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第四十話――とある巫女のお話


スタミナの都合上、最初っから完璧に飛ばす訳にはいかないが、ほぼ全力でいかせてもらおう!


「だらぁっ!」


これ自体はただの突進。けれど、全力で蹴った地面が少しへこむ程の速度。


身体能力が果たしてどこまで高いか様子見だ。


「ふふ、時を止まればそれで終わり……けど、少し遊んであげましょう」


!?


「へぇ……カウンターか」


勢いをそのままに右手の隠しナイフの一撃を喰らって右側に受け流された。


ダメージにはならないが、格闘技能まで持ってるとなると。


「厄介だな……」


「ふふふ。これも私の力」


「女の子の細腕には似合わない気もするがね」


「ふふふ、細かいことを気にしてるとモテないわよ?」


「そいつは大問題だ」


「ふふふ、貴方とのお話は楽しいわねぇ」


「そいつはどうも。俺も楽しいよ」


会話が長引けば長引くほどハルまで近づけるしな。


もっとも、数センチの差でどうにかならない場合も考えられるが、時間はある。確実に行こう。



「そうねぇ、じゃあ一つ。面白いお話をしましょう」


「そう、とてもとても素敵な力を持っていたのに、哀れにも幽閉された女の子のお話を」


「女の子……『時詠みの巫女』か」た


「さぁ、どうかしら?」


これ以上はにじり寄れないが、ここで出来るだけ情報を引き出すも良し、か。


「女の子はとてもとても強い、ちからを持っていました」


「女の子は、その力を使い人々を助け、次第に女の子は人々から頼られるようになりました」


「けれど、ある日。悪魔がやってきました」


「悪魔は、取引を持ちかけました。『お前の体を寄越せば、全ての人を幸福にしよう』と」


「女の子は悩み、考え、その結果、取引を受けることにしました」


「女の子ですら助けられなかった人々をも幸せにする、という言葉に惑わされ」


「悪魔は、女の子の首に、首輪をかけ、こう言いました」


「『我々の手伝いを永久に行え。断ればお前の周りの人は不幸になる。手伝えばお前の周りの人は幸福になる』」


「女の子はその時、初めて騙された事に気が付きました」


「けれど、首輪をかけられた女の子には、どうにもできなくて、女の子は悪魔の手伝いを始めました」


「ヒトを集め、ヒトを騙し、ヒトを苦しめ、ヒトを殺す、悪魔の手伝いを」


「そして、女の子は、今でもヒトを殺し続けるのでした。おしまい」


「…………」


「ふふ、良い話でしょう? 特に、救いが無いところが」


「それが、お前の経歴か」


「さぁ? まぁでも、その女の子は<止める>という強大なスキルを持ってしまった、哀れな女の子よ?」


あの力の名前は<止める>か。時まで止められるなんて有りかよ。


「ふふ、同情でもした?」


「…………」


「けどね、ここはそういう場所なの。世界とはそういう風に出来てるのよ」


「力在る者が蔑まれ、力無き者の糧となる」


「けれど、私は糧にはならない。この世界で、生き残って見せる」


「ありとあらゆる人間を味方にして、私の存在を認めさせてみせる」


「そのことに、貴方は目障りなの。だから、ここで潰させてもらう」



「そうかい」


「ふふ、何か思う事でもあるんじゃないの?」


「ああ、言いたいことは山ほどある」


「同情なんていらないわよ。ふふふ」


「ああ、言いたいことはあっても、今のお前にかける言葉は無い」


「今は敵同士、話は後だ。まずはお前を、その生贄の舞台から引きずり降ろしてからだっ」


「ふふ、そんな事を何度夢見たか」


「誰かが、この舞台から降ろしてくれることを何度期待したか」


「けれど、誰も私には勝てない。誰一人として私には勝てないっ!」


「貴方も同じ、ここで止められておしまい」


「それは、どうかな?」


「これで、終わり……」


時止め、来るかっ。



「さぁ。……時よ、止まって」


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