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05 Wahrheit der Finsternis Ⅱ

 ―――11年前、2841年8月21日。


 「マディナ。」


 一人の軍服を着た男は、そう噴水の前に座り本を読んでいた女に声をかけた。するとマディナ、と呼ばれた女は、


 「ステパン!、…久しぶりね。」


と言いながらステパン、と自分が呼んだ男に抱きついた。


 男の名前はステパン・ステンレフ、当時ロシア軍特殊部所属の大佐であった。

 女の方はマディナ・シャポワレンコ、軍の研究機関に所属する科学者である。


 軍のエースであり戦場の英雄であるステパンと将来有望な科学者であるマディナ、彼らは回りから見てもお似合いのカップルであった。



 その日、マディナとステパンは近くのレストランで食事をしながら他愛もない話をしていた。

 マディナは軍の話ばかりするステパンに笑顔を浮かべながら、


 「…もう、ステパンったら。いつも軍の話ばっかりね。」


と少し呆れたように言った。それを聞いてステパンは、


 「…じゃあ、君は最近研究はどうなんだ?。」


と聞く、するとマディナはさっきとは違う、科学者としての笑みを浮かべると、


 「…もうすぐ、完成するわ。…今まで誰もなし得なかった、神の研究よ。」


と言った。ステパンはそれはどんな実験なんだ?、と聞こうとしたが、ウェイトレスが食事を持ってきたため話は中断し、食べ終わる頃にはステパンはその話を忘れていた。



そしてそれから半年後、彼女の研究は完成し、そのわずか3ヶ月後にマディナは姿を消した。




 ―――その後、2843年2月13日。


 第七会議室。


 「マディナ・シャポワレンコ、知っているかい?。アドリアン中尉?。」


 ステパンは当時自分の部下であったアドリアン・ログネンコ中尉にそう言った。

 アドリアンは、


 「これはこれはステパン大佐。…いえ、私はマディナ・シャポワレンコと言う女性は…。」


とそこまで言った時、ステパンは、


 「…ふざけるな、知らないだと?。」


と言い、机の上に持っていたノートのコピーを投げ出した、ノートには化学式やよくわからない記号に混じり『合成獣』や『動物乙と動物甲の細胞、遺伝子などを掛け合わせ』などと書かれていた。

 それからステパンは、


 「…これは、彼女の家にあった研究内容の書かれたノートなどのコピーだ。…内容は、動物と動物を掛け合わせ新しい生物を作り出す、と言った物だな。」


と言う、するとアドリアンは訳が分からない、と言った表情を浮かべ、


 「…それが、私にどう関係が?。」


と聞く、するとステパンは、一枚のコピーを取りだし、


 「…これは、彼女の日記の一部だ、日付は2842年5月18日。マディナが失踪した一日前だ。」


と言った、それからステパンは、その日記を読んだ。


 「『五月十八日、曇り、…ダメだ、ログネンコはこの研究を使い更なる禁忌を犯そうとしている。この事は公表しよう。私も裁かれると思う、しかしあんな禁忌を犯させる訳にはいかない。絶対に。』……ログネンコ、これはアドリアン中尉、君の名前だ、そして君は翌日、休んでいたな。」


と言い、アドリアンを睨み付けた、しかしアドリアンは涼しい顔で、


 「ログネンコなんてこの国に何万人も居ますよ。それに休んだのは病気だったから、事実、医療証明書も提出してますよ。」


と言った、ステパンは舌打ちをするとコピー用紙を片付ける、そしてアドリアンに向かって、


 「1つだけ聞きたい、マディナは……、無事か?。」


と聞く、しかしアドリアンは、不気味な笑みを浮かべたまま答えなかった、ステパンは、


 「…マディナに手を出したら、必ずお前を殺す。…注意しておけ。」


と言って部屋を出ていった。

 部屋に一人の残されたアドリアンは、ポケットから携帯電話を取りだし、ある場所にかける、そして、


 「もしもし、……あぁ。それで、………、被験者α03とプロトタイプAA052を解放しろ、……大丈夫、どうせα03はもう永く無い。……それじゃあ、頼んだぞ。」


と言って電話を切り、


 「……ステパン大佐……、気がつくのが遅すぎましたね……。どうぞ、絶望して下さい……、楽しみです、絶望と怒りに歪むあなたの顔を見るのが……。」


といって悪魔のような笑みを浮かべた。

 マディナはステパンの元へ行き、やがて息絶える。一つのいのちを残して。

 そしてステパンは復讐を誓う、軍とアドリアン・ログネンコへの復讐を―――。

 次回、『Wahrheit der Finsternis Ⅲ』

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