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ギフトガーデン  作者:
チェックザランク編
16/18

氷鬼

「ちょっとそこのあなたっ」


 その声ははきはきとしたよく通る声で心臓がドクンと跳ね上がった。


「は、はいっ?」

「か弱いFランクの女性をたぶらかそうなんてこのベルベット・シーが許さなくてよっ」


 視線の先には小さな小さな女の子がいた。その人は小学生かそれくらいの背丈で長い銀髪を二つに結んだいわゆるツインテール、そして腰に手をついて威張った様子で俺をにらみつけてきた。容姿が容姿なだけになんだかかわいらしく見えるその女の子を前に、俺はあっけにとられた。


「へ?」

「へ?じゃありませんわ、あなたそこの彼女に一体何をするつもりかしら」


 容姿とは裏腹にずいぶんと大人っぽいというかお嬢様のような口調だ。


「え、いや、俺は別に何もしてないんだけど」

「いいえそんなわけありませんわ、こう見えても私はあらゆる悪党を見てきたからわかりますの、あなたはどこからどう見ても悪人のそれしかもとびきり危険な悪党の匂いがしますわ」


「な、なに言ってんだよ俺は何もしてないって、あと俺は悪党じゃない」

「言い訳はいいですわ、おとなしくお縄につきなさい顔が悪党のチンピラ」

「な、なんなんだよ一体」


 嫌な予感がした俺は、いつもの癖で逃げ出そうと試みていると突如として足元に違和感が襲ってきた。


 それは冷たくも痛い感覚、そしていつの間にか動かすことのできなくなってしまっている足の感覚だった。思えばさっきから妙に寒いというか息もかすかに白いし、足元から冷えてくる感覚がより一層大きくなってきている。これはまずい、寒いというより痛いという感覚が強くなってきている、一体これはどういうことだろうか。


「お、おぉっ?」

「あらあら、逃げようったってそうはいきませんわよ悪党さん、あなたはすでに私の術中でしてよ」

「な、なんだこれ」


 足元はなぜか氷で覆われておりその場で動くことができなくなってしまっていた、こりゃ新手のギフテッドかと銀髪少女に目を向けると彼女は不敵な笑みを浮かべていた。


「ふぅん、逃げようとするなんて自ら罪を認めるのと同じでしてよ」

「いや、癖でつい」


「癖ぇ、あらあら本当に悪党なのね、あなた悪党というよりも小悪党の方がお似合いですわね、ふぅん」

「ち、違うんだよ俺は別に何もしてないんだって」


 そう、俺は悪いことなんてしていないし普通にくじらと会話していただけだ、それを悪党呼ばわりで氷漬けにされようってんなら死んでも死にきれない。そんな思い出動かすことのできない氷漬けの足を何とかしようとしていると、くじらが仲裁に入ってきてくれた。


「ベルさん、この人は悪党でも何でもないんです」

「ふぅん、くじらったらこの小悪党をかばうのかしら?」


 何やら知り合いのような会話、そして「ベルさん」という名称のようなもの、どうやらこの銀髪少女はべるさんという人のようだ。まぁ、さん付けするにはあまりにも幼いように見えるが、ああ見えて意外と上級生だったりするのだろうか?


「彼は私の友達ですベルさん」

「友達?」


「はい」

「ふぅん、あなたのため思ってここに来てみればチンピラに絡まれているから少し焦ったのですけど、そうご学友でしたのね」


 納得する様子を見せたベルさんと呼ばれている少女は表情を少し緩めた。本当にくじらさまさまだ、くじらがいなかった俺は今頃氷漬けにされている所だっただろう。


「すみませんベルさん勘違いさせちゃって」

「いいですわ、しかし随分な恰好ですのねギフトガーデンの」


「わわわっ、ベルさん口にしないでくださいよっ」

「あら、失礼」


 なんだか二人の間で和平が保たれたのか、随分と和やかなムードが流れたところで俺の足元の氷は突然砕け散った。それにより自由になった足元にはキラキラと綺麗な氷のかけらが散らばった。その様子がとても美しく見えて俺はしばしその様子を見つめていると、ふと声をかけられた。


「御免あそばせ、くじらのお友達でしたのねあなた」

「いや、いいんですけどあんたは?」


「あら、私の事を知らない人がいるのね、こう見えても顔の広さには自信がありましたのに」

「あはは、ベルさんいい意味でも悪い意味でも顔が知れてますもんね」


「ふぅん、あなたには敵いませんことよくじら、なにしろあなたは」

「わわわ、今の私は学生なんですってば」


くじらは慌てた様子で銀髪少女の口をふさいだ、何をそんなにあわただしくする必要があるのかわからないが、そうしてしばらくもみくちゃった後ベルさんと呼ばれた銀髪少女は落ち着いた様子で咳払いを一つした。


「コホン、まぁいいですわ久しぶりに自己紹介でもしましょうかしら」

「はいよろしくお願いします」


「ベルベット・シーこのC地区のボスですわ」

「ボ、ボス?」


 ボスっていう言葉に俺は嫌な予感と嫌な思い出が駆け巡っていった。それはいつの日か経験したとんでも事件にまきこまれた時の思い出だが今はそんなことどうでもいい、とにかくボスにはできる限り下手に出ないとだめだ。


「えぇ、覚えておいてもらえると嬉しいですわ」

「ボスって―と、いわゆるそのボスですか?」


「ふぅん、なにやらずいぶんと混乱しているようですけどボスと言ったら一つしかないでしょう?」

「あ、えっと、お疲れ様ですボスさんっ」


「・・・・・・さんはつけなくていいし、あなたは私の部下でもないのだからボスと呼ばなくていいわよ」

「え、じゃあなんていえば」


「ベルさんって呼べばいいと思いますよ兵助君、ちなみにベルさんはC地区にあるセントラルアカデミーの生徒会長さんですよ」

「生徒会長?」


「はい」

「でもさくじら、生徒会長でありボスの人にベルさんってなれなれしくないか?」


「大丈夫ですよ、ねぇベルさん?」

「かまいませんわ、本当なら様をつけさせたいところですけどくじらもこういってることですし、そう呼ぶことを許可しますわ」


「じゃ、じゃあベル姉さん」

「私はあなたの姉でも何でもないのよ」


「いや、でも上級生ですし一応姉さんってつけた方がいいのかと」

「ふぅん」


 ベル姉さんはまるで俺を品定めするかのようにじろじろと見つめてきた。


「な、なんですか?」

「いえ、まぁベル姉さんでいいですわところであなたは?」


「あ、俺は猫宮兵助って言います、蕾学園に通ってるFランクです」

「猫宮兵助、ふぅんどこかで聞いたことがあるようなないような・・・・・・まぁいいわ兵助、よろしくね」


「はい、よろしくお願いしますベル姉さん」

「ふぅん、ところで二人は見学よね」


「はい、兵助君のお友達探しついでに見学してました」

「あら、あなた迷子なの兵助?」


「えぇ、まぁそんなところです」

「そう、じゃあすぐに連絡とるからまってなさい」


「連絡、どういう意味ですか」

「こんなこと言うとFランクのギフテッドには不快に思う人もいるみたいだけど、私たちは今日に備えてあなたたちFランカーに護衛をつけているのよ」


「監視ってまたなんでそんなことを?」

「治安維持のためよ、Fランクに群がる不逞な輩からあなたたちを守ることで治安維持につなげているのよ」


「じゃあベル姉さんが今ここに来たのも」

「もちろん監視のためよ、まぁいろいろあってくじらのところにつくのが遅れたけれど・・・・・・っていうよりそこの彼女が私との待ち合わせをほったらかして勝手に見学しているのが大きな問題だったりするのだけれど分かっているのかしら?」


「すみませんベルさん、だって早く見たくてうずうずしちゃったんです」

「早く見たくてじゃありませんわ、ただでさえあなたは厄介なのだからもう少し振る舞いには気を付けてもらいたいですわ」


「すみません、てへっ」

「もういいですわ、今連絡をとってこちらに向かわせるようにするから一緒に来ていた友達の名前を教えなさい」


「えっと、番田並と本屋哲心ですけど」

「わかったわ」


 そういうとベルさんは襟を口元に寄せて何やらぼそぼそと話し始めた。どうやら襟に無線でもついているようでしばらく口元を動かした後ベルさんはため息をついた。


「ふぅん、あなたのお友達はすぐにここに来るわ、少し待ちましょう」

「え、もう来るんですか?」

「えぇ」


 さすがはボスといったところだろうか、たった数秒の連絡だけですぐに並や哲心を特定してしかも連れてこれるらしい。思えば、哲心関連でいろいろ動き回ってた時も四方教授がやたらと詳しく知ってたし、やっぱりここじゃそれくらいの監視網は簡単に出来上がってしまっているということなのだろうか?


「そういや、気になったんですけどC地区のボスって事はベル姉さんはCランクなんですか?」

「あらあらあら、無知にもほどがありますわね兵助、あなた記憶喪失でも経験しましたの?」


「え、あの」

「そ、そうなんですよベルさん、兵助君はちょこっと大変な目にあってですね、ここでの記憶が少し曖昧になっちゃってるんです」


「あら、そうだったの兵助」

「あ、あぁ、はい」


 まるで話を合わせろと言わんばかりに体を寄せてくるくじらに俺は静かにうなづくと、くじらもまたうなづいた。そしてベル姉さんはなんだか優しい目つきで俺を見つめてきた。


「そう、苦労してるのね兵助」

「いえいえ、体は元気なんで大丈夫っす」


「確かに、あなたは顔つきがあれだから厄介な連中によく目をつけられそうですものね」

「え、顔つきがあれ?」

「えぇ、苦労したのねかわいそうに」


 いったい何に同情されているのかわからないが、俺のために同情してくれる人がいるだけでもありがたいのかもしれない。


「は、話は戻りますけど兵助君ベルさんは確かにC地区の人ですけどCランクではなく特待生なんですよ」


「特待生?」

「はい、ギフトガーデンではランクごとに特待生が配属されるんです」


「へぇ」

「特待生は、ランクの模範となるギフテッドで各地区の代表の役割を担っています」


「じゃあ、Fランクにも特待生がいるのか?」

「いますよ、ですが・・・・・・」


 突然暗い顔をしたくじらは口をつぐんだ。何か悪いことでも聞いてしまったのかと思いベル姉さんを見つめると彼女は平然とした様子だった。深刻なのかそうでもないのか全く分からないがくじらだけはとても深刻そうな顔をしていた。


「ですが、なんだよくじら?」

「あ、いやFランクはシンボルをだせていない生徒が所属する場所なので、特待生がいてもこれといって配属する必要がないんです。まぁいることにいるらしいんですけどそれが誰であるのかは公表されていません」


「へぇ」

「私は知っていますわよFランクの特待生」


「えっ、だれですかベル姉さん?」

「ふふふ、聞いても教えてくれませんよベルさんは」


「え、なんで教えてくれないんですかベル姉さん」

「なんもかんも言わないということがベストと上で決めたことですの、それに世の中知らない方がいいことはたくさんありますのよ、お分かり兵助?」


「そうなんですか、でもその特待生ってのが代表なのは分かったけどさ特待生は具体的に何してるんだ?」

「基本的には抑止力として存在してるって聞いたことがありますね」


「抑止力?」

「えぇ、ギフトガーデンは良くも悪くも力がモノを言う世界です、なので高ランカーをそれぞれの地区に配置することで余計な面倒ごとを避ける目的があるそうですよ」


「へぇ」

「例えば、あの地区にはあの特待生がいるから「不用意に近づけねー」とか「でかい顔できねー」っていう感じですね、ふふふ、まるで仁侠映画のようですよね」


「あら、どの地区のことを言っているのかしらくじら?」

「いえいえC地区ってとっても平和じゃないですか、それはベルさんがいるおかげなんですって兵助君に教えてあげてるだけですよ、なんだか変に聞こえちゃいましたか?」


「聞こえますわ、それだと私がまるでどこか大悪党か何かのような存在に聞こえるじゃありませんのっ」

「でも、C地区には氷鬼がいるから近づくなってよく聞きますよ、あ、ちなみに氷鬼ってのは氷に鬼で氷鬼ですよ」


 氷鬼なかなかにかっこいい名前じゃないか、そう思いベル姉さんに目を向けると、彼女は体の周りにもやもやと白い冷気のようなものをまといながら鬼のような顔をしていた。


「ななな、なんてぶっさいくな名前ですことその名前をつけたやつを今すぐにでも氷漬けにしてかき氷にしてやりたいわっ、くじらまさかあなたが言いふらしてるんじゃないですわよねっ」

「や、やだなベルさん私がそんなこと言うわけないじゃないですか、風の噂ですよ風の噂」


「きーっ、なんだか腹か立ってきましたわそんな噂、直ちに流れないように指示を出すことに決めましたわ」

「ありゃりゃ、なんだか余計なこと言っちゃったみたいです?」


 くじらとベルさんはよほど仲がいいのか冗談まじりやらなんやらで楽しそうに話をしていた。その様子は俺がここにきてから感じていたランク差の軋轢を全く感じさせない関係性であり、そんな平和的な様子をしばらく見つめていると俺はなんだか幸せな気持ちになった。


「所でくじら」

「はい、なんですか兵助君?」


「つまりさ、なにも公表されていないF地区にガラの悪いやつが多いのはそれが原因ってことか」

「あぁそうですね、F地区はもともとにぎやかな場所ですから自ずとそういうことが多いのは確かなんですけどまぁ特待生一人のせいにはできません、C地区が少し異常なだけでほかの地区も多少なりとも問題は抱えているものです」


「くじら、ここは正常な場所よ他と比べて実に正常な場所よっ」

「はい、それはわかってるんですけどベルさんほど地区に貢献している特待生もめずらしいのでそう言っただけですよ」


「なんだ、他の特待生ってのはあんまり貢献してないのか?」

「他の地区で特待生の目立った活躍は聞きませんね、それにそもそもギフトガーデンにはGさんがいますから、彼らが地区の安全しいてはギフトガーデン全体の治安を守っています、なのであくまでも特待生の方々は地区ごとの象徴という存在です」


「なるほどな、なんか色々教えてくれてありがとなくじら」

「いえいえ、他に気になることはありますか?」


「ん、あぁ、それならなんでチェックザランクはこの時期にやるんだ?」

「え?」


「ほら、せっかく入学したばかりなのにこの時期にこんなことやってたらすぐに転校しなきゃなんねーんだろ、ほら確かランクが上がれば転校するって」

「ふぅん、それについては私が説明して差し上げますわ兵助」


 そうして氷鬼ことベル姉さんが近づいてくると少しだけ冷気を感じた。この人がいれば夏は苦労しないだろう、なんなら夏の期間はこの人の付き人でもやってれば汗すら書かずに過ごせそうだしかき氷だって食い放題かもしれない。


「ちょっと兵助、なに私の顔をじろじろ見ているのですか?」

「あ、いやなんでもないです」


「ふぅん、それよりチェックザランクの話をしますわよ」

「はい」


「チェックザランクはもともとギフテッドの能力を査定するために始まったものよ、だけどそれ以外の事もチェックしているの、今日はそれ以外のチェックをする日なのよ兵助」

「それ以外のもの、なんですかそれ?」


「ふぅん人間性とでもいえばいいのかしら。まぁ、とは言ってもごらんのとおりギフテッドたちはみな能力をひけらかすばかりなのだけれどね」

「そうですね」


「でもそれでもその能力者としての技量だけでなく人間性が培われているかというのもチェックの対象なの」

「人間性ですか?」


「そう、いくら力が強くてもそれを扱う人間の正確に問題があればそれはただの兵器と変わらないものだから今回のチェックザランクではギフテッドにどれほどの理性があるかのチェックなの」

「なるほど、しかし兵器ってのはずいぶんと物騒な言い方ですね」


「そうね、でも私たちギフテッドは大陸側の人間からは人間兵器なんて呼ばれ方もされているのよ、だからそれを少しでも払拭しなければならないの、そのために今日という日があるの」

「人間兵器って、そんな呼び方してたっけかな?」


「していますわ、大陸の人間には私たちは兵器にしか見えないらしいのよ、これは事実に基づく正確な情報よ」

「そうですか、俺はそんな事一度も思ったことないですけどね」


「当り前ですわ、あなたも私たちと同じギフテッドならそう思うのが当然よ、それに私たちは兵器だなんてそんな力任せなモノではないのよ」

「あ、あぁそうですね」

「そう、だからチェックザランクとは私たちギフテッドの命運がかかったとて大切なものなの、という風に思っているのは私の個人的見解だけれどあなたたちにはどう映るのかしらね、あなたたちだって立派なギフテッドですもの、ちゃんと意見を述べてもらえると今後の参考になるわ」


 なんだかこれまでであってきたギフテッドとは違いずいぶんと優しく良識のある話をしてくれるベル姉さんに俺はなんだか嬉しくなった。ランクが上でもいいやつはいるもんだと希望を見せてくれるベル姉さんは本当にボスにふさわしい人なのかもしれない。


「えぇ、それはもうとても勉強になってますよベルさん、こんなに素晴らしい行事はありませんよ」

「あらくじら、どのあたりが勉強になっていますの?」


「夢と希望、私たちもいつかこうなりたいと思えるそんな素晴らしいイベントです。普段は間近に見れることのないギフテッドたちが目の前にいて、驚くような光景を見せてくれるなんて私たちにはとても新鮮でとてもうれしいんですよ」

「ふぅん、あなたのような方が一人で多くいてくれたらと思うわ、とてもいい答えでしてよくじら」


「ありがとうございますベルさん、なんだか照れます」

「それで、兵助にはどんな風に見えていますの?」


「俺ですか?」

「えぇ」


「うーんなんだかなぁ」

「あなたでも少しは感じることがあるでしょう」


「うーん、あっ世界平和とか」

「はぁ?」


 なんだかとてつもなくバカなことを言ってしまったかのような反応をされたが、俺にとってこんな夢のような場所で夢のような奴らがすごい力操っているのを見たら、やっぱり夢のような平和な世界が実現できるんじゃないかって思えて仕方がなかった。

 

「ほら、せっかくこんなすごいやつらが集まってるんだからさ、みんな仲良く世界平和を実現できるじゃねぇかって思うんですよ」

「兵助、あなた一体何を言ってますの?」


「いや、なんとなくそう思っただけで特に意味はないんですけど、けどここにいるすげーやつらがいたらそういうことも実現できそうだなって」

「ふぅん、ずいぶんとお気楽なのね兵助そんなことを言う人は初めてでしてよ」


「いやぁ、やっぱりプラス思考でいかないといけないなって」

「そう、でもね兵助、そんな選択肢を与えられるほどこの世界は容易ではないのよ」


「どういうことですか?」

「まぁ、あなたたちにもいずれ分かるわ、高ランクに行くにつれて自分が一体何のために存在しているのかなんてことをね」


「何のために存在しているのか?」

「えぇ、その辺あなたもよく考えてもらえるとこちらとしてはうれしい限りですわ」


 考えるも何も、ここにいる新人類ギフテッドはそんなこと考えずとも世界から必要とされているだろうと俺は思った。それこそここでいう大陸の人間から言わせてもらえれば、Fランクだろうが何だろうがギフテッドとして「認められた」だけで十分すぎるものだと思う。


 そりゃ、俺のように世間からは出来損ないのように見られている奴なら自分の存在とは何かナンテ考えたりするもんだけど、最初からお前は世界から必要とされている存在のギフテッドにいまさら何を考えることがあるのだろうか?

 それとも高みに上ったものだけが分かる違った視点の存在意義がベル姉さんには見えていたりするのかもしれない。そう思い俺はじっとベル姉さんを見つめていると、彼女はにやりと笑って見せた。 

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