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第五十話――閑話


さて、残念ながら、幸せは長く続かないという理不尽な法則は何処の世界にも存在する。


「タカアキ、いつまで抱き付いてるの?」


つまるところ、目の前で恐ろしいほど笑顔なハルさんの様な存在が。


「ま、まぁ。泣いてるんだからしょうがな――」


「タカアキ、いつまで抱き付いてるの?」


「誰だって泣いてるときは寂し――」


「タカアキ、いつまで抱き付いてるの?」


「…………今すぐイヴェールの半径1m以内より離脱します」


「うん。わかった」



とりあえず、一つだけ。


ハルの笑顔は、とてつもなく怖かった。




「えー……とりあえず、『煌星の影』のアジトはミレイヴの洞窟ってとこらしい」


「……どこ?」


「あそこか、ちょっと遠いわね」


ハルは知らないが、エテは知ってるいるらしい。俺も、ミレイヴの洞窟自体は知らん。位置座標は覚えたが。


「そういえば、エテとベラノは?」


そういえばって、ハル、酷いな。


「エテとベラノは無事にビレイ村に着いているはずだ」


「はず?」


「この屋敷の中だと空間は曲げられないから、調べられない。ただ、俺が見たときは確かに無事だったし、今頃村で飯でも食ってると思う」


調べられれば、リアルタイムに情報を受け取る事も出来るのだが。


この屋敷、便利だが不便だ。


「それでも、あの村自体には武器は無い。早々に『煌星の影』は潰した方が良いだろう」


「うん。そうだね」


「まぁ今日は既に城まで戻ってきたし、もう夕方だ。だから、明日の早朝に『煌星の影』に仕掛ける」


ミレイヴの洞窟は、先程覗いてみた感じでは、ごつごつとした岩山の一角の洞窟だ。


中は、お世辞にも良い環境とは言えないが、出口が複数あるため、逃げやすい。また、局地的に通路が狭い場所がある。


そのため、そこを石で埋められたりしたら、その道は使えなくなる。


そういった構造が岩山全体に張り巡らせていて、下手な方法では攻められないだろう。


俺達の様な例外ならば、それも簡単ではあるのだが。


「人質等は居ない。人数は二十二人だ。もっとも、俺が見たときは、だが」


「少し、少ないね?」


「ああ。それだけが気がかりなんだが……」


数百組の集団を潰して分かった事は、この手の集団は五十人~百人程度の集まりである事。


大きさは確かに色々あるが、それでも二十人程度ではあまり大規模な行動はできない。


『煌星の影』は他の組織とも連絡を取り合うほど大きい集団の筈であるため、人数的にはおかしい。


「だが、一つ有力な情報がある」


「何さ?」


「リーダー、つまり頭が『スキル』持ちらしい、って事だ」


もし、仮に、『スキル』持ちが居るならば、人数差など関係ない。


二十人程度でも、大集団としての戦力となりうるだろう。


「ただ、どんな『スキル』かは不明。強力な物らしいが……<止める>みたいな物は基本的に貴族の物なんだろ? なら、まずありえないだろうな」


「そうだね。一応、落ちぶれた貴族が、ってのもあり得るけど」


「『煌星の影』が貴族殺しを掲げている以上、それは考えにくいだろうな」


「まぁ、今までの力が強いだけの一般人よりは、強い可能性が高いってだけだ」


「こちらには『スキル』持ちが三人。問題無いだろうな」


第六感も、今は問題無いと言っているし、大丈夫だろう。


リーダーが何の『スキル』か不明な所が怪しいが、そこまで強力では無い筈。


「まぁ、今は明日に備えて飯食って早めに寝よう」



ただ、ここに来て一つヤバい事がある。


俺の第六感によれば……今、ギャルゲ主人公が必ず通る死亡フラグが立っている。


それは、もう、黒い炭っぽい予感が。


「ところでイヴェール、……料理出来るか?」


「………………やりますっ!」


「無理だな」

「無理さ」

「無理かぁ」


「……すいません」


まぁ、仕方あるまい。


あのゴキブリが発生してから数時間しか立ってない台所で、イヴェールが調理するというのは無理だ。


なので、問題が一つある。


この城に住んでいる間、基本的に食事を作っていたのは俺。イヴェールが来てからはイヴェール。


俺が作ってた頃だったら、問題は無かったのだが……。


前に、俺とイヴェールが――



「美味しい料理って作るの難しいんだよ。よくイヴェールはこんなにおいしく出来るよな。流石だよ」


「まぁ、女の子ですから」


「べ、別に女だからって理由だけで料理が出来る必要は無いと思うんだけどさ」


「そうそう。別に料理程度出来なくても……」


「そうか? 料理できる娘って可愛いと思うぞ、俺は」


「「「「――!!?」」」」


「た、タカアキさん……」



――という会話をしたことがある。


不幸にも、ハルとアキと、ついでにベラとエテノの前で。


さらに、あの時の会話以降、台所から不可思議な煙が出る事が稀にある。


そして、俺の第六感が大音量で警鐘を鳴らしている。


……まぁ、後は言わずもがな。



「さて、となると、誰が飯を作るかだが――」


「タカアキ、ボクがやる」

「鷹秋、アタシがやろう」


ああ、やっぱりこうなるのね。


奇跡は起こらないのな。起こって欲しかったんだけどなぁ。


「アンタは料理なんか作れないでしょう?」


「ボクだって料理ぐらいできるもんっ! そういうアキこそ出来るんだよね?」


「あ、あたりまえよ。料理くらい……出来るわよ」



さて、俺の見立てでは、恐らく二人とも料理のりの字も知らない超初心者。


食べられるものを持ってきてくれるといいが、食べられない物に変化している可能性が高い。


果たして、俺は明日朝日を拝めるのだろうか……。


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