06 Wahrheit der Finsternis Ⅲ
やっと更新~。
…2843年2月17日。
……ザァァァァァ……。
「雨……、か。」
ステパンは自宅から土砂降りの窓の外を眺めながらそう呟いた。
窓際にはマディナとの写真が飾られている、写真の中のナディアの笑顔を見たステパン、やがてやるせない気持ちになって顔を写真から背け、煙草を吸い始めた。
その時、玄関のチャイムが鳴った。
……誰だ?。
そう思いながらステパンは玄関へと向かう、そして玄関のドアを開けるとそこにはボロボロの布を巻いた人物が何かを抱いて立っていた。
「だ……?。」
『誰だ?。』、そう言おうとしていたステパンは言葉を失った、何故ならそこに居たのは――。
――マディナ・シャポワレンコだったからだ。
マディナはそのまま倒れる、慌ててステパンは彼女の事を受け止めた。
………
「……。」
ステパンはマディナが眠っているベッドの前の椅子に座っていた。
ステパンの腕には赤ん坊が抱かれている、しかしその赤ん坊は人間の身体に犬のような頭を持っていた。
――その赤ん坊は、キメラ立ったのだ、しかも人間と動物のハイブリッド……。
「……これが、禁忌、か……。」
彼女の言う禁忌、それは人間と動物の合成だったのだ、倫理の上でそれは確かに禁忌だった。
「……う。」
マディナが呻き声を出した、そらからうっすらと目を開き、俺の事を見る、そして昔とはうって代わりとても弱々しい笑顔を浮かべながら、
「ステ……、パン……。」
と言った、俺は堪らず彼女の事を抱き締めた。
身体は本当に細く、力を込めたらバラバラに壊れてしまいそうだった。
その3日後、彼女は死んだ。
死因は衰弱と身体に受けたダメージが原因であった。
彼女は元々身体が弱く、出産は出来ない、と言われていた。
しかし軍の研究機関は研究内容を公表しようとしたマディナを、実験台としたのだ。
ヒトの雌を使用しキメラを産ませる実験――。
それに彼女は耐えられなかったのだ。
――彼女は死に、彼女の息子である一人のキメラが残された。
――その後の2843年2月20日。
その日、マディナの葬儀が行われた。
ステパンはただ彼女の骸が入れられた棺が埋められていくのをただ眺めていた。
その時、背後から、
「残念でしたねぇ、ステパン大佐。」
と言う声が聞こえた。
振り返るとそこにはニタニタと笑うアドリアンが居て――。
……気がつくとステパンはアドリアンの顔を何度も何度も殴っていた。
………
――「大佐……。本当にお辞めになられるのですか?。」
数日後、ステパンは自分の執務室の机を整理していた。
アドリアンを殴った後ステパンは数日間の謹慎を言い渡された。
そしてそれを聞いたステパンは軍を辞めると言い、辞表を上層部に提出したのだ。
ステパンは「本当に辞めるんですか?。」、と聞いてくる自分の腹心の部下だった男に、
「……あぁ、俺にはやらなければならない事が出来たからな……。」
と言い、部下の肩を軽く叩く、そして、
「大丈夫だ。お前ならきっとやれる。…、後は、任せたぞ。」
と言って執務室を後にした――。
エリーザは決意する、そしてこの革命はやがて国連軍をも動かす事になる。そしてステパンは言った、「あいつを――、助けてやってくれ……。」と――。
次回『沈黙』