第四十六話――死亡フラグ
さて、意気込んだは良いものの今は序盤の序盤。何一つ状況は把握できてない。
「とりあえず、エテとベラノの位置、それから『煌星の影』の位置の特定だな」
「んー、どうやって調べるの?」
「方法はある。……ちょっと面倒だが」
「どうやってやるのさ?」
「悪の組織を片っ端から潰す」
「「おいっ……」」
ああっ。何故かハルとアキのセリフがシンクロした。今まで仲良くしたことなんてないのに。
「冗談だよ……」
「「…………」」
ああっ。何故かドン引きされた。好感度Downイベントはなぜこうも理不尽なんだっ!
「けどよ、あながち間違っちゃいないだろ?」
■ケット団だってたった1人の「レッドさん」という方に滅ぼされたんだから。
片っ端から可能性を潰すというのはコンピューター的思考的にも間違ってないと思います!
「だって……無理だよ。この大陸にそんな物数十個とあるんだよ? それを全部潰すなんて常識的に考えて無理なのさ……」
「え? 数十個しかないんだ?」
「「は……?」」
またハモった。主人公たる俺とヒロインであるハルの同時セリフシーンは無いというのに!
「だってよ。一日十個をノルマとしてやってけば、十日で終わるじゃん」
無論、一日で全部壊滅させるものいけるのだが、あまりにもハルとアキが茫然としてるので十日にしてみた。
「え、いや……え?」
「あー、でも相手側から情報集めたりした方が簡単に見つかるから、一人一人相手にしないとまずい?」
「え……あ、うん……?」
「そーか。じゃあそれも時間に入れて。それに、悪の組織ってのも曖昧だから、何か定義でも作るか。そうなると、どの組織まで潰すかだよな……政治家とか貴族とかも腐ってるけど、アレは簡単につぶせないし下手に潰すと今の世界に影響が出るよな。となると、やっぱ別の規定がいるよな。それで………………」
「……ぷっ!」
「あ、何だよハル。今笑ったな?」
こちとら本気で話してるのに。こういうのは良く考えてやらないとまずいだろ、色々と。
「笑ってない」
「いーや! 笑った。笑ったね。絶対笑った」
「うん。じゃあそれで良い」
「お、おう……?」
なんかいつものツッコミハルさんじゃない……?
「全部全部、タカアキの好きでいいと思う」
は? 俺の、好きで、いい?
「タカアキが、やりたい放題にやっちゃえばいいんだよ。みんなを護るのも、誰かを倒すのも。好きにして良い」
つまり……?
「タカアキが自分の思うようにやればいいのさ。その方が、タカアキらしい。難しく考えるのなんてタカアキらしくない」
…………へっ。
んな笑顔で言われたら、わざわざ練ってた作戦が台無しじゃねぇか。
「おい、それはどういう意味だ、ハル。俺が馬鹿だって言いたいのかー!」
「あ、うん。まさにその通り」
「酷ぇ! ここに笑顔の真性ドSが居る!!」
「だって事実だもーん」
「なっ、ハル、それ以上言うなら俺と頭脳戦で勝負しようじゃねぇか!」
「うん。それじゃ何でする? どれでもボクが勝つけどね」
「あー……チェスでどうだ。あれなら頭脳戦だろ?」
こないだルールを覚えたばかりのハル程度に、この俺が負けるはずは無いっ!
「おい、良く分からんがエテとベラノを助けに行くんじゃなかったのか……?」
「ああそうだった!」
「やっぱアンタは脳筋だわ……」
「アキまで言うか!? それじゃアキともチェスで勝負だ!」
「良いわよ。良く分からないけど、頭の出来で決まるならアンタがアタシにかなうはずが無いもの」
「いいぜ、俺に負けて泣く羽目になっても知らないからな!」
「じゃ、そのチェスとやらをやるためにも、さっさと『煌星の影』を潰しに行くわよ」
「そうだな。……二人とも、帰ってきたら覚悟しとけよ!」
「うん、タカアキの罰ゲーム何にするか考えとく」
「……いいだろう。負けた時はどんな罰ゲームでも受けてやろう」
「じゃあ……あ、前やったタカアキの思い出話は――」
「却下!!!」
「今「どんな罰ゲームでも」って言ったのにー!」
ったく。
どいつもこいつも。
ホント、良い女だよ。こいつらは。
俺なんぞにはもったいないくらいには。
こりゃあ、ハーレム主としてちょっと本気ださないとな。