういう雰囲気にはならない。向こうはあたしのこと男だとおもって接してるからね」
そういって運動場をみるとそこには噂の人が見えた。
あたしはそちらに視線を落とす。
「そうなの?」と彼女も視線を落とす。
「うん」
「そっかー、ならもっと女であることアピールすればいいんじゃない?」
「え?」
「あたしも女なんだぞってアピールしなきゃ。まずは…」