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第四十五話――賽は投げられた……はず


とりあえず、トラウマを弄るのはやめにして仕切り直し。


「んで、何の用だ」


「んー、あたしには関係ない話だけど、あんたには関係がありそうな話がねー」


「俺に関係ある話?」


「あんたの所に、エテとかベラノとかいうのが居たでしょ」


「ああ、ついさっき故郷の村に向かって出発したが」


「あの子達、死ぬわよ」


「なっ……」


なん……だと……。


「って、マジの話か?」


「ええ、大マジ。あなた、あの子達の本名知ってる?」


「ああ。確か……エテ・エル・エンペシアとベラノ・エル・エンペシア」


「えっ……」


ん? 何故にハルが名前に反応する?


「エンペシア……やっぱりかー。まぁしょうがないわね」


「おい、話が見えない。どういうことだ」


なんかヤバイ名前なのか?


「んー話せば長いんだけど……『エンペシア』と『エレンペイア』って似てると思わない?」


「は?」


おい、今一瞬素で「は?」って言っちまったぞ。


何を言ってるんだこの女神は。


「まぁ要は、同じなのよ。『エンペシア』も『エレンペイア』も」


「同じ……?」


「『エンペラー』ってのはあんたの世界の『皇帝』の意味を指すでしょ?」


「ああ、そうだ」


細かくは覚えてないが。確かユリウス・カエサルの称号か何かが元になって出来た英語だった気がする。


「この世界もあんたの世界も、言語は一緒でしょ? だから、言葉の中にもいくつか、『似てるようで違う言葉』があるのよ」


んー……。


「つまり、『エレンペイア』や『エンペシア』は『エンペラー』の意味だと言いたいのか」


「そう。正確には、『エンペラー』って言葉を元に造られた、名前よ」


つまりもじってる、って事か?


「つまり、『皇帝』の意味の名前」


「……何が言いたい」


「『エテ・エル・エンペシア』も『ベラノ・エル・エンペシア』、ついでにそこの『アキリア・エレンペイア』も、皇帝の名前を持ってるの」


「つまり何か? エテやベラノは皇帝だって事か?」


「ええ。そうでしょう? ハル・アルケミシア」


「……多分、あってると思う。『エンペシア』『エレンペイア』は元皇帝。『覇国』エレクシルに侵略された、元王族の名。当時、エレクシルの皇帝に捕縛され、人質として都の貴族牢に捕えられた人々につけられた、名前」


「まぁ、多分昔はみんな『エンペラー』だったんでしょうけど。数百年の間に『エンペシア』だの『エレンペイア』だのに変わったんでしょ」


「いや、言葉はそんな簡単に変わりはしないと思うが……」


それでも、アルケミシア家のハルが言うなら、ほぼ間違いないんだろう。


「まぁ、何が言いたいのかは分かったでしょ?」


「エテやベラノ、アキは元王様ってのは分かった。けど、それがなんだってんだ?」


「んー……、ところで、最近噂の『煌星の影』って知ってる?」


「きらぼしのかげ?」


そんな常用外漢字で言われても。


「んー、簡単に言っちゃうと、反貴族勢力、かな」


「で、その煌星の何たらが何の関係があるんだ?」


「『煌星の影』は、住民を虐げる貴族から人々を解放するーってのを掲げてる。まぁでも、良く分かんないけど貴族ってのは城に居て、簡単には殺せないんでしょ?」


「まぁ、そうだな」


俺も良くは知らんが。


「だから、『煌星の影』は簡単に殺せる貴族を殺して回ってるの」


「おい……それは、どういう事だ」


「んー、特に、『元皇帝』の『エンペシア』、とかを」


「ちょっとまて、どういう事だ」


「簡単な話よ。軍力を持たない元貴族を、殺しまわってるってだけ。まぁ彼らの祖先がやったことを考えれば妥当って言えば妥当だけど」


「んな事、有り得るかよ……」


どういう事だよ。んなの、無いだろ!


エテやベラノが貴族? 一番遠い人種じゃねぇか。


ふざけってんだろ! そんな訳あるか。


「言いたいことは分かるけど、ちゃんとした言語で離さないと意味が分からないわよ」


「ああ、少し、冷静になる」


深呼吸を入れて、激情を<曲げる>。


「……もう大丈夫だ」


「そう。……あたしが伝えたかったのはそれだけ」


「ああ、情報ありがとな」


「後、一つだけ警告しておくわ」


ん?


「あまり、『能力』(ソレ)を使いすぎないように、ね。あくまで、貴方は『異世界からの来客』なのだから」


「…………分かった。肝に銘じておこう」


「それじゃ、あたしは帰るわ。久しぶりに長々と喋ったから疲れた」


「ああ、ホント、わざわざすまん」


「別に好きでやってんだからいいのよ。それよりほら、早くいってあげなさい」


「ああ。もちろんだ」


今すぐ向こうに跳べば間に合うはず。いや、間に合ってくれよ……っ!


とりあえず、女神が空間の狭間的な物に消えるのを見送ってから、椅子から立ち上がる。


「あ、ああ……消えた」


「ん? どうした、アキ。変な声出して」


「どうしたってアンタ! なんで女神と知り合いなのよっ!」


ああ、そういえば。


あの時、アキは気絶してたから女神の事知らないのか。


「まぁ色々あってな」


「色々って……、何があったら女神と知り合いになるのよっ!」


いや、怒鳴られても。


どうやって知り合いになるかなんて俺も知らん。


「……どうでもいいけど、エテとベラノを助けに行くんじゃなかったの?」


「ああ、そうだ。今すぐ<曲げる>で追いつかなきゃな」


「分かった。じゃあボクも行こう」


「え?」


「え? じゃないよ! ボクも、行ってあげるって言ってるのさ!」


「あ、ああ。……ありがとな」


「うん。それでよし」


「じゃあ、アタシも行こうかな」


「へ?」


「……はぁ、アンタって同じこと繰り返すの好きね。まぁいいけど」


「あ、ああ……? 良く分からんが、ハルとアキも来てくれるんだな?」


今、素で分からんかった。同じ事ってなんだ?


「うん」

「ああ」


「よし、それじゃ準備が出来次第エテとベラノを助けに行くぞ!」


「ま、準備なんていらないけどね」


「それを言うなよ……」


俺とアキは武器無し防具無しで戦えるからな……。本人に言うと怒るが、ハルは非戦闘要員だし。



ま、大事な人を攫われるは嫌いなんでね。


さっさと『煌星の影』とやらを潰させてもらおうか。


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