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精霊達の専門分野その2

彼女を抱き上げたまま、しばらく川沿いに歩いた。

ごつごつとした石が敷かれているから意外と歩きにくい。


昼食時に一度足を止めて、日陰に入る。


木に彼女をもたれかけさせ、

リュックの中から水筒を取り出した。


「・・---」

ルミアは、ぼぉっと虚ろに俺を見ている。


コップになっている蓋をカポンッっと音を立ててとり、

それに水筒の水を注いで、差し出した。


「ほら。のどが渇く前に水分をとらないと。

・・少しでも飲んでくれ、ただの水だから」


「ぅん」


彼女は素直に頷いて、コップを受け取り、水を口に含ませる。

俺も彼女のあとに水を飲み干して、川の清い水を水筒の中に入れる。


そして、おなかがすき始めたころに

朝食同様に果実を食べた。

「おいしいか」

「うん」


二人合わせて三個食べて、

リュックの中の果実がそこを尽きた。


そこでリフウを再び呼び出す。


「お!お早い呼び出しだぁー!主、どうしたの?」

「果実がそこを尽きた」


俺は淡々と事実を述べた。


「おぉ、そんで?」

「リフウに、この周辺にあるオレンの実の気配を探ってほしい」

「りょーかい!」


俺が頼むと、リフウは気前よく頷いて、目を閉じ、

魔力を解放した。


スシャーーー!


ふわっと、風のように広がる魔力。

それはこの周囲の森の木々を包み込んだ。


地を司るリフウは自然の恵みを感知することが可能だった。

こういう意味ではとても便利だ。生活力がある。


「お、あったあった。東の方向にオレンのみの木発見!

十数個あったよ!少し距離があるかな」


「分かった。とってくるから、

リフウはルミアの番をしててくれ」


俺はリュックを手に取りながら言った。

森の入り口は北にある。

俺から言えば右側の木々にオレンのみの木があるということだ。


「りょーかい!」

「ルミア、果実をとってくるから、そこで待っててくれないか」


「--ぅん」


コクリと、俺の言葉に彼女は素直に頷いた。

だが少し、ためらったような気がするのはきのせいか?


俺はルミアに近づいてひざをつき、


「ルミア、心配しなくてもリフウがしっかりついてるから。

それにすぐ戻る。な?」


「ぅ、ん」

「しっかりルミアちゃんについてるから大丈夫だよ。

ルミアちゃんも主も心配しないで!」


彼女の頷きを元気付けるようにリフウが言った。


「あぁ。じゃあ、いってくる」


俺は地を蹴って東に突っ走った。


「--」


ザッザッザッ


と、木々の中を身軽に移動して、目当てのものを見つける。


「みつけた。」


リフウのいっていたとおり、オレンのみが十数個、実っていた。


剣を構え、


「ハァアッ!!」


と、気迫を込めて、剣を抜き、


ザンッッッッ!!


と、実のつく枝を狙って凪いだ。


それと同時に、オレンのみをいくつか木に残し、

それ以外は全て、ごろごろっと地に落ちる。


「よし、完璧だ」


森から出て町に出るころまでには足りる量を

拾い上げて、リュックに詰め、剣をチャキッと音を立ててしまう。


そして、走り戻った。


「またせたな」


ストンッ


地をけり、彼女たちの場所に着地した。


「んー、お帰り~主」


気まずそうな声色で出迎えるリフウ。


なにかあったのかと顔を上げてみてみれば、


「!」


風の結界が、ルミアを、囲っていた。

なぜ、結界が・・--


「ぁ!・・!!」


ルミアは風の結界の中で立っていて、

結界壁に身体を密着させて、今にもこちらへ来そうなそぶりと声を出す。


「リフウ、結界を解いてくれ。」


彼女に近づき、俺は言う。

リュックを下ろして、両手を広げて、彼女を待ち受ける。


「りょ、了解、主っっ」


途端、結界が、ヒュンッと、消えた。


グラッ


「ぁ!」


結界に密着してた彼女の体が傾いた。

そして、


ふわっと、俺が抱きとめる。


「ルミア、心配いらんといっただろ」

「・・ぅん」


優しく抱きしめ、頭を撫でる。

完全に自分に体重を預けるルミアを見て

立ち上がれるほど、少しは動けるようになったかと、頭の片隅で思った。


「主、・・」

「分かってるよ、リフウ。

ルミアが追いかけようとしたんだろ、俺を」


さっきのあのそぶり。それで俺は悟った。

やはり、感情は全て喪失したわけじゃ、なさそうだ。

最初のときより、戻りつつある。


「そ、そうなんだ、いくら言っても聞かなくて。

だから」


「追いかけてくる前に

止めておいてくれたのは助かった。

そんな慌てなくてもいい。リフウのせいじゃない。

もう、戻っていいぞ。また呼ぶから」


「う、うんっありがとう、主。なにかあってもなくてもまた呼んで」

「あぁ。」


俺はリフウをなだめて、リングに戻した。


「ルミア、そんなに、俺がいないと不安か?」


「ふ、あん?」


ルミアにたずねるが、そう聞き返された。

もう、どれがどういう感情かさえ忘れてしまっている。


「そうだ。追いかけようとしてたんだろ?」

「うん。これが、不安?」


「たぶんな。今は違うんだろ?」

「うん」


「なら、いい。じゃあ、出発する。」


俺はリュックを担ぎなおして、彼女を抱き上げ、再び

森の入り口へと向かった。



***



歩き始めて数時間。


すでに日が傾き始めた。


闇が迫る。


「今日はここで休む。」


そういって、大木の根元に腰を下ろして、

彼女を背にもたれさせ、食事を済ませた。


そうして、毛布を用意して、

一度、彼女を立ち上がらせる。


「!・・ーー」


そのとき、魔物の気配がした。


ざわざわとすでに暗くなりつつある木立や茂みから

たくさんの邪悪な気配を感じた。


「---」


これは、厄介だ。冷静に分析して思う。

俺だけじゃ、きつい。

ルミアもいる。ルミアには長時間邪気に当てたくはない。

負担が大きくなる。ただでさえ、まともに動けないのだ。


「・・」


リフウを出すか?いや、この場合は・・シヴァルに頼むか。

リフウでは少し相性が悪い。


俺は左手のリングに向かって呼びかけた。


「闇を司る精霊よ、我が前に姿を現せ」


シュゥウウウ!


煙と共に、闇を煌かせ、シヴァルは現れた。

魔物の気配がざわつく。

相当シヴァルの強さに動揺したと見える。


「お前が俺を呼び出すとはな、何のようだ、リオミヤ」


黒髪をさかだて、露になっている額には雫形の宝石が埋め込まれ、

金の瞳をもつ異様な風貌の持ち主が、不気味に笑って言った。



シヴァル登場!

さて、闇を司る精霊のもつ得意分野は何でしょうw




答えは次回^

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