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身体が動かない許嫁

ーー報告書ーー


・許嫁であるルミアを発見した。

今から、王城に向かう。

・魔力は以前保持していた量の半分。

原因は、魔物に奪われたことによる減少と、思われる。

・自分の名前と俺の名前、八年前の記憶と

魔物に関する八年間の記憶を保持していることを確認。

・記憶を保持しているが、感情が喪失していることを発見。

魔力の減少が原因と見られる。

なお、半減したその魔力から一向に回復を見せない。

魔物に奪われたと、当人は言っている。

断食の状態から、魔力を生む細胞が死亡・また機能停止が原因かと。


とりあえず、王城に向かうので、そのほか報告はそのときに。


報告者:リオミヤ・シトラス・ルーネリア


***


「よし、完成だ」


カキカキカキと丁寧に書き終え、辺りを見た。


「んー~主、こっちはしばらくかかるよー。

あ、伝書鳩、呼んどいたっ、あの鳥だよん」


リフウがパタパタと飛ぶ一羽のはとを指差した。

俺はそれを確認して、羊皮紙を丸めて、しわにならないよう魔法をかけ、

紐で結ぶ。


「そうか。--引き続きよろしく頼む」

「オーケー」


一方、服のほうは森に住む精霊に手伝ってもらっているようで、

まだまだかかりそうだ。


「・・---」


ルミアはただ俺をじっと、見ていた。


「これを王の執務室まで頼む。」


鳩の足に紐を引っ掛け、魔力で王城のどこへ行ってもらうかを、示した。


「ポポォー・・」


鳩は鳴き、羽ばたいて、王城へ向かいにその場を去った。


「・・---」


「ルミア、今から、朝食にする。

食欲あるか?」


いまだ自分を見るルミアに

そう問いかけると


「・・?」


食欲とは何かという風に首を傾げられる。昨日と同様に無表情で無感情なのだが。

・・しまった、それも感情のうちに入るか。


聞き方が悪かったと思いなおして、再び問いかけなおす。


「・・何か、食べられるか?果物とか木の実とか」


「・・・----」

「・・う、ん」


しばし彼女は沈黙して、頷いた。

八年間、食べたことないから複雑なのかもしれない。


「じゃあ、消化のよいもの食べるか。

ルミア、・・動けるか?」


彼女に近づいて、見下ろす。

とりあえず、ここでも食べられるが、

動けるかの確認くらいはしないと。


木に背中をゆだねていると姿勢が悪いし、食べさせにくい。

日陰は暗いし。


朝の日差しは明るく、川があるから少し涼しい。

季節的には春から夏にかけてぐらい。

しかし、日陰は日向が明るい分暗くて見えにくい。

木々と木立に邪魔されてずいぶんと暗いのだ。


移動くらいしたい。


「・・---っ」


ルミアは両手を地面につけ、ぐっと、力を入れようとし、身体が少し浮くが

力が入らないようで、ぺたんと、木にもたれかかる。


魔力を使おうと彼女が力んだところでーー


「ルミア、魔力は使ってまでやらなくていい。

動けないなら動けないでいいんだ、俺の頼み事はできなくてもいいから。

できるかぎりでいい、ルミアのやれる範囲で。・・いいか?」


俺は慌てずにやめさせた。

おそらく、なにも食べてないから、動けないのだろう。

魔力が回復しない今、使わせないほうがいい。

・・それとも、立てないだけで歩く力ぐらいはあるとか?


「うん」


彼女は素直に無表情に頷いた。


「俺が、手をかすから、

俺の手に、自分の手を置いてくれないか?」


彼女の今の体力状況を確認するために、中腰になって手を差し出す。


「わかった」


彼女は頷いて俺にゆっくり手を伸ばし、触れる。

手は伸ばせるみたいだ。


「よし、ひっぱるぞ。立ち上がってみて」


白く柔らかい手の手首を優しく握り、ぐっと、力を入れて立ち上がらせる。


ザッ!


勢いよく立ち上がった、無事立てたと思いきや、


グラッ”!!


彼女の身体が傾き、崩れ落ちていく。


「ルミアッ!」


俺は慌てて彼女の手を引いて、彼女を抱き囲み、支えた。

当然、身体は密着し、彼女の体重は全て俺に預ける状態となる。


「っーー・・・」


彼女はそのまま俺にゆだねたまま、俺を見上げた。


「悪い。無理をさせた。

何も食べてないお前を動かすのは無理だよな」


俺は謝りながら、ゆっくりとひざを突いて

彼女の肩を抱き寄せて、立ち上がりながら抱き上げた。


「・・っ」


彼女はびくりと身体を震わせ、固まった。

突然のことに驚いたのだろうか。


「!あぁ、悪い。動けないようだから、このまま日向に移る。」


そういって、あまりゆれを感じさせないように

慎重に歩き、日向に移る。

ーーピカーーっと、太陽が煌いたように感じ、視野が明るくなる。

川原に腰を下ろし、あぐらをかいたところで


「リフウ、俺のリュック取ってくれ」

「はいよぉー、主」


リフウに頼み、風を操ってリュックを傍に持ってこさせた。

ふよふよとリュックが浮き上がり、ポトリと落とされる。


「・・---」


ルミアはその一部始終を黙ってみてた。

俺は、彼女をひざの上に乗せて、片手で肩を抱き寄せて、背を支える。

もう片方の腕でリュックの中を探り、栄養価の高い木の実をいくつか取り出し、

そばに置いた。


「・・---」


「これは、オレンの実だ。

コレを食べれば、森を抜けるぐらいまでには動けるようになるだろう。」


俺はそういって、その果実を片手で丁寧に皮を剥く。

蒼いような皮をしている、柑橘類の果実だ。


一口サイズに実を割って、彼女に差し出した。


「ほら、食べろ。手で持って、かじりつけ」

「」


彼女は頷いて、おずおずとそれを受け取る。

口元までそれを持っていて、俺を見上げた。


まるで、俺は食べないのかといいたげだ。


「ははっ、俺が食べないと安心できないか?

俺も食べるさ」


苦笑して、俺は果実のかけらを口の中にほうりこむ。

噛み砕いて舌先で味わう。


甘くすっぱい。食べやすい味だ。

これで消化もよく栄養価も高いのだから文句はない。


「・・---」

かぷッッッと彼女は小さく、噛み千切り、口の中に入れた。

もぐもぐと口を動かす。


そのうち、ごくりと、のどがなった。


「どうだ?これなら、食べられるか?」

「」

コクンと、彼女は頷いた。


これなら、回復も早いだろう。


俺はそう考えた。


なかなか一つ一つの動作の描写にてまどってる紫苑です。


なんか・・王子、冷酷無慈悲じゃあ、ないですねww


「感情喪失しているルミアに無慈悲になれるかッ!」

「・・---?」


作者の言葉に突っ込む王子と、首をかしげる許嫁。


「冷酷になれるほうがおかしいんだ」


王子は許嫁をちらみして言う。


たしかにそんな人がいたら見たいww


そういうキャラ、作ってみようかなww


「っ俺は許さんッ!」


・・許されませんでした(泣)

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