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突然ですが、貴方は異世界に召喚されたいですか?  作者: 十三月
第二章――喧騒と怒号が響く街
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第八話――かっこいい屍(絶滅危惧種)

「ヒュー……ヒュー……」


満身創痍。


もう、体が、動かない。


「人一人を、背負って、走るのは、流石に、疲れる」


「だから、なんで離さないのさっ!」


「いや、だって、なんか、負けた気がして」


「負けてもいいじゃん!?」


いや、それを負けず嫌いのハルが言いますか。


「けど、その甲斐あって街には着いたな」


正確には、門らしき物が見えてきただけで、まだ着いたというには早いが。


しかし、お天道様は未だ真上を過ぎた頃なので、予定よりはずっと早い。



「うん……そうだね」


だから何故にそこで沈んだ顔になるのですかハルさん。


よっぽどのトラウマでもなけりゃそんな顔しないと思うのだが。


「じゃあ、行くぞ」


しかし道の真ん中に突っ立ってるわけにもいかないので歩き出す。


歩き始めると、町全体が見えてきていた。


こちら側だけしか見えないが、恐らく町全体を囲っているのであろう2メートルほどの石壁。


恐らく、これが防御壁となって獣たちから住民を護っているのだろう。


所々傷はあるものの、石壁としてはかなり良く出来てるんじゃないだろうか。


ちなみに門も石製。いやレンガか、ありゃ。


そこだけ少し茶色っぽくなっていて、内開きに大きな扉が開いている。


「しっかし、でかいな」


サイズだけで言うなら、結構な大きさがある。


東京ドーム換算で言うなら恐らく2つぐらい。いや、東京ドームじゃ例えが大きすぎるか。


「うん、この辺一帯の商人のアジトだから」


アジト、と言うとなんか真っ黒い服着た人たちとかステキヘアーな人たちとかの住処を想像するのですが。



「おい、其処の二人」


中年オヤジの声がしたので、そっちを向いたら青年が居ました。


いや、おかしいな。爽やか系の青年なのにおっさんの声だったぞ。


「おい! 聞いているのか?」


首を振って他に誰かいないか探してみたが、誰もいない。


つまりあれか? 所謂残念なイケメンというやつか。


目の前のこの美青年がおっさん声の主なのか。それはそれでどうなんだ? まぁ俺はその気は無いからいいが。


「はぁ、聞いているのか!?」


「ん、あ、はい?」


「通行書は持っているか?」


「通行書?」


「あ、えっとね、街に入る時に要る許可書だよ、タカアキ」


いや、ソレは分かるのですが。


ハル:手ぶら

俺 :金貨箱、麻袋


無い、よね?


「……持っていないようだな」


顔色を悪くしているだけでばれました。やっぱ門番さんは勘がいい人がやるのかな。


「向こうで手続きして来い」


その、親指が指す方向には受付らしきものが。


さて、面倒な事にならないといいが。主にお金関連とかお金関連とかお金関連とかで。





「すみませーん」


「はいはい、なんでございましょ」


あれ? 返ってきた受付嬢(見た目は10代)の声が、今度はおばさん声!?


え? なんで? 何、この世界おばさん声とおっさん声しかいないの?


「通行書の発行をお願いします」


いや、大丈夫、横から聞こえてきたハルの声はきっちしアニメ声だ。問題無い。


つまり、彼らがおかしいという事でいいのかな? 良いんだよな、街に入ったらおばさん声しかいなかったら泣くぞ俺。


「はい、ではその箱と麻袋の中身をここへ。後、一応服装検査させていただきます」


いやそれも一つの萌え要素か!? ギャップ萌えという奴か!? いやだが俺は……っ!


「ほら、タカアキ、早く」


はい、馬鹿なこと考えてたら小突かれたとです。



さて、よっこらしょっと。


「えー、麻袋は空で、この箱の中身は金貨――100枚くらい?」


あくまでだいたいである。というか100枚じゃ利かないと思うが。


「…………」


おう、目の前のお嬢さんが固まったよ。


やっぱ大金だよねコレ。どう考えても多いよね。


受付嬢さんは金貨の入った箱を見て、中身をごそごそとやっておりますが。


大丈夫、いくら調べても絶望しか残りません。


「…………」


ね。


「あ、安全は確認しました」


偉い、この人偉い! この状況下でお仕事するか! 流石はプロ……。


「ええと、それでは、税金は銀貨5枚となりますが……」


しかしそれにトドメを刺す俺の金持ちな一言。


「すいません、銀貨ないので金貨でお願いします」


「…………」


ああ、再び固まってしまった。


「で、では、銀貨95枚でお返しします……」


なんか色々諦めながら銀貨を差し出す受付のお姉さん(CV:おばさん声A)


すいません。なんかすいません。


「ほら、早く行こっ、タカアキ」


「お、おう」


そしてマイペースを極めるハルさん。


嗚呼、常識から外れて言っている気がする……。まぁ既にゾンビですが。






はい、と言うわけで色々ありましたが到着。


「やっぱ凄いな」


入口からすぐは布でできた市場は露店がずらりと並んでいて、その奥にはレンガ製の商店街が広がっている。


その道を大勢の人が文字通り埋め尽くすように各々動き回っている。


東京名物、朝の通勤ラッシュには及ばないものの、それでも足元に荷物なんか置いたらどっかに蹴ってかれるだろう。


独特の喧騒が町全体を覆っている。


「うん」


ちょっと暗いけれど、それでもこの人々のテンションに触発されたか顔が明るくなるハル。


うむ、やはり美少女は泣き顔ではなく笑顔でなければ。



「じゃ、まずは適当に見て回るか」


「うん、ボクは――――」

「止めてくださいっ!!」


何事!?


「今のは……美少女の叫び声!」


「なんで声だけで美少女って分かるのさ!?」


いえ、先程から外観年齢にかけ離れた方々と触れ合っていたせいでつい。


「とりあえず、行ってみよう!」


「ああ、もう! ボクの話を聞けー!!」


とりあえずハルの叫びも気になるが、やはり悲鳴である。


ほら、やっぱ美少女は助けなきゃならんでしょう? これでも異世界召喚された勇者だし。


あ、ちょ、そこ忘れてたって顔すんな!



さて、では美少女(推定)を助けに行きますか。


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